起立性調節障害
起立性調節障害

「朝起きられない」——それは怠けではありません
お子さんが朝なかなか起きられない、午前中は頭痛やめまいでぐったりしている、学校に行けない日が続いている——。そんな状態が続くと、「怠けているのでは」「気持ちの問題では」と心配になりますよね。
起立性調節障害(OD)は、自律神経のバランスが乱れ、起立時に脳や体への血流が低下する病気です。自分の意志ではコントロールできない身体的な疾患であり、小学校高学年から中学生の思春期のお子さんに多くみられます。
以下の項目のうち3つ以上あてはまる、あるいは2つでも症状が強い場合は、起立性調節障害が疑われます。
午前中に症状が強く、午後から夜にかけて回復するのが特徴です。夜は逆に目がさえて眠れなくなることもあり、生活リズム全体が乱れていきます。中等症〜重症では不登校が長期化するケースも少なくありません。
起立性調節障害が疑われた場合、まず採血や心電図などの検査で他の病気を除外し、起立試験でサブタイプ(起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群など)と重症度を判定します。
一般的な治療としては、起床時の姿勢の工夫、水分・塩分の補給、規則正しい生活リズム、適度な運動といった非薬物療法が中心です。改善しない場合は、血圧を上げるお薬を使うこともあります。これらは起立性調節障害の治療の基本であり、当院でもこの基盤を踏まえたうえで診療を行っています。
ここからが、当院が最もお伝えしたいことです。
起立性調節障害と診断され、お薬や生活指導を受けても改善しないお子さんの中に、「隠れた栄養障害」が背景にあるケースが少なくありません。
体を動かすエネルギー(ATP)は、細胞の中のミトコンドリアという「発電所」で作られます。この発電所を動かすのに欠かせないのが鉄とビタミンB群です。
鉄が足りないと、エネルギーを作り出す力そのものが落ちてしまいます。それだけではありません。心の安定に関わるセロトニン、やる気を生み出すドーパミン、睡眠を司るメラトニン——これらの神経伝達物質の合成にも鉄が必要です。つまり、鉄が不足すると「元気」「やる気」「睡眠の質」がすべて同時に落ちてしまうのです。
ここで重要なのは、一般的な血液検査でヘモグロビン(Hb)が正常でも、貯蔵鉄(フェリチン)が枯渇しているお子さんが非常に多いということです。「貧血なし」で終わってしまい、鉄不足が見逃されているケースを、当院では数多く経験しています。
ジュースやお菓子などで血糖値が急上昇すると、体はインスリンを大量に出して血糖を下げようとします。その結果、夜間に血糖値が急降下し、体は「危険」と判断してアドレナリンやコルチゾールを緊急分泌します。
これが夜間低血糖と呼ばれる状態です。悪夢、寝汗、歯ぎしり、夜中に目が覚める——こうした症状が起き、深い睡眠がとれなくなります。結果として朝は疲労感で起き上がれず、日中はぼんやり。するとまた甘いもので覚醒しようとする……という悪循環に陥ります。
「朝起きられない=怠けている」のではなく、体の中で血糖の波が起きているという身体的な問題なのです。このメカニズムをお伝えすると、「うちの子はサボっていたのではなかったんですね」と涙を流される保護者の方も少なくありません。
当院では、起立性調節障害のお子さんに対して、一般的な治療に加えて栄養の視点からのアプローチを行っています。
一般的な健康診断では見逃されがちなフェリチン(貯蔵鉄)をはじめ、ビタミンB群の充足度、血糖の安定性などを、分子栄養学の視点から詳しく解析します。同じ血液データでも、読み方がまったく違います。
血糖値の急激な乱高下を防ぐため、ジュースや精製された糖質の摂り方を見直し、タンパク質を中心とした補食(おやつ)の摂り方を具体的にお伝えします。寝る前のタンパク質摂取で夜間低血糖を予防することも大切なポイントです。
食事だけでは補いきれない鉄やビタミンB群を、医療用サプリメントで効率よく補います。エネルギーを作る力が回復してくると、朝スッキリ起きられるようになるお子さんが増えてきます。
どんなに良い栄養を摂っても、お腹で消化・吸収できなければ体には届きません。院長は小児外科専門医として25年以上にわたり子どもたちの消化管を診てきた「お腹の専門家」でもあります。腸の状態を整えながら栄養を届ける——この両面からのアプローチが当院の強みです。
起立性調節障害の治療がなかなかうまくいかない、お薬を飲んでも改善しない——そうしたお子さんの背景に、鉄不足や血糖の乱れが隠れている可能性があります。
当院の栄養外来では、血液データを栄養の視点から詳しく読み解き、お子さん一人ひとりに合わせた食事指導やサプリメントの提案を行っています。気になる症状があれば、いつでもご相談ください。
詳しくは栄養外来のページをご覧ください。
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