2025年2月26日

舌小帯短縮症とは、舌の動きが制限される状態です。授乳や発音に影響を与えることがあり、親御さんから『切開したほうがいいのか?』というご相談を多くいただきます。
近年では「切らなくても問題がない」とされることもありますが、診断を受けると「本当にこのままで良いのか?」と不安に思う方も少なくありません。
舌小帯外来でも多くいただく質問なので、今回は記事にしました。
舌小帯短縮症とは
舌の裏側の真ん中に、口の底へ向かうヒダがあります。これを舌小帯といいます。このヒダが生まれつき短かったり、舌の先端近くまでついていたりして、舌の動きが制限される状態を舌小帯短縮症といいます。
乳児のおよそ1〜3%に見られ、男の子にやや多いといわれています。舌を出したときに、先の中央がくびれてハート型やW字型に見えるのが特徴です。
影響が出るとすれば、乳児期は授乳(浅飲み・体重が増えにくい・お母さんの乳首が痛む)、幼児期以降は発音(タ行・サ行・ラ行)です。ただし、多くのお子さんは治療をしなくても問題なく育ちます。
当院の考え方と治療方針
当院では、舌小帯の短縮の程度を客観的に診断することに加え、ご家族の現在の悩みや将来の不安の可能性を考慮した2つの観点を掛け合わせて治療方針を決定しています。
診断結果(グレード)だけで判断するのではなく、ご家族がどのように感じているかを大切にしながら、適切な選択肢を一緒に考えていきます。
⑴客観的なグレード診断
✖️(かける)
⑵ご家族の考え・気持ち・意向
まず大前提として、舌小帯の短縮の程度を客観的に診断することが重要ですが、客観的なグレード診断のみで切開するかどうかを判断するのは現実的には難しいと考えます。今の時点で困っていないことが多いためです。
そのため、今困っていない現状で、手術の目的を明確にして、ご家族の意向も含めて総合的に判断することが大切です。もちろん、グレードが軽度であれば、基本的には切開の適用にはならないと考えます。
では、実際に、舌小帯短縮の程度(グレード)が強い場合はどう判断するべきでしょうか?
切開が必要かどうかを判断するポイント
切開を行うことにより、授乳障害や発音障害のリスクを軽減できる可能性があると言われています。しかし、現実には切開せずとも日常生活を問題なく送れるケースも少なくありません。
では、切開は不要なのでしょうか?
外来では、生まれたばかりの赤ちゃんが母乳をうまく飲めず、お母さんも痛みに苦しむ場面に出会います。このようなケースでは、舌小帯を切開することで一気に改善することがあり、これはとても感動的な瞬間です。
一方で、切開してもすぐに哺乳状態が改善しない場合や、滑舌の悪さが他の要因によるものであるケースもあります。また、今のところ問題はないが、言語の発達が進んでいないため判断が難しいこともあります。
こうした状況の中で、ご両親が「このままで良いのか?」と不安を感じることは当然です。「このままにしておいて大丈夫なのか」「もし将来、舌足らずになったらどうしよう」と悩む気持ちは、子育てにおいて大きなストレスになるかもしれません。
ご家族の不安を軽減するために
舌小帯の切開は、比較的リスクの少ない治療であると報告されています。当院でも多くの切開手術を行っており、経験豊富な医師が対応することで、安全な治療の一つとして提供しています。
そのため、将来的な不安を抱えたまま過ごすよりも、安全に切開できるのであれば、早めに処置をしておくことも選択肢のひとつです。モヤモヤした気持ちを解消し、子育てに向かっていただくことも大切だと感じています。不安を抱えて、育児を続けることも、一つのリスクや解消したい懸念点であると考えています。
そのため、もしそのような不安が強くある場合には、適用と判断し、積極的に切開の適応とする判断でよいと考えています。当院は、舌小帯を解剖学的・構造的に通常の形に整えておくことで、今は困っていなくても、今後の成長の中での不安を軽減できる可能性があれば、治療をしてあげたいと考えています。
もちろん、短縮の程度が強くても「今は特に困っていない」として切開を希望しないご家庭もあります。発音の問題についても、トレーニングによって改善できる部分はあり、成人後に切開を受けるケースもあります。この判断も正しいと思います。
例えば、舌の可動域を広げるためのストレッチや、正しい発音を促す音読訓練などが有効とされています。実際に、幼少期から発音トレーニングを行い、舌足らずの症状が大きく改善した事例もあります。
そのため、手術のタイミングについては、ご家族の気持ちや不安を総合的に考慮して決定することが大切です。
すなわち、舌小帯のグレード × 不安という軸で治療適応の判断をしているという意味となります。
切開を受ける時期の目安
基本は、生後間もない時期がおすすめです。 哺乳がうまくいっていない赤ちゃんについては、新生児期(生後1か月未満)のうちに切開を行うこともあります。
目安としては、歯が生えてくる前、できれば1歳ごろまでとご案内しています。この時期であれば、外来での日帰り切開が行いやすいためです。
1歳を過ぎると外来での切開は難しくなり、個別のご相談とさせていただいています。3歳以降になると外来では難しい場合がありますが、実際に受けられたお子さんもいらっしゃいます。お子さん本人の性格やご家族の状況を見ながら、一緒に判断していきます。
「この時期を過ぎたら手遅れ」ということではありません。 大切なのは、お子さんの状況に合ったタイミングで行うことです。
なお、切開は外来での日帰り手術で行い、入院は必要ありません。局所麻酔を用い、手術自体は数分で完了します。切った部分は粘膜のため再びくっついてしまうことがあり、それを防ぐためにご自宅で舌をよく動かす練習をしていただきます。
まとめ
結論として、
⑴客観的なグレード診断を行い、適用があるかどうかを確認する
✖️(かける)
⑵将来的な不安がある場合には、積極的に切開を検討する
このように、当院では舌小帯のグレード診断だけでなく、ご家族の気持ちも大切にし、納得のいく選択をしていただくことを大切にしています。客観的な結果だけで決めるのではなく、ご家族が納得できる形で、最適な選択を一緒に考えることを大切にしています。もし不安を抱えたまま過ごすことがストレスになるとしたら、その点も含めて手術の適用判断を考慮することが望ましいと考えています。
舌小帯短縮症についてご不安がある場合は、当院の舌小帯外来にご相談ください。
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※この記事は一般的な情報をお伝えするものです。お子さんの状態はお一人おひとり異なりますので、自己判断はなさらず、必ず医師にご相談ください。
この記事を書いた人
小森 広嗣(こもり こうじ)
小森こどもクリニック 院長/日本小児外科学会 小児外科専門医
慶應義塾大学病院 小児外科、東京都立小児総合医療センター 外科医長を経て、2018年2月に東京都国分寺市で小森こどもクリニックを開院。赤ちゃんから思春期世代まで、数多くの手術・治療に向き合ってきました。
舌小帯短縮症については、外来での日帰り切開手術を年間40〜50件行っています。また、これまで5000組を超えるお子さんの便秘診療に携わってきました。
「症状を薬で抑えるだけでなく、本当の悩みの根っこを一緒に探す医師でありたい」——それが開院以来変わらない診療の軸です。