子どもがお肉を口にためて飲み込めない・丸呑みするのは鉄不足かも|偏食と栄養を小児外科医が解説|小児科|栄養外来・便秘専門外来なら小森こどもクリニック|根本治療に対応

〒185-0011 東京都国分寺市本多2-3-3
オーケー国分寺店並び、国分寺市商工会館4階A号室

042-322-5585

お電話・問い合わせ042-322-5585 WEB予約 ワクチン・
乳幼児健診の予約
WEB問診
下層メインビジュアル画像(PC)

子どもがお肉を口にためて飲み込めない・丸呑みするのは鉄不足かも|偏食と栄養を小児外科医が解説

子どもがお肉を口にためて飲み込めない・丸呑みするのは鉄不足かも|偏食と栄養を小児外科医が解説|小児科|栄養外来・便秘専門外来なら小森こどもクリニック|根本治療に対応

2026年9月12日

子どもがお肉を口にためて飲み込めない・丸呑みするのは鉄不足かも|偏食と栄養を小児外科医が解説

「お肉を口に入れたまま、いつまでも出さないんです」

「結局、水やお茶で流し込んでしまって」

「よく噛みなさい、って毎日言っているんですけど」

栄養外来では、こういうお話をよくうかがいます。そして多くのご家族が、これを「好き嫌い」や「食べ方のくせ」だと思って来られます。何年も注意し続けて、食卓が毎日の小さな戦場になっているご家庭も少なくありません。

でも、そうではないことがあります。

そのお子さんは、噛んでいないのではなく、飲み込めていないのかもしれません。

「よく噛みなさい」が、いちばん効かない子がいます

噛むことは、消化にもミネラルの吸収にも、とても大切です。これは間違いありません。

ただ、飲み込みにくさを抱えている子に「よく噛みなさい」と言い続けると、食事はただ苦しい時間になります。噛めば噛むほど、パサつく食べ物は口の中でまとまりを失い、かえって通りにくくなるからです。

そして本人は、自分が「飲み込みにくい」ことに気づいていません。生まれてからずっとその状態なら、それが本人にとっての当たり前だからです。だから「飲み込めない」とは言いません。代わりに、こう言います。

「これ、かたいからいらない」

「もうおなかいっぱい」

ご家族には、わがままに見えます。実際には、体のほうが受けつけていないだけです。

「食べない」のではなく、「通っていない」

偏食は、食べる意欲や好みの問題として語られがちです。ただ、食べ物が通っていく「」の側から見ると、別の景色が見えてきます。

のどから腸まで、消化管はひとつづきの管です。当院がふだん、お腹の外来で診ているのも、この管です。

鍵になるのは、のどや食道は、毎日つくり直されているという事実です。

消化管の粘膜は、体の中でもとくに入れ替わりの速い組織で、3〜5日ですっかり新しくなります。皮膚よりずっと速い。裏を返せば、材料が足りなくなったとき、真っ先に影響が出る場所だということです。

その材料の主役が、です。

なぜ鉄がないと、飲み込みにくくなるのか

理由は2つあります。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

① 新しい粘膜を、作り続けられない

細胞が新しく生まれるには、設計図(DNA)をコピーする必要があります。そのコピーを担う酵素が、鉄を使います。

鉄が足りないと、3〜5日ごとの入れ替えが追いつきません。のどや食道の粘膜は、だんだん薄く、頼りないものになっていきます。

これは医学的にも古くから知られている現象で、鉄欠乏によって飲み込みにくさが起こることには、Plummer-Vinson症候群という名前までついています。名前がついているほど、昔から知られてきたということです。

子どもで重い形をとることは、多くありません。お子さんがこの病気だ、という話ではなく、「かたいものを飲み込みたがらない」という軽い形なら珍しくない、という意味です。

② しなやかさを支える「縦糸」が組めない

もうひとつが、コラーゲンです。

コラーゲンというと肌のハリの話に聞こえますが、実際には体のタンパク質の約30%を占める、いちばん多いタンパク質です。皮膚も、骨も、血管も、のどや食道の壁も、コラーゲンという縦糸が支えています。組織の「しなやかさ」は、この縦糸の仕事です。

そして、コラーゲンを組み立てる酵素は、鉄がなければ働きません。

コラーゲンは三重らせんという頑丈な構造をとります。らせんを組むには材料のアミノ酸を加工する工程があり、その加工を担う2つの酵素が、どちらも鉄を必須としています。しかもこの酵素は働くたびに力尽きるため、ビタミンCが鉄を元の形に戻して、再び働けるようにしています。鉄とビタミンCがチームで働いて、はじめて縦糸が織り上がる。そういう仕組みです。

鉄が足りない体では、薄くなった粘膜に、しなやかさまで失われます。飲み込みにくさは、その結果として起きています。

「食べ方が悪い」のでも「気合いが足りない」のでもありません。通り道の作りが、いま変わってしまっているのです。

こんなサインがあれば、疑ってみてください

診察室では、こういうところを確認しています。

・お肉を口に入れたまま、いつまでも飲み込まない

・水やお茶で流し込む。あるいは、ほとんど噛まずに丸呑みする

・焼き魚、鶏むね肉、ゆで卵など、パサつくものを極端に嫌がる

・やわらかいもの(ごはん・パン・麺・ヨーグルト)ばかりになっている

・口角が切れやすい。舌がつるつるして、しみると訴える

氷をガリガリ食べたがる

最後の「氷」を意外に思われるかもしれません。これは異食症といって、鉄が不足したときに出やすい、かなりはっきりしたサインです。診察では必ずうかがっています。

ひとつだけ、大切な線引きをお伝えします。

飲み込みにくさの原因は、鉄だけではありません。たとえば、アレルギーで食道に炎症が起きていることもあります。胃酸が上がってきて、のどや食道が荒れていることもあります。扁桃やアデノイドが大きくて、通り道そのものが狭くなっているお子さんもいます。かみ合わせや舌の動かし方が関わることもあります。

どれも、診察で確かめられることです。とくに、飲み込みにくさがだんだん強くなっている食べ物がのどにつかえて出してしまうというときは、栄養の話より先に、一度きちんと診させてください。

なお、飲み込みではなく「味そのものがわからない」(決まった味しか食べない・「まずい」と吐き出す)が目立つお子さんは、亜鉛が主役の、また別の話になります。これは別の記事で詳しくお話ししています。

何年も、見落としていました

ここで少しだけ、自分の家の話をさせてください。

いま高校生になる娘が、重い鉄欠乏を抱えていました。そして長いあいだ、飲み込むのが、とにかく下手でした。いつもつっかえつっかえ飲んでいて、一口が喉を通るまでに時間がかかる。お肉と魚は、いつも最後まで皿に残っていました。

当時の私はそれを「好き嫌い」と、「飲み込む練習が足りていないだけだ」と思っていました。子どものお腹を専門に診ている医師でも、自分の家の食卓で起きていることには気づけなかったのです。背景に鉄が足りていないことがあるとは、考えもしませんでした。

見落とした理由は、いま振り返るとよく分かります。本人が、何も言わなかったからです。

生まれてからずっとその状態なら、それが本人にとっての当たり前です。「飲み込みにくい」という自覚そのものがないので、訴えとして出てきません。代わりに出てくるのは、「かたいからいらない」「もうおなかいっぱい」という言葉でした。

鉄とビタミンB群を慎重に補いながら、消化しやすいタンパク質から少しずつ入れていきました。そして治療を続けていく中で、ある日ふと気づきました。

お肉を、ペロリと食べていたのです。

あっという間に、美味しそうに。「今日から食べられるようになった」という日はありませんでした。本人も「飲み込めるようになった」とは言いません。気づいたら、そうなっていた。

いまも、まったく波がないわけではありません。調子によって、食べにくそうな日はあります。それでも、「こんなに食べられるのか」と思う日が来たことは確かです。

これが、この状態のいちばん見つけにくいところだと思っています。本人も家族も自覚しないまま悪くなり、自覚しないまま戻っていく。だからこそ、思い当たることがあれば、一度確かめる価値があるのです。

診察室で「先生のお子さんだったら、どうされますか」とよく聞かれます。答えはいつも同じで、まず、確かめます。食べ方を直そうとする前に、材料が足りているかを見る。噛む練習も、品目を増やす工夫も、そのあとです。順番を逆にすると、本人より先に、家族のほうが疲れてしまいます。自分の家で見落としたのは、まさにこの順番でした。

なお、この経験は一つの例です。すべてのお子さんに同じことが起きるとは限りません。ただ、同じように原因の分からない食べ方の悩みを抱えておられるご家族に、一つでも手がかりになればと思い、書き残しておきます。

ご家庭で、今日からできること

栄養外来でお伝えしていることを、いくつかご紹介します。世間で言われる「バランスよく」とは、少し違う話をします。

まず、飲み込みやすい形に変える

「よく噛みなさい」は、いったん横に置いてください。声かけより、調理で解決するほうがはるかに早いのです。

・ひき肉、つみれ、卵とじ、ポタージュ

・具だくさんの汁物(飲み込みやすさとタンパク質を同時に稼げます

・とろみをつける、細かく刻む

噛む練習は、食べられるようになってからで十分です。

バランスより先に、タンパク質と脂質

品目を増やすことは、いまは追わなくて大丈夫です。今食べられているものの中に、卵・豆腐・しらす・チーズ・お肉を「ひとつ足す」。多少偏っていて構いません。

鉄は、肉・魚・卵・貝に、タンパク質と一緒に入っています。タンパク質を入れることが、そのまま鉄を入れることになります。野菜を増やしても、鉄はほとんど増えません。順番として、あとで構いません。

そして、脂を落とさないでください。体をつくる材料がタンパク質なら、それを動かすエネルギーが脂質です。焼き鳥は皮つきのまま、お肉は脂身を切り落とさず、卵は黄身まで。「ヘルシーに」は、いまのお子さんには必要ありません。

入らないときは、量ではなく回数を分ける

お腹が張って食べられないとき、量を減らすと総量まで減ってしまいます。減らすのではなく、回数を分けてください。栄養は、一度に大量に摂るより、分けて摂るほうが消化管の負担が少なく、吸収率も上がります。

たとえば卵。「1日1個まで」という決まりはありません。食べられる日は2個3個でも構いません。ただ、一度にまとめて増やすと消化が追いつかないことがあるので、朝・昼・晩に1個ずつのように分けるのが、いちばん入りやすい形です。

食事中のお茶を、水や麦茶に替える

見落とされがちですが、緑茶や紅茶に含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げます。食事中の飲み物を替えるだけで、同じ食事から入る鉄の量が変わります。逆に、ビタミンCは鉄の吸収を大きく助けます。果物を少し添えるだけでも意味があります。

どれくらいで変わるのか

数日で変わる話ではありません。

・のどや食道の粘膜が入れ替わるのに、3〜5日

・赤血球がひととおり入れ替わるのに、約120日

・貯金にあたる鉄(フェリチン)が満ちるには、さらに時間がかかります

ですから、数か月単位で見ていただくことになります。その途中は一直線ではなく、良くなったり戻ったりを繰り返しながら、全体として上がっていきます。揺り戻しは失敗ではなく、経過のうちです。

先に動くのは、体重や身長ではありません。食後にお腹が張らなくなる。食べ終わるのが速くなる。「おかわり」が出る。こうした小さな変化のほうが、先に現れます。そして多くの場合、「気づいたら食べられるようになっていた」という形でやってきます。「今日から食べられるようになりました」という日は、あまり来ません。

私たちの考え方 — 順番を変える。ただし、栄養は万能ではありません

当院の栄養外来には、はっきりした考え方があります。

一般的な食事指導は、品目を増やし、栄養素をまんべんなく満たすことを目指します。それ自体は正しい話です。ただ、体が受け取れる状態になっていないところに、正しい食事を並べても入っていきません。飲み込みにくく、味がわからず、消化が追いつかない体に、「バランスよく食べなさい」は届かないのです。

だから私たちは、順番を変えます。まず、足りていないものを確かめて、それを入れる。受け取れる体に戻す。そのために、いま食べられるものを守りながら、タンパク質と脂質を足していく。品目も量も、そのあとで自然に増えていきます。この進め方は、当院の栄養カウンセラーがご家庭に伴走するときも変わりません。

同時に、お伝えしておきたいことがあります。

医療用のサプリメントで、飲み込む力が戻ることはあります。味覚が変わることも、消化する力が上がることもあります。実際にそうなるお子さんを、私たちは何人も見てきました。

ただ、栄養は万能ではありません。食感や匂いへの強いこだわり、これまでの食卓で積み重なってきた経験、生まれ持った感覚の特性。こうしたものまで、栄養だけですべてが変わるわけではありません。「栄養で治ります」と言ってしまうのは、誠実ではないと思っています。

私たちがしているのは、土台を上げることです。飲み込めるようになり、味がわかるようになれば、その子が自分で広げていける範囲が広がります。そこから先は、本人と、時間の仕事です。

受診されたら、何をするのか

はじめて栄養外来にお越しいただいた日は、こんな流れになります。

問診:いつから、何が食べられて、何が食べられないか。飲み込み方、便の様子、睡眠、機嫌まで一通りうかがいます

診察:全身の状態と、お腹を診ます

血液検査:一般的な健診の項目では、鉄の蓄えはわかりません。体の材料と代謝の状態をまとめて見る採血をご案内しています

方針決め:結果を見ながら、食事とサプリメントを、ご家庭で続けられる形に組み立てます

一度にすべてを変えることはしません。どこから始めるかを、ご家族と一緒に決めます。

来院前に、見ておいていただけると助かること

・お子さんがどんな食べ物を残すか(かたいもの? パサつくもの?)

口に溜めるか、丸呑みするか、流し込むか

・お通じの回数と、便のにおい

氷を欲しがることがあるか

・他院での血液検査の結果があれば、そのコピー

・お薬手帳

メモしておいていただけると、初診の時間を「その子固有の話」に使えます。

「うちの子はどうだろう」と思われたら

まずお伝えしたいのは、自己判断で鉄のサプリメントを始めないでいただきたいということです。鉄は、必要のない人が摂り続けると負担になります。かかりつけの先生と相談しながら進めてください。

そのうえで、今の相談で手応えが出ないときは、一人で抱え込まずに、栄養を専門に診ている医師に相談することも、大切な選択肢だと思っています。「様子を見ましょう」と言われ続けて数年が過ぎてしまうことは、実際によくあります。

そして最後に、これは何度でも申し上げます。

お子さんのせいでも、ご家族のせいでもありません。治療で改善していける状態です。

私自身、自分の家のことに何年も気づけませんでした。気づける機会が、これまでほとんどなかっただけなのです。

合わせて読みたい関連記事

「食べない」の背景には、飲み込み以外にもいくつかの入口があります。お子さんの様子に近いものから読んでみてください。

【完全ガイド】離乳食から小学生までの「食べない」悩み – 小児科医が答える栄養と関わり方のすべて

「食べるのが遅い」「すぐお腹いっぱい」は、わがまま? その不調、消化できずに苦しむ”お腹のSOS”かもしれません

もしかして成長のブレーキに?【生後6ヶ月からの離乳食】鉄分不足が招くこと・小児科医が教える解決ごはん

まとめ

・お肉を口に溜める、丸呑みする、流し込む。これは好き嫌いではなく、飲み込めていないサインかもしれません

・のどと食道の粘膜は3〜5日で入れ替わり、その材料に鉄を使います。鉄が足りないと、粘膜が薄くなります

・組織のしなやかさを支えるコラーゲンも、鉄がなければ組み立てられません(ビタミンCがその鉄を助けます)

氷をガリガリ食べたがるのは、鉄不足のはっきりしたサインです

・飲み込みにくさの原因は鉄だけではありません。だんだん強くなる・つかえて出してしまうときは、栄養より先に診察で確かめます

・ご家庭では、飲み込みやすい形に変える/バランスより先にタンパク質と脂質/入らないときは量ではなく回数を分ける

・変化には数か月かかり、途中は一進一退です。先に動くのは体重ではなく、お腹の張りと食べる速さです

「よく噛みなさい」と言い続けてこられたご家族ほど、思い当たるところがあるかもしれません。責める必要はまったくありません。通り道の材料が、足りていなかっただけです。

材料が満ちてくれば、体は自分で戻っていきます。気づいたら食べられるようになっていた、という日が来ることがあります。

栄養外来(分子栄養学外来)のご案内

「よく噛みなさい」と言い続けても変わらなかったお子さんで、詳しい血液検査をしてみると鉄が足りていなかった、というケースを当院では多く経験しています。子どもの栄養外来(分子栄養学外来)では、飲み込み方・食べ方・便の様子までうかがったうえで、血液検査をもとにお子さん一人ひとりに合わせて組み立てていきます。

▶ 栄養外来(分子栄養学外来)のご案内

ご予約について

当院は予約制です。ご予約は、当院ホームページの予約システム(デジスマ診療アプリ)から承っております。

▶ 受診のご案内・ご予約方法はこちら

小森先生の最新情報を受け取る

X(旧Twitter)でフォロー

診察室では話しきれないこと、医師が何を考えながら診ているのかを書いています。

小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL

LINE登録のご案内

栄養療法の詳しい情報・限定記事をLINEでお届けしています。本気でお子さんの体を整えたい方は、ぜひご登録ください。

▶ LINE登録はこちら

この記事の執筆・監修者

小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)

小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。

「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。

TOP