2018年5月09日

「でべそを治すために圧迫療法を」と言われたけれど、テープでかぶれてしまう、うまく貼れない、続けられているのか自信がない——そんな保護者の方へ。圧迫療法がなぜ効くのか、どう貼るのか、かぶれたときにどうするのかを、小児外科専門医が具体的にお伝えします。
まず、安心していただきたいこと
でべそ(臍ヘルニア)は、1歳までにおよそ8割、2歳までにおよそ9割のお子さんが自然に治ります。
つまり、何もしなくても治ることのほうが多い病気です。まずはそこを知っておいてください。
そのうえで、当院が圧迫療法をおすすめしているのには理由があります。
「治った」には2つの意味があります
臍ヘルニアが治ったかどうかを見るとき、私たちは2つの視点を持っています。
1が満たされていれば、医学的には合格です。 ただ私は、2の「見た目」も同じくらい大切だと考えています。穴は閉じたけれど皮膚が余って飛び出したままに見える、ということがあるからです。
圧迫療法の目的は、この2つです。
・穴が閉じる確率を、少しでも高める
・見た目のきれいさを、より良くする
なぜ、押さえると治るのか
ここが分かると、続けやすくなります。
でべそは、おなかに力がかかったときに、閉じきっていない穴から腸が飛び出す状態です。穴から腸が飛び出している時間が長いほど、穴は閉じにくくなります。
圧迫療法は、おへそに重しを乗せることで、腸がおなかの中に戻っている時間を長くする治療です。戻っている時間が長くなるほど、ヘルニアの穴は少しずつ縮んでいきます。
ここから、大事な結論が出ます。
完璧である必要はありません。泣いたときに出てしまうのは仕方がないことです。それでも、押さえている時間の分だけ、確実に治りに近づいています。
圧迫療法は「やればやっただけ効く」、とてもアナログな治療です。0か100かではありません。
実際に、どう貼るのか
用意するもの
・ガーゼ(玉を作ります)
・テープ(紙テープ、フィルムタイプなど数種類)
ドラッグストアで手に入るもので構いません。圧迫療法の物品は保険が使えないため、ご家庭でご用意いただくことになります。
① ガーゼで「玉」を作る
ガーゼをくるくると巻いて、玉を作ります。
市販の綿球(コットンボール)を使う方もいらっしゃいますが、私はガーゼをおすすめしています。 綿球は大きさと硬さが決まってしまっていて、お子さんのおへそに合わせた調整ができないからです。ガーゼなら、巻く量で自由に大きさを変えられます。
大きさの目安は、おへそと同じか、少し大きめです。

② おへそに当てて、テープで留める
作った玉をおへそに当て、ぐっと押し込むようにしてテープで固定します。
難しいことはしなくて大丈夫です。 最初は「玉を1つ、テープでシンプルに留める」から始めてください。
③ テープは「バッテン」に貼る
ここが、かぶれを防ぐいちばんの工夫です。
テープを面でびっしり貼ると、その下の皮膚がすべて蒸れてしまいます。そうではなく、バッテン(×)の形に貼ってください。 皮膚が空気に触れる部分が残るので、かぶれにくくなります。
さらに、貼るたびに少しずつバッテンの位置をずらすと、同じ場所に負担が集中しません。
テープかぶれとの付き合い方
圧迫療法で断念される理由の第1位が、これです。多くのご家庭が通る道ですので、うまくいかなくても気に病まないでください。
お風呂のときは、必ず一度外す
紙テープなどを使う場合、入浴時にはいったん外して、皮膚の状態を確かめてください。 問題がなければまた貼る。赤くなっていれば、その日は休む。
フィルムタイプのテープに慣れてきた方は、2〜3日から4〜5日に一度の貼り替えでも大丈夫なことがあります。
赤くなったら、遠慮なく休む
・少し赤い → 夜だけ休む、または昼だけ休む
・しっかり赤い → 数日まるごと休む
・赤みが強い、ただれている → ステロイドの塗り薬が必要なことがあります。一度ご受診ください
休んだ分だけ治療が振り出しに戻る、ということはありません。 皮膚を守りながら、長く続けるほうが結果的に効果が出ます。
テープは、合うものを探してよい
テープは種類によって、お子さんの皮膚との相性がまったく違います。1種類目でかぶれたら、2種類目、3種類目を試してみてください。
ドラッグストアをいくつか回って、粘着の強さや素材の違うテープを何種類か買っておく——そうやって工夫されているご家庭は、実際にたくさんいらっしゃいます。ガーゼの代わりに絆創膏を使う方、フィルムを併用する方もいます。
保湿などのスキンケアを併用すると、皮膚が持ちこたえやすくなります。
でべその程度に合わせて、力を抜いていい
でべその程度が軽いお子さんなら、昼間だけ圧迫して、夜は皮膚を休めるという進め方でも構いません。
逆に、でべそが大きくてしっかり圧迫したい場合は、スキンケアを併用しながら皮膚にやさしい素材を選び、少しでも長い時間貼れるように工夫していきます。
慣れてきたら、皮膚の状態を見ながら少しずつ圧迫の時間を延ばしていって大丈夫です。
いつまで続けるのか
生後半年から1歳ごろまでが、圧迫療法の中心の時期です。この間、おおむね1か月おきに診察でおへその状態を確認し、閉じてきたら「卒業」と判定します(始めたばかりの時期や不安の強い時期は、1〜2週間おきに見ることもあります)。
1歳を過ぎると、状況が変わります。 歩くようになり、知恵もついて、自分でテープを剥がしてしまうお子さんも出てきます。圧迫の効果自体も、それまでに比べると落ちてきます。
ですから1歳以降は、お子さん本人の性格や、圧迫療法をどれくらい受け入れられるかを見ながら、無理のない範囲で続けていきます。
2〜3歳になっても穴が閉じない場合や、皮膚のたるみが強く見た目が気になる場合は、大きな病院で手術を検討するという流れになります。その際は、連携する専門施設へご紹介します。
「完璧を目指す」考え方もありますが
圧迫療法には流派があり、可能な限り徹底して圧迫すべきという考え方もあります。
私たちが大切にしているのは、バランスです。
そもそも、圧迫をしなくても治るお子さんはたくさんいます。圧迫する意味は、治る確率を少しでも上げることと、よりきれいに治すこと。それ以上でも、それ以下でもありません。
ですから、ストイックにやりきることを目標にしないでください。「まずやってみよう」くらいの気持ちで始めて、あとで後悔がないように、やれる範囲でやっていく。 それで十分です。
よくいただくご質問:おへその黒ずみ
「おへその根元が黒っぽくなってきた」というご相談をよくいただきます。
これは色素沈着で、多くの場合まったく問題ありません。痛みや腫れがなく、色が変わっているだけであれば、そのままで大丈夫です。気になる場合は診察時にお知らせください。
まずは一度、外来でご相談ください
この記事でお伝えした方法は、外来で実際にデモンストレーションを受けていただいてから始めるのがいちばん確実です。おへその大きさも皮膚の強さもお子さんによって違うため、その子に合った玉の大きさや貼り方をお伝えできます。
「圧迫療法を始めた方がいいのか」「このままで大丈夫か」という段階でのご相談も承っています。
※この記事は一般的な情報をお伝えするものです。お子さんの状態はお一人おひとり異なりますので、自己判断はなさらず、必ず医師にご相談ください。
この記事を書いた人
小森 広嗣(こもり こうじ)
小森こどもクリニック 院長/日本小児外科学会 小児外科専門医
慶應義塾大学病院 小児外科、東京都立小児総合医療センター 外科医長を経て、2018年2月に東京都国分寺市で小森こどもクリニックを開院。赤ちゃんから思春期世代まで、数多くの手術・治療に向き合ってきました。
臍ヘルニア(でべそ)については、圧迫療法から手術の要否の判断まで、多くのお子さんの経過を見てきました。また、これまで5000組を超えるお子さんの便秘診療に携わってきました。
「症状を薬で抑えるだけでなく、本当の悩みの根っこを一緒に探す医師でありたい」——それが開院以来変わらない診療の軸です。