

目次
お子さんの髪に、ある日突然「円」を見つけてしまった時の、胸が張り裂けるような不安。誰にも相談できず、インターネットで情報を検索しては、かえって眠れない夜を過ごしている…そんなお母さん、お父さんもいらっしゃるかもしれません。
私たちは、まずその深い不安と孤独から、ご家族を解放したいと心から願っています。
先に、この記事の結論をお伝えします。当院では、お子さんの心と体に大きな負担をかけない、痛みや恐怖が全くない最新の「光線療法(エキシプレックス)」を主軸とした専門外来を行っています。
そして、もう一つの大切な、希望の事実をお伝えさせてください。
子供の円形脱毛症は、多くの場合、時間をかけてきちんと髪が生えそろいます。
このガイドは、その希望を確かなものにするための具体的な道筋をお示しするものです。どうぞ、心を少しだけ楽にして、読み進めてみてください。
私たち小森こどもクリニックがお子さんの円形脱毛症治療を行う上で、最も大切にしていることがあります。それは、治療によってお子さんの心に余計な負担をかけない、ということです。
治療のためとはいえ、痛みを伴う処置や、副作用の心配が常につきまとう方法は、お子さんを笑顔から遠ざけてしまう可能性があります。クリニックへ通うことが、お子さんにとって前向きな時間であってほしい。私たちはそう考えています。
だからこそ、当院の治療プランは、まず「ステロイド外用薬」と「痛みのない光線療法」という、お子さんの心と体への負担が少ない選択肢を軸に組み立てられています。これが、私たちの治療における基本的な考え方です。
この光線療法で最も重要になるのが、お子さん一人ひとりの状態に合わせた、きめ細やかな調整です。
お子さんの肌は大人と比べて非常にデリケートですし、脱毛の状態や範囲、アトピー素因の有無など、状況は全く異なります。安全を確保しながら最大限の効果を引き出すためには、光の強さ(照射量)や治療の頻度を的確に判断し、調整していく専門的な知識と臨床経験が求められます。
私たちは、この治療法に責任を持ち、常に最善の形でご提供したいという想いから、「専門外来」として特化した診療体制を整えています。
私たちが数ある治療法の中から「光線療法(エキシプレックス)」を選んだ理由は、極めてシンプルです。それは、この治療法が、私たちの「痛みと怖さをなくしたい」という考え方を、まさに形にしたものだったからです。
✔️温かい光を、数十秒当てるだけ。痛みは全くありません。
✔️注射のような、針を刺す恐怖もありません。
✔️全身に作用する飲み薬と違い、副作用のリスクも極めて低い。
これこそが、私たちが理想とする子供のための治療法だと確信し、この地域のご家族に届けたいという一心で、専門外来の開設に至りました。
ここからは、円形脱毛症という病気について、医学的にわかっている「本当のこと」を、できるだけ分かりやすくご説明します。正しい知識は、ご家族の漠然とした不安を、具体的な安心に変える力を持っています。
外来で最もよくいただくご質問の一つに、「原因はストレスなのでしょうか?」というものがあります。お子さんの生活に何か負担をかけてしまったのではないかと、ご自身を責めてしまう保護者の方も少なくありません。
結論からお伝えすると、円形脱毛症の主な原因はストレスではありません。
現在、最も有力な原因と考えられているのは「自己免疫疾患」というものです。これは、本来ならウイルスや細菌などの外敵から体を守るはずの「免疫システム」が、何らかの理由で勘違いを起こし、自分の体の一部である毛根を攻撃してしまう状態を指します。
例えるなら、「火災報知器の誤作動」に近いかもしれません。家の中に悪い侵入者がいないにもかかわらず、警報が鳴り響いてしまう。体の中で、それに似た“ちょっとした勘違い”が起きているのです。
大切なのは、これが誰かのせい、特にご家庭での育て方や環境のせいではない、ということです。犯人探しをする必要は全くありませんので、ご安心ください。
治療を始めても、すぐに髪が生えてこないことに、不安や焦りを感じるかもしれません。しかし、これにはちゃんとした理由があります。それは、髪の毛に「毛周期(もうしゅうき)」という自然な成長サイクルがあるからです。
髪の毛には、
1. 活発に伸びる「成長期」
2. 成長が止まる「退行期」
3. そして抜け落ちて次の準備をする「休止期」
という3つの段階があります。円形脱毛症は、このサイクルが一時的に乱れ、多くの髪の毛が「休止期」に入ってしまった状態と言えます。

治療の目的は、このお休みしている毛根を優しく起こしてあげて、再び「成長期」へと戻る手助けをすることです。髪の毛が目に見える長さまで伸びるには、当然ながら一定の時間が必要です。そのため、効果を実感できるまでには、数ヶ月単位の時間が必要になるのが一般的です。焦らず、じっくりと取り組んでいきましょう。
保護者の皆様が最も知りたいこと、それは「この子の髪は、また元通りに生えてきますか?」という問いだと思います。
はい。医学的にも、特に症状が1〜2箇所に限られるお子さんの円形脱毛症は、その多くが時間をかけてきちんと生えそろいます。
最も大切な事実は、円形脱毛症では髪の毛が抜けてしまっても、髪を作る工場である「毛根」そのものが消えてしまうわけではない、という点です。工場はただ活動を休止しているだけなので、再び髪を生やす力は失われていません。
もちろん、回復までの時間には個人差がありますし、残念ながら再発を繰り返すケースもゼロではありません。だからこそ、一喜一憂せずに、私たち専門家が「伴走者」として、長い目でお子さんの状態を見守り、その時々で最善の方法を一緒に考えていくことが大切だと考えています。
ここからは、当院の治療の主役となる「光線療法」について、具体的にご説明します。「光で治療する」と聞いても、あまりイメージが湧かないかもしれません。どのようなことをするのか、痛みはないのか、どれくらい通うのか。ご家族が抱く一つひとつの疑問に、丁寧にお答えしていきます。
光線療法とは、治療効果のある特殊な紫外線(UVB)を、患部にだけピンポイントで照射する治療法です。当院では「エキシプレックス」という先進的な医療機器を使用しています。
この光には、毛根への攻撃を仕掛けている免疫細胞の働きを、穏やかに落ち着かせる作用があります。火災報知器の誤作動(自己免疫の勘違い)が起きている場所に、専門家が直接働きかけて警報をリセットするようなイメージです。
これにより、毛根への攻撃が止まり、髪の毛が再び安心して成長できる環境を整えていきます。全国的にも、この治療を受けられる施設はまだ限られています。
クリニックでの治療が、お子さんにとって不安な時間にならないよう、実際の流れを具体的にご紹介します。
1. 受付と診察:
受付後、診察室にお入りいただきます。まず医師が頭皮の状態を丁寧に確認し、その日の光の強さや当てる範囲などを決定します。
2. 準備:
治療する場所に、髪を優しく分けます。保護者の方にもすぐ隣で見ていていただけます。
3. 光の照射:
機器の先端を、脱毛している部分の皮膚にそっと当て、光を照射します。照射時間は、1箇所あたりほんの数秒から数十秒です。
4. 終了:
あっという間に終了です。絆創膏を貼ったり、薬を塗ったりする必要もありません。そのままお帰りいただけます。

治療中、お子さんが感じるのは「じんわりとした温かさ」だけです。チクっとしたり、熱くなったりすることはなく、痛みは全くありませんのでご安心ください。実際に治療を受けた小さなお子さんからも、「あったかくて気持ちよかった」という声を聞くことが多いです。
光線療法は、1回で劇的に変化が出るものではなく、回数を重ねることで少しずつ効果を発揮していきます。
✔️通院頻度:
基本的には、週に1〜2回のペースで通院していただくことから始めます。
✔️治療期間:
髪の毛の成長サイクル(毛周期)を考えると、効果が見え始めるまでには少し時間が必要です。まずは3ヶ月〜半年を一つの目安として治療を続け、発毛の状態を見ながら、その後の計画を一緒に考えていきます。
もちろん、ご家庭の事情や学校行事などに合わせて、通院ペースは柔軟に調整できますので、いつでもご相談ください。
専門的な治療と聞くと、費用面でご心配される方もいらっしゃるかもしれません。
円形脱毛症に対する光線療法(エキシマライト)は、健康保険が適用される治療です。また、お住まいの自治体によっては、子ども医療費助成制度の対象にもなります。
詳しい費用については、診察の際に丁寧にご説明いたしますので、ご安心ください。
私たちは、光線療法が非常に優れた治療選択肢であると考えています。しかし、円形脱毛症の治療法は一つではありません。ここでは、当院の治療方針と、その背景にある考え方についてご説明します。
「この治療を受ければ、必ず髪は生えてきますか?」というご質問をいただくこともあります。
正直にお答えすると、どのような治療法であっても「100%必ず効果がある」とお約束することはできません。効果の現れ方には、どうしても個人差があります。
しかし、それを踏まえた上で、私たちのこれまでの臨床経験から言えることがあります。それは、多くのお子さんとご家族が、この光線療法によって発毛という確かな手応えを感じ、笑顔を取り戻されているという事実です。この治療は、試してみる価値のある、非常に希望の持てる選択肢の一つであると、私たちは考えています。
当院でお子さんの円形脱毛症を治療する際の基本的なプランは、「光線療法」と「ステロイド外用薬(塗り薬)」を効果的に組み合わせることです。
✔️ステロイド外用薬:
脱毛が始まったばかりの時期や、炎症のサインがみられる場合に、まず炎症を抑える目的で使用します。
✔️光線療法:
落ち着いた状態の頭皮に光を照射し、免疫の“勘違い”を正常な状態に戻す手助けをすることで、安定した発毛を促します。
この二つを組み合わせることで、お子さんの心と体への負担を少なくしながら、効果的な治療を目指します。
私たちがこの治療プランを推奨するのには、明確な理由があります。それは、お子さんにとっての安全性と有効性が、科学的根拠(エビデンス)によって示されているからです。
日本皮膚科学会が策定している「円形脱毛症診療ガイドライン」においても、お子さんの円形脱毛症に対して、ステロイド外用薬と、当院で行う光線療法(ナローバンドUVB療法)は、推奨される治療法として挙げられています。
円形脱毛症の治療には、局所免疫療法(SADBEなど)や内服薬(飲み薬)といった他の選択肢もあり、それらは特に大人の場合や、症状が重い場合に有効なことがあります。
しかし、これらの治療法は、かゆみやかぶれといった皮膚症状や、全身への影響を考慮する必要があります。そのため、当院では、まずお子さんの心身への負担が少なく、かつガイドラインでも推奨されている安全な方法から治療を開始することを基本方針としています。
治療はクリニックだけで完結するものではありません。お子さんが安心して毎日を過ごせる環境を整える、ご家族のサポートは何よりの力になります。ここでは、日常生活でよくいただくご質問や、園・学校との連携についてお答えします。
Q. シャンプーは、普通にしても大丈夫ですか?
A. はい、全く問題ありません。髪が抜けることを心配して、洗うのをためらってしまうお気持ちはよく分かります。しかし、シャンプーで抜ける髪は、いずれにせよ寿命で抜け落ちる髪です。むしろ、頭皮を清潔に保つことは、健康な髪が育つための良い環境づくりに繋がります。いつも通り、優しく洗ってあげてください。
Q. 食事で何か気をつけることはありますか?
A. 特定の食品が円形脱毛症を治すという科学的な根拠は、残念ながらありません。何か特別なものを食べさせる必要はなく、栄養バランスの取れた食事を心がけることが、体全体の健康にとって一番です。
Q. 髪を結んだり、帽子をかぶったりしてもいいですか?
A. はい、大丈夫です。ただし、髪を強く引っ張るような髪型は、毛根に負担をかける可能性があるので避けた方が良いでしょう。帽子は、紫外線から頭皮を守るという意味でも有効です。お子さんが気にいるものがあれば、ぜひ活用してください。
お子さんが多くの時間を過ごす園や学校の先生方に、病気のことをどう伝えれば良いか悩まれる方もいらっしゃいます。
大切なのは、「①うつる病気ではないこと」「②主な原因はストレスではないこと」という2点を、先生に正しく理解していただくことです。これにより、お子さんが周りの子から誤解されたり、心ない言葉をかけられたりするのを防ぐことができます。
プールの授業なども、基本的には参加して問題ありません。ただ、お子さん自身がお友達の目を気にするようであれば、無理に参加させる必要はないでしょう。
どのように伝えれば良いか、もし迷われた時は、どうぞ診察の際に遠慮なくご相談ください。ご家族と一緒に、一番良い方法を考えます。
様々な情報をお伝えしてきましたが、最後に一番大切なことをお話しさせてください。それは、お子さんにとって一番の薬は、お母さん・お父さんの「安心した笑顔」だということです。
保護者の方が不安な気持ちでいると、それはお子さんにも伝わってしまいます。逆に、ご家族が「大丈夫だよ」「髪の毛があってもなくても、あなたのことは大好きだよ」と、どっしりと構えていてくれる安心感は、お子さんの心を何よりも強く支えます。
治療は私たち医療者に任せ、ご家庭では、これまでと変わらない愛情をたくさん注いであげてください。
最後に、これまでの内容と少し重複する点もありますが、特に多く寄せられるご質問について、改めてお答えします。
Q. 何歳から光線療法を受けられますか?
A. 光を当てる数秒〜数十秒の間、じっとしていられるお子さんであれば、年齢に明確な制限はありません。当院では1、2歳のお子さんから治療を受けていただいています。
Q. アトピー性皮膚炎があるのですが、治療は可能ですか?
A. はい、全く問題なく可能です。光線療法はアトピー性皮膚炎の治療にも用いられるものであり、併発しているお子さんにも安全に受けていただけます。診察の際に肌の状態を丁寧に確認しながら進めますのでご安心ください。
Q. 一度治っても、再発することはありますか?
A. 正直にお伝えすると、再発の可能性はゼロではありません。円形脱毛症は、一度治っても、数年後にまた別の場所にできることがあります。だからこそ、症状が落ち着いた後も、何か変化があればすぐに相談できる「かかりつけ医」として、長くお付き合いさせていただければと考えています。
Q. 国分寺市以外からでも通えますか?
A. はい、もちろんです。小平市、国立市、府中市、小金井市など近隣の市をはじめ、沿線にお住まいの多くの方が通院されています。
当院への詳しいアクセスは[こちらのページ]をご覧ください。
ここまで長い文章を読んでいただき、本当にありがとうございました。
私たちがこの専門外来でご提供したいのは、単なる治療だけではありません。それは、「ここに来れば、専門家に相談できる」という安心感と、「痛みも怖さもない、新しい選択肢がある」という希望です。
円形脱毛症は、命に関わる病気ではないかもしれません。しかし、ご本人とご家族の心を深く悩ませる、決して軽視してはならない病気だと、私たちは考えています。
どうぞ、もう一人で抱え込まないでください。
まずは、あなたのその不安を、そのまま私に聞かせに来ませんか?
お話を聞かせていただくことから、治療の第一歩は始まります。
[光線療法専門外来の予約はこちら]
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
慶應義塾大学医学部を卒業後、東京都立小児総合医療センターなどで小児外科医として豊富な臨床経験を積む。現在は地域のかかりつけ医として、日々多くのご家族と向き合っている。日本小児外科学会認定の小児外科専門医・指導医、医学博士。
「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分か-ち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療や情報発信を行っている。