2019年10月14日

「舌のすじが短い」と言われたけれど、どこに行けばいいのか
乳児健診で「舌の裏のすじが短いですね」と言われた。あるいは、授乳がうまくいかず調べているうちに「舌小帯短縮症」という言葉にたどり着いた。
そこで多くの保護者の方が立ち止まります。「これは、何科に行けばいいのだろう」
小児科なのか、耳鼻科なのか、歯医者さんなのか。調べるほどに情報がばらばらで、結局どこにも行かないまま数か月が過ぎてしまった——診察室で、そんなお話を何度も伺ってきました。
迷うのは当然です。舌小帯短縮症は、複数の診療科が関わる領域だからです。この記事では、その違いを整理したうえで、受診から治療までに実際に何が起こるのかをお伝えします。
何科を受診すればいいのか
診療科によって、見ている角度が少しずつ違います。
小児外科 切開が必要になった場合に、診断から手術まで一貫して対応できます。哺乳や体重の増え方といった、赤ちゃんの全身の状態と合わせて判断できるのが特徴です。
小児科 まず相談する窓口として適しています。切開が必要と判断された場合は、対応できる医療機関を紹介してもらえます。
耳鼻咽喉科 発音や飲み込みの観点から診てもらえます。
歯科・小児歯科 口腔機能全体の観点から診てもらえます。
どの科が正しいということはありません。ただ、**迷ったときの目安をひとつ挙げるとすれば、「切るか切らないかを決める前に、いま何で困っているかを一緒に整理してくれるところ」**を選ぶことをおすすめします。舌小帯短縮症は、短さの程度だけで治療方針が決まる病気ではないからです。
舌小帯短縮症とは
舌の裏側には「舌小帯」というすじ(ヒダ)があります。これが生まれつき短かったり、舌の先端近くまでついていたりして、舌の動きが制限される状態を舌小帯短縮症といいます。
ご自宅で確認するときの目安は、舌を前に出したときの形です。舌の先端にくびれができ、ハート型やW字型に見えることがあります。
乳児のおよそ1〜3%に見られ、男の子にやや多いといわれています。決して珍しいものではありません。
どんなときに困りごとになるのか
短いこと自体が問題なのではなく、それによって困りごとが出ているかどうかが大切です。
乳児期(授乳) おっぱいをうまく吸えない、浅飲みになる、飲むのに時間がかかり体重が増えにくい、お母さんの乳首が痛む、といったことが起こります。
幼児期以降(発音) タ行・サ行・ラ行がうまく発音できないことがあります。
そのほか 舌の動きが制限されるため、食べ物を飲み込みにくい、口の中を清潔に保ちにくい、といったことにつながる場合もあります。
一方で、多くのお子さんは特に治療をしなくても問題なく育ちます。 健診で指摘されたからといって、すぐに手術が必要というわけではありません。
受診から治療までの流れ
当院(小森こどもクリニック 舌小帯外来)を例に、実際の流れをご説明します。
1. ご予約 インターネットからご予約いただけます。枠数に限りがあるため、お急ぎの場合はお電話(042-322-5585)でご相談ください。
2. 診察・評価 舌小帯の状態を客観的に評価すると同時に、「いま何で困っているか」「将来どんな不安があるか」をご家族から丁寧に伺います。哺乳の状態、発音の発達、食事の様子、年齢や成長の見通しを合わせて確認します。
3. 方針の決定 経過観察で十分なケース、舌のトレーニング(リハビリ)で改善が期待できるケース、切開が適しているケースがあります。ご家族と一緒に決めていきます。
4. 手術(適応となった場合) 当院では外来での日帰り手術を行っています。入院は必要ありません。局所麻酔を使用し、手術自体は数分で完了します。術後は止血を確認し、水分や母乳・ミルクが十分に取れることを確認したうえでご帰宅いただきます。当院では年間40〜50件の切開手術を行っています。
なお、年齢や状態によっては全身麻酔での手術が望ましいと判断し、適切な医療機関をご紹介することもあります。
時期について
外来での切開は、歯が生えてくる生後6〜7か月ごろまでの時期が、お子さんの負担が少なく行いやすいとされています。
ただし「この時期を過ぎたら手遅れ」ということではありません。将来の発音を見据えて幼児期に手術を受けるお子さんもいらっしゃいます。大切なのは、お子さんの状況に合ったタイミングで行うことです。
費用について
舌小帯切開術は保険診療の対象です。多くの自治体では乳幼児医療費助成の対象となりますが、窓口でのご負担はお子さんの年齢やお住まいの自治体によって異なります。詳しくは受診時にご確認ください。
迷っている段階でも、ご相談ください
「手術が必要かどうか分からない」「他院で切った方がいいと言われたが迷っている」——そうした段階でのご相談も承っています。
一人で抱え込まず、まずは一度ご相談ください。
※この記事は一般的な情報をお伝えするものです。お子さんの状態はお一人おひとり異なりますので、自己判断はなさらず、必ず医師にご相談ください。
この記事を書いた人
小森 広嗣(こもり こうじ)
小森こどもクリニック 院長/日本小児外科学会 小児外科専門医
慶應義塾大学病院 小児外科、東京都立小児総合医療センター 外科医長を経て、2018年2月に東京都国分寺市で小森こどもクリニックを開院。赤ちゃんから思春期世代まで、数多くの手術・治療に向き合ってきました。
舌小帯短縮症については、外来での日帰り切開手術を年間40〜50件行っています。また、これまで5000組を超えるお子さんの便秘診療に携わってきました。
「症状を薬で抑えるだけでなく、本当の悩みの根っこを一緒に探す医師でありたい」——それが開院以来変わらない診療の軸です。
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