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お子さんの便秘治療で酸化マグネシウム(カマ、重カマ、カマグ、マグミット、マグラックス)を処方された方へ。
「もう何ヶ月も飲んでいるけど、ずっと飲み続けて大丈夫?」「中毒にならないの? 高マグネシウム血症って怖い名前だけど…」
こうした不安から、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。お子さんのことを心配されるお気持ちは、とても自然で、大切なことです。
先に結論をお伝えします。
小児の酸化マグネシウムの内服は、極めて安全性が高い——これがガイドラインに基づく医学的な結論です。
この記事では、その根拠と、念のため知っておきたい注意点を、小児外科の専門医がわかりやすく解説します。
小児慢性便秘症診療ガイドライン(2015)では、以下のことが確認されています。
便秘以外に持病がなく、一般的な用法・用量で酸化マグネシウムの治療を受けているお子さんにおいて、国内外の論文や医薬品副作用データベースで高マグネシウム血症の報告はなかったと記載されています。
さらに、ガイドライン作成委員の先生方が、酸化マグネシウムを内服中のお子さんの血中マグネシウム濃度を実際に調べたところ、腎臓に問題がないお子さんでは、血中マグネシウム値が問題になるケースはなかったと報告されています。
現在までに報告されている高マグネシウム血症の患者さんのほとんどは、成人——特に高齢者で、もともと腎臓などに持病をもっておられる方です。
つまり、腎臓が正常に働いているお子さんであれば、酸化マグネシウムの長期内服を過度に心配する必要はありません。
通常、酸化マグネシウムを多く摂取しても、余分なマグネシウムは体の中で自然に処理されます。その流れを簡単にご説明します。
① お薬として飲む
酸化マグネシウムが胃で溶け、腸に届きます。
② 腸で水分を集める
腸の中に水分を引き寄せることで、便を柔らかくします。これがカマの「便秘薬」としての働きです。
③ 一部が血液に吸収される
腸から少量のマグネシウムが血液中に吸収されます。
④ 腎臓がろ過して尿で排出
血液中の余分なマグネシウムは、腎臓がしっかりろ過して、おしっこ(尿)として体の外に出します。
腎臓が正常に働いている状態では、このろ過機能が十分に働くため、基準値を少し超える程度では問題になりません。カマを内服していると正常値をわずかに超えることはありますが、問題になるレベルになることは極めて少ないと言えます。
血中のマグネシウム濃度が基準値を超えた状態をいいます。(正常基準値は1.6〜2.6mg/dLと報告されています)
高マグネシウム血症は、軽度の上昇では症状が出現しません。問題があるレベルになると、以下のような症状が段階的に現れます。
血中マグネシウム 5mg/dL超 → 嘔吐、筋脱力、傾眠、徐脈、低血圧
12mg/dL以上 → 意識混濁・消失、呼吸筋麻痺
15mg/dL超 → 心停止に至ることもあります
ただし繰り返しますが、腎臓が正常なお子さんが通常量のカマを内服している限り、これらの数値に達することは考えにくいとされています。
腎機能障害がある方や高齢の方は、以下の症状に注意してください。
✔️ 頭痛・吐き気・嘔吐
✔️ たちくらみ・めまい
✔️ 脈がおそくなる
✔️ 体がだるい、力が入りにくくなる
✔️ 眠気でぼんやりする、うとうとする
お子さんで上記の症状が気になる場合は、念のため主治医にご相談ください。
酸化マグネシウムの安全性がわかったところで、便秘治療全体の「うまくいくコツ」をお伝えします。
① 決められた量をキッチリ飲む
便秘の治療は、まず「処方どおりに薬を飲むこと」から始まります。自己判断で量を減らしたり、やめたりしないことが大切です。
② 「うまくいっている」を基準にする
「うまくいっている」とは、毎日、すんなり、すっきり、しっかり排便ができていることです。この状態を維持できているなら、安心して治療を続けましょう。
③ うまくいっていないと感じたら、主治医に相談する
便秘の治療は、根気と時間がかかります。だからこそ、正しいレール「=うまくいっている」の上で治療を継続することが大事です。今の治療がうまくいっていないと感じる場合には、遠慮なく主治医に相談してください。
当院のブログでは、便秘治療に関するさまざまなテーマを解説しています。
▶ 便秘治療はいつまで?治療のゴール設定と方針の考え方
「薬をやめるタイミング」「治療のゴールをどう設定するか」が気になる方はこちらをご覧ください。
▶ 排便習慣を身につける行動認知療法のアプローチ
薬だけでなく、考え方と行動の面から便秘を改善する方法を解説しています。
▶ 食事量が少なくても便秘に注意すべき理由
「食べる量が少ないから便が出なくても仕方ない」は誤解です。その理由を解説しています。
ここまでお読みいただき、酸化マグネシウムの安全性についてはご安心いただけたかと思います。
最後に、もう一歩踏み込んだ視点をお伝えします。
実は、マグネシウムは体内で300以上の酵素反応に関わる重要なミネラルです。便秘の治療で使う量は安全ですが、鉄・亜鉛・ビタミンDなど他のミネラル・栄養素も含めた全体のバランスを見ることで、便秘の改善だけでなく、お子さんの体調全体をサポートできます。
「薬で出す」だけでなく、「腸が本来の力を取り戻す」ためには、栄養面の土台づくりも大切です。当院の分子栄養学外来では、血液検査でミネラルバランスを含めた栄養状態を評価し、便秘治療と栄養の両輪でお子さんをサポートしています。
▶ 子どもの不調を栄養で改善|当院の分子栄養学・詳しい治療の流れと費用
便秘・栄養・子育ての知見を毎日発信しています。
小森広嗣|こどもの栄養とお腹の専門医🌱 @KomoriKodomoCL
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小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
慶應義塾大学医学部卒。都立小児総合医療センター外科医長などを経て小森こどもクリニックを開院。小児科医・小児外科専門医として数多くのおなか(消化管)の手術や治療に携わり、「こどものお腹のスペシャリスト」として消化管の構造と機能に精通する。
自身や家族の不調が栄養療法で改善した手応えから、「西洋医学だけでは届かない不調」の解決策として「栄養」の重要性を確信。「吸収の場である腸」と「体の材料となる栄養」の両面から、標準治療と分子栄養学を柔軟に組み合わせ、その子の体の土台を根本から整える「統合的な医療」を実践している。日本小児外科学会認定専門医・指導医、医学博士。