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【小児外科医監修】子どもの傷跡をきれいに治すテーピング|方法・期間・テープの選び方

  • 公開:2020年12月16日
  • 更新:2026年4月4日
  • 小児外科

目次

お子さんのケガややけどが治ってきた頃、「この傷跡、もっときれいにならないかな…」と気になっている方は多いのではないでしょうか。

 

実は、傷がふさがった後のケアこそ、傷跡の仕上がりを大きく左右する大切な時期です。

 

小児外科の臨床現場で、私が特におすすめしているのが「テーピング」による保護。特別な道具は不要で、市販のテープがあればご家庭で始められます。

 

この記事では、テーピングの目的から具体的な方法、いつまで続けるべきか、テープの選び方まで、小児外科医の視点で詳しく解説します。

 

テーピングの前に:傷がふさがるまでの「急性期ケア」

 

テーピングは、傷がふさがった「あと」に始めるケアです。傷が開いている急性期(ケガをしてから1〜2週間程度)は、まずワセリンガーゼによる保湿で創部を守ることが最優先になります。

 

▶ ワセリンガーゼ法による保湿ケアの詳細はこちら

 

傷がふさがり、新しい皮膚で覆われてからが、テーピングの出番です。

 

傷が治る3つのステージ:テーピングはどこで効くのか

 

テーピングの効果を理解するために、傷が治る過程を簡単に知っておきましょう。傷ができた瞬間から、体の中では大きく3つの段階で「復旧工事」が進みます。

 

第1段階:炎症期(ケガ直後〜数日)

 

出血を止め、免疫細胞がばい菌を掃除する時期です。傷の周りが赤くなったり腫れたりするのは、体が正常に反応している証拠です。この段階ではワセリンガーゼによる保護が中心です。

 

第2段階:増殖期(数日〜数ヶ月)

 

傷を埋めるための新しい組織(肉芽組織)が作られ、表面が新しい皮膚で覆われていく時期です。コラーゲン線維が盛んに産生され、傷跡は徐々に赤みを帯びてきます。この時期の後半から、テーピングを開始します。

 

第3段階:成熟期(数ヶ月〜1年以上)

 

コラーゲン線維がゆっくり再構築され、傷跡が徐々に落ち着いていく時期です。最初は赤く硬かった傷跡が、時間をかけて白く平らになっていきます。テーピングが最も効果を発揮するのが、この増殖期〜成熟期です。この期間に外からの刺激を抑えることで、傷跡の仕上がりが大きく変わります。

 

テーピングをしないと何が起こるのか:傷跡が残る2つの原因

 

増殖期〜成熟期のデリケートな時期に、適切な保護がないまま刺激が加わり続けると、主に2つの「傷跡トラブル」が起こりやすくなります。

 

トラブル1:色素沈着(茶色っぽいシミのような跡)

 

新しい皮膚は、紫外線に対する防御力が非常に低い状態です。この時期に紫外線を浴びてしまうと、メラニンを作る細胞が過剰に反応し、傷跡が茶色や黒っぽいシミのようになってしまうことがあります。テープは紫外線を物理的にブロックするため、色素沈着の予防に直接つながります。

 

トラブル2:肥厚性瘢痕・ケロイド(赤く盛り上がるミミズ腫れのような跡)

 

傷を治そうとする体の反応が過剰になり、コラーゲンが作られすぎてしまうことがあります。特に、膝や肘などの関節部、胸や肩周りといった皮膚がよく引っ張られる部位で起こりやすいのが特徴です。傷跡が赤く硬く盛り上がり、かゆみや痛みを伴うこともあります。テープで物理的な引っ張りを軽減することが、最も有効な予防策です。

 

つまり、テーピングは「見た目をきれいにする」だけでなく、これらのトラブルを未然に防ぐための”予防医学”でもあるのです。

 

テーピングの3つの目的

 

1. 安静(引っ張りの力を減らす)

 

テープで傷跡を固定することで、皮膚が引っ張られて傷跡の幅が広がるのを防ぎます。関節や肩、胸まわりなど、よく動く部位ほど重要です。

 

2. 遮光(紫外線を防ぐ)

 

テープが紫外線を物理的にブロックします。新しい皮膚はメラニンによる防御力がまだ弱いため、日焼けによる色素沈着の予防になります。

 

3. 保湿(乾燥を防ぐ)

 

テープで覆うことで水分の蒸発を抑え、適度な湿潤環境を維持します。乾燥によるかゆみや、かき壊しの防止にもつながります。

 

テーピングの具体的なやり方

 

サージカルテープ

 

ステップ1:テープを貼る前の準備

 

入浴時に前日のテープをはがし、傷跡の周りを通常どおり洗浄します。皮膚をしっかり乾かしてからテープを貼ります。

 

ステップ2:傷跡に対して「垂直」に貼る

 

テープは傷跡の線に対して垂直な向きに貼ります。傷跡が横に走っていればテープは縦に、傷跡が縦であればテープは横に貼る、と覚えてください。

 

少しテープを引っ張りながら、傷跡の両側の皮膚を寄せるようにして貼ると効果的です。ただし、引っ張りづらい場所では無理をせず、そのまま貼っても構いません。

 

テーピング1枚目

 

ステップ3:傷跡全体をカバーする

 

傷跡の端から端まで、テープが少しずつ重なるように並べて貼ります。傷跡全体がテープで覆われている状態を目指します。

 

テーピング完成

 

テープの貼り替え頻度

 

お子さんの場合は、原則として毎日の貼り替えをおすすめしています。

 

毎日入浴時にテープをはがし、皮膚の状態を確認してから新しいテープを貼ることで、テープかぶれを早めに見つけることができます。

 

ただし、汗の量や肌質(乾燥肌・敏感肌など)に応じて、数日おきに貼り替えるなど調節しても問題ありません。少なくとも、テープの半分以上がはがれてきたら貼り替えましょう。

 

テーピングの期間:いつからいつまで?

 

開始のタイミング

 

傷口が新しい皮膚で完全に覆われ、ガーゼや絆創膏が不要になった時点からスタートします。通常、ケガから1〜2週間後が目安です。

 

終了の目安

 

傷跡が安定するまでの半年間が基本の目標です。

 

✔️ 特に重要な期間:最初の1〜3ヶ月(コラーゲン産生が最も活発な「増殖期」)
✔️ より確実を目指す場合:半年〜1年(傷跡の赤みが消え、周囲の肌と同じ色に落ち着くまで)

 

「半年も続けるのは大変…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、完璧を目指す必要はありません。

 

✔️ 夜だけでも貼る
✔️ お出かけの日だけ貼る
✔️ 1週間でも、1ヶ月でも貼る

 

それぞれに意味があります。「何もしない」と「少しでもやる」の間には、大きな差があると考えてください。

 

部位別:テーピングで特に気をつけたい場所

 

傷跡の場所によって、テーピングの重要度やコツが異なります。

 

顔(額・頬・あご)

 

顔は最も目立つ部位であり、保護者の方の関心も高い場所です。顔の傷跡は比較的きれいに治りやすい傾向がありますが、紫外線による色素沈着のリスクが高いため、テープによる遮光が特に重要です。テープが貼りにくい場合は、低刺激の日焼け止めをこまめに塗ることで補いましょう。

 

関節部(膝・肘・手首・足首)

 

関節は日常の動きで常に皮膚が引っ張られるため、肥厚性瘢痕(赤い盛り上がり)のリスクが最も高い部位です。テーピングの「安静」効果が最大限に発揮される場所でもあります。はがれやすい部位なので、粘着力の強いテープ(サージカルテープなど)の使用や、テープの上から包帯で軽く巻いて固定するなどの工夫も有効です。

 

体幹(胸・肩・おなか・背中)

 

胸や肩まわりは、衣服との摩擦や姿勢の変化で張力がかかりやすく、ケロイドができやすい部位として知られています。テープを衣服の下に貼ることで、遮光・安静・摩擦軽減の3つの効果を同時に得られます。衣服で隠れるため、お子さんも見た目を気にせず続けやすい場所です。

 

テーピングと併用するケア:保湿と遮光

 

テーピングだけでも効果はありますが、保湿と遮光を組み合わせることで、さらに良い結果が期待できます。

 

保湿クリーム:テープを貼らない時間帯のケア

 

新しい皮膚は乾燥しやすく、バリア機能がまだ未熟です。テープを貼り替えるタイミング(入浴後など)で、傷跡に保湿クリームやローションを塗ってからテープを貼ると、乾燥対策がより確実になります。

 

ヘパリン類似物質やセラミド配合の低刺激性の製品がおすすめです。市販品で十分ですので、お子さんの肌に合うものを選んでください。

 

日焼け止め:テープが貼れない場所の紫外線対策

 

顔など、テープが貼りにくい・目立ちやすい場所では、子ども用の低刺激な日焼け止めが代替手段になります。石鹸で落とせるタイプが便利です。外出時はテープの有無にかかわらず、傷跡への紫外線対策を意識してください。

 

また、UVカット機能のある衣類(ラッシュガードなど)で傷跡を覆うことも、非常に有効な物理的遮光です。

 

テープの選び方:3つのおすすめ

 

市販の医療用テープの中から、お子さんの肌に合うものを選びましょう。薬局・ドラッグストアで購入できます。

 

優肌絆(ゆうきばん)(日東メディカル社)

肌にやさしい素材で、敏感肌のお子さんにおすすめです。ただし粘着力はやや弱く、はがれやすいのが難点です。

 

マイクロポア メディカルテープ(住友スリーエム社)

肌へのやさしさと粘着力のバランスがよく、最も使いやすいテープです。迷ったらまずこれを試してみてください。

 

サージカルテープ(3M マイクロポア)

粘着力が強く、よく動く関節部にも使えます。ただし刺激がやや強いため、肌が弱いお子さんは注意が必要です。

 

テープ選びのポイントは「続けられること」。かぶれて中断してしまうより、やさしいテープで長く続けるほうが、結果的に傷跡のためになります。

 

テープでかぶれてしまった場合の対処法

 

お子さんの肌は敏感なので、テープかぶれ(接触性皮膚炎)は起こりうるトラブルです。

 

✔️ まず数日テーピングをお休みして、赤みが引くのを待ちます。
✔️ 別の種類のテープを試します(上記3種で相性は異なります)。
✔️ 赤みがおさまらない場合は、医療機関を受診してください。

 

かぶれが起きたからといって、テーピング自体を完全にやめる必要はありません。テープの種類を変えたり、貼る頻度を調整したりしながら、続けられる方法を見つけることが大切です。

 

よくある質問(FAQ)

 

Q. テーピングは何歳からできますか?

 

年齢制限はありません。乳児であっても、傷がふさがった段階でテーピングは開始できます。ただし、小さなお子さんはテープを気にして触ったりはがしたりすることがあります。はがしてしまっても叱らず、貼り直せるときに貼り直す、という気持ちで取り組みましょう。

 

Q. テーピングをしないと必ず傷跡が残りますか?

 

必ず残るというわけではありません。浅い傷であればテーピングなしでもきれいに治ることは多いです。ただし、深い傷、関節部の傷、縫合した傷などでは、テーピングをするかしないかで仕上がりに差が出ることがあります。「やっておけばよかった」と後悔するよりも、できる範囲で取り組むことをおすすめしています。

 

Q. 顔の傷にもテーピングは有効ですか?

 

有効です。特に額やあごの傷は、表情筋の動きで皮膚が引っ張られやすいため、テーピングの恩恵が大きい部位です。ただし、目立つ場所なのでお子さんが嫌がることもあります。その場合は、夜間の就寝中だけテーピングをする方法でも効果があります。日中は日焼け止めで紫外線対策を補いましょう。

 

Q. プールや水遊びのときはどうすればいいですか?

 

水に入る際はテープがはがれやすくなるため、防水性の高いテープを使うか、いったんはがしてから水遊びをし、終わった後に乾かして貼り直す方法をおすすめします。プール後は紫外線を浴びている可能性があるので、日焼け止めの塗り直しも忘れずに行いましょう。

 

Q. シリコーンジェルシートとテープ、どちらがいいですか?

 

シリコーンジェルシートは保湿性に優れ、肥厚性瘢痕の予防・治療に効果があるとされています。価格はテープより高くなりますが、肌への刺激が少なく、テープかぶれが繰り返し起きるお子さんには良い選択肢です。どちらを使うかは、お子さんの肌との相性や、傷跡の状態で判断します。迷ったときは受診時にご相談ください。

 

Q. いつ病院に相談すべきですか?

 

以下のような場合は、一度受診をおすすめします。

 

✔️ 傷跡が徐々に赤く盛り上がってきている
✔️ かゆみや痛みが出てきた
✔️ テーピングを続けているのに傷跡が広がっている気がする
✔️ テープかぶれがひどく、テーピングが継続できない

 

早めに専門家に見せていただくことで、ヘパリン類似物質やステロイドテープなど、次のステップの治療を提案できます。

 

傷の治癒を全体で理解したい方へ

 

この記事ではテーピングによる傷跡ケアを解説しましたが、急性期の洗浄・保湿から傷跡ケアまでの全体の流れをまとめた完全ガイドもご用意しています。

 

▶ 子どもの傷跡で後悔しないために。正しい処置・治し方 完全ガイド

 

傷の回復を「体の内側」からもサポートする

 

傷の修復には「外からのケア」に加えて、体の内側の栄養状態も大きく関わっています。

 

新しい組織を作るための亜鉛、コラーゲン合成に必要なビタミンC、修復材料となるタンパク質、酸素を届ける。これらが不足していると、傷の治りが遅くなったり、傷跡が残りやすくなることがあります。

 

「うちの子、傷の治りが遅い気がする…」「いつも傷跡が残りやすい…」と感じる方は、体の中に「材料不足」が隠れているかもしれません。

 

当院では、小児外科医としての傷の専門知識に加え、分子栄養学の視点からお子さんの栄養状態を科学的に評価する「栄養外来」も行っています。

 

▶ 分子栄養学外来(栄養外来)の詳細はこちら

 

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小森広嗣|こどもの栄養とお腹の専門医 @KomoriKodomoCL

 

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筆者プロフィール

 

小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)

 

慶應義塾大学医学部卒。都立小児総合医療センター外科医長などを経て小森こどもクリニックを開院。
小児科医・小児外科専門医として数多くのおなか(消化管)の手術や治療に携わり、「こどものお腹のスペシャリスト」として消化管の構造と機能に精通する。

 

自身や家族の不調が栄養療法で改善した手応えから、「西洋医学だけでは届かない不調」の解決策として「栄養」の重要性を確信。「吸収の場である腸」と「体の材料となる栄養」の両面から、標準治療と分子栄養学を柔軟に組み合わせ、その子の体の土台を根本から整える「統合的な医療」を実践している。日本小児外科学会認定専門医・指導医、医学博士。