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【医師監修】子どもの激しい癇癪・暴言は『気質』ではないかもしれません——血糖・鉄・亜鉛・腸内環境の5つの視点

【医師監修】子どもの激しい癇癪・暴言は『気質』ではないかもしれません——血糖・鉄・亜鉛・腸内環境の5つの視点|小児科|栄養外来・便秘専門外来なら小森こどもクリニック|根本治療に対応

2026年5月06日

【医師監修】子どもの激しい癇癪・暴言は『気質』ではないかもしれません——血糖・鉄・亜鉛・腸内環境の5つの視点

「もう、一緒にいられない」
「警察を呼ぼうかと思った」
「私の育て方が、悪かったんじゃないか」

夜、お子さんが寝静まったあと、検索ボックスに 「子ども 癇癪 異常」 と打ち込む。一日のうちで、いちばん心が静かになる時間に、いちばん重い問いと向き合う。

そんな夜を、何度も過ごしてこられた親御さんが、当院にいらっしゃいます。

激しい癇癪、止まらない暴言、感情の波の大きさ。
何をしても落ち着かず、ただ嵐が過ぎ去るのを待つしかない。
本人を責めることもできず、自分を責めるしかなくて、いつのまにか「私が悪い」「育て方を間違えた」という結論にたどり着いてしまう。

私はこれまで、日々多くのお子さんのお腹や体の不調と向き合ってきました。そして、栄養外来でご家族の切実な声に耳を傾けていく中で、ある一つのことに、確信に近い思いを持つようになりました。

それは、激しい癇癪や暴言は、お子さんの「気質」や「親のしつけ」の問題ではない場合がある ということです。

実際、当院の栄養外来でも、警察を呼ぶことを考えるほどの状態でいらっしゃったお子さんが、栄養の状態を丁寧に評価し、食事療法とサプリメントを根気よく続けていただいた結果、数ヶ月かけて、少しずつ穏やかな表情を取り戻されたケースがあります。

「体の中が整うと、心も整っていく」

これは、私自身が診療を通じて何度も実感している光景です。

この記事では、なぜ栄養が「心」にまで影響するのか、その仕組みを 5つの視点 からお話しします。

小森こどもクリニックの小森医師が、癇癪に悩む親子に温かい光(栄養)を手渡し、安心感を与えている優しい水彩画風のイラスト

なぜ「気質」ではないのか——お腹と心の意外なつながり

私はこれまで、数多くのお子さんのお腹(消化管)の治療に携わり、体の構造や機能と向き合ってきました。その診療の中で、ある「不思議な光景」を数え切れないほど目にしてきました。

それは、お腹の不調がよくなっていくと、それまで親御さんを悩ませていた 激しいイライラや癇癪、夜泣き、集中力のなさまでもが、一緒にすーっと落ち着いていく という現象です。

「お腹の問題なのに、なぜ心まで変わるのだろう」

最初はそう思っていました。しかし、栄養と腸の関係を学んでいくうちに、答えが少しずつ見えてきました。

腸は、栄養を吸収する「場所」であると同時に、心の安定をつくる「材料」を生み出す臓器 なのです。

たとえば、心を穏やかに保つホルモンとして知られる「セロトニン」。実はその約9割が、脳ではなく 腸でつくられている ということが、近年の研究でわかってきました。これを「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼びます。

つまり、腸が荒れていたり、栄養が不足していたりすると、心を整える材料そのものが体の中で足りない状態になる。
その結果、ちょっとした刺激で感情が爆発しやすくなる——そういう現象が、お子さんの体の中で起きている可能性があるのです。

これは、決して「親の育て方が悪い」という話ではありません。お子さん自身も、感情を抑えたくて抑えられないでいる。本人がいちばん辛い思いをしているのです。

視点①:血糖値の乱高下——「些細なこと」で爆発する仕組み

激しい癇癪と、もっとも関係が深いと感じるのが「血糖値の乱高下」です。

甘いお菓子・ジュース・菓子パンなどを食べると、血糖値がぐんと上がります。そのあと、体は血糖値を下げようとインスリンというホルモンを大量に出し、今度は血糖値が 急降下 します。

血糖値が急降下すると、体は危機を感じて、アドレナリンやコルチゾールといった「興奮ホルモン」を出します。これらは本来、危険から身を守るための非常用ホルモンですが、頻繁に出ると次のような状態を引き起こします。

・ 些細なことで爆発する(瞬間的に怒りが沸く)
・ 急に泣き出す、急に笑う(感情の振幅が大きい)
・ 食後しばらくしてから不機嫌になる
・ 夕方になるとイライラが増す

これは、本人の意志でコントロールできる範囲を超えています。「気合いで我慢しなさい」と言われても、すでに体の中ではアドレナリンの嵐が起きているからです。

視点②:鉄不足——「心を整える材料」が足りない

二つ目の視点は「鉄不足」です。

鉄は赤血球の材料として有名ですが、実はそれ以上に重要な役割があります。心を穏やかに保つ神経伝達物質——ドーパミンとセロトニン をつくるための、酵素を動かす「鍵」となっているのです。

鉄が不足すると、これらの神経伝達物質の合成がうまくいかず、結果として:

・ ちょっとしたことで気分が落ち込む
・ イライラが続く
・ 不安感が強くなる
・ 集中力が続かない

といった状態が起きやすくなります。

特に注意していただきたいのは、ヘモグロビン(一般的な貧血の指標)が正常でも、貯蔵鉄である「フェリチン」が空っぽ というお子さんが非常に多いことです。これを「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」と呼びます。

「学校の健診で貧血と言われたことはない」というお子さんでも、フェリチンを測ってみると驚くほど低いことがあります。

👉 関連記事:フェリチンを増やすには?朝起きられない子の隠れ貧血(鉄不足)と増やし方を小児外科医が解説

視点③:亜鉛不足——感情のブレーキが効かない

三つ目の視点は「亜鉛」です。

亜鉛は、神経伝達のバランスを保つために欠かせないミネラルです。亜鉛が足りないと、興奮系の神経伝達が抑えにくくなり、結果として:

・ 些細なことに過敏に反応する
・ 一度怒り始めると止まらない
・ 感情のブレーキが効かない
・ 偏食が強くなる(亜鉛は味覚にも関わるため)

といった状態が起きやすくなります。

特に 偏食が強いお子さん は、亜鉛不足が連鎖的に深まる悪循環に陥っていることがあります。亜鉛が足りない → 味覚が鈍る → さらに偏食になる → ますます亜鉛が足りなくなる、という負のループです。

「ちゃんと食べてくれない」のは、お子さんのワガママでも、親のしつけ不足でもなく、体が「食べる準備」を整えられていない だけかもしれないのです。

視点④:タンパク質不足——感情の「設計図」の材料がない

四つ目の視点は「タンパク質」です。

セロトニン・ドーパミン・GABA(リラックス系の神経伝達物質)など、心を整えるホルモン・神経伝達物質は、すべて タンパク質(アミノ酸)からできています。

つまり、タンパク質が足りないと、心を穏やかに保つホルモンの「材料そのもの」が体の中に足りない、という状態になります。

特に現代の子どもは、朝食が「パンとジュース」「菓子パン1個」だけで終わってしまうケースが多く見られます。これでは、午前中の脳と心を支えるタンパク質が大きく不足しがちです。

「うちの子、ちゃんと食べているはずなのに…」と感じる親御さんは多いのですが、タンパク質量 という観点で振り返ってみると、意外なほど不足していることがあるのです。

視点⑤:腸内環境——心を整える9割が「腸」でつくられる

五つ目、そして最も大切な視点が「腸内環境」です。

冒頭でお話ししたように、心を穏やかに保つセロトニンの 約9割は、腸でつくられています。腸内細菌のバランスが整っていないと、いくらタンパク質や鉄や亜鉛を摂っても、セロトニンが十分に合成されません。

腸内環境を乱す代表的な要因は:

・ 甘いもの・小麦・乳製品の摂りすぎ
・ 加工食品・添加物の多い食事
・ 抗生物質の繰り返し使用
・ 慢性的な便秘や下痢

などです。

特に 便秘が続いているお子さんで、激しい癇癪が見られる 場合、腸内環境の乱れが心の不安定さに直結している可能性が高いと、私は考えています。

5つの視点が、ドミノのように連鎖している

ここまでお話ししてきた5つの視点は、それぞれ独立しているわけではありません。ドミノ倒しのように、互いに連鎖しています。

① 血糖値の乱高下ループ
血糖値が乱れる
↓ 体がエネルギー不足になる
↓ 甘いものを欲しがる
↓ さらに血糖値が乱れる

② 鉄不足のループ
鉄が足りない
↓ ミトコンドリア(エネルギー工場)が動かない
↓ 全身の代謝が低下
↓ さらに鉄を吸収できない

③ 腸内環境のループ
腸内環境が悪い
↓ 栄養を吸収できない
↓ 鉄・亜鉛・タンパク質が体に届かない
↓ 心の材料が足りない

つまり、激しい癇癪は 「ひとつの原因」ではなく、複数の歯車が同時に狂った結果 として現れているのです。

だからこそ、当院では血液検査でお子さんの栄養状態を 網羅的に 評価し、どの歯車から整えていくのが最も効率的かを、一人ひとり個別に設計しています。

どこから始めればいいか迷ったら
5つの視点がつながっているからこそ、整える順番が大切です。ご家庭での最初の一歩のヒントを、小森こどもクリニック 栄養の公式LINEで少しずつお届けしています。

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今日からできる、3つの最初の一歩

「では、今日から何ができるのでしょうか?」とよく聞かれます。明日からすぐに大きな変化が起きるとは限りませんが、土台を整える小さな一歩として、以下の3つをご紹介します。

1. 朝食にタンパク質を1品加える

卵・チーズ・しらす・納豆・ヨーグルト・鶏ハムなど、調理が簡単なもので構いません。タンパク質源を一品加える だけで、午前中の感情の安定がまったく違ってきます。

2. 甘いジュース・菓子パンの頻度を見直す

完全にやめる必要はありません。「毎日」を「週に2〜3回」にする だけでも、血糖値の乱高下は確実に減ります。代わりに、果物(特に皮ごと食べられるもの)や干し芋など、自然な甘みのものに置き換えてみてください。

3. 赤身の肉・レバー・カツオ・卵を意識する

鉄を満たすには、吸収率の高い「ヘム鉄」(動物性食品)が最も効率的です。週に2〜3回は赤身肉や魚を食卓に取り入れてみてください。

ただし、激しい癇癪が日常的に続いている場合、食事だけで鉄や亜鉛のレベルを取り戻すには 時間がかかります。状態が深刻なときは、医療用サプリメントの活用を検討する価値があります。自己判断ではなく、必ず医師の評価のもとで取り入れてください。

お子さんに当てはまりませんか?セルフチェックリスト

以下の項目に、複数当てはまる場合は、栄養という視点での評価をおすすめします。

✔ 些細なことで爆発するように怒る
✔ 一度怒り始めると30分以上止まらないことがある
✔ 食後しばらくしてから不機嫌になる
✔ 夕方〜夜にかけて感情が不安定になる
✔ 甘いもの・ジュースを強く欲しがる
✔ 偏食が強い
✔ 便秘または下痢を繰り返している
✔ 朝起きられない、午前中ぼんやりしている
✔ 集中力が続かない
✔ 顔色が青白い、爪が割れやすい

「うちの子、性格だと思っていたけれど、これだったの…?」
そう気づいて、ホッとされる親御さんはたくさんいらっしゃいます。

お子さんの不調は、決して親の育て方や本人の性格のせいではありません。ただ、体が「材料が足りないよ」「整える仕組みが足りないよ」というサインを、激しい感情というかたちで出していただけなのです。

「治る」とは断言できません。でも、「整う」可能性はあります

医療の世界では、安易に「治ります」「治りました」と断言することはできません。お子さんの体は一人ひとり違い、栄養療法もすぐに変化が見える方もいれば、数ヶ月かけてゆっくり整う方もいらっしゃるからです。

ただ、私が診療の中で何度も実感してきたのは、栄養という土台が整うと、お子さんの体と心が、本来の力を取り戻していく という光景です。

魔法ではありません。
体が、本来の働きを取り戻しているだけです。

そして、その変化の過程で、お子さん自身も、ご家族も、少しずつ「自分たちは大丈夫だ」という自信を取り戻していかれます。

合わせて読みたい関連記事

「激しい癇癪・イライラ」「不安定な感情」というテーマを、別の角度から詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。

・ フェリチンを増やすには?朝起きられない子の隠れ貧血(鉄不足)と増やし方を小児外科医が解説
・ 離乳食を食べない、夜泣き・癇癪が強い…見えない「栄養欠損」が原因かもしれません
・ 当院の分子栄養学・詳しい治療の流れと費用
・ 子どもの便秘と栄養|鉄・ビタミンD不足と「入れる順番」(便秘専門サイト)

▶ 集中力が続かない子の鉄不足
集中や落ち着きと、脳の材料になる鉄・タンパク質の関係を解説します。

▶ 寝つきが悪い・夜中に起きる子の夜間低血糖
寝つきの悪さや夜中の目覚めの背景にある、夜の血糖の揺れを解説します。

まとめ:心の不安定さは、体の不安定さのサイン

「子どもの激しい癇癪は、しつけや気質の問題」——そう信じ込んできた親御さんに、私はこう伝えたいと思います。

それは、お子さんの体が、ずっとサインを出し続けてきたのです。
「栄養という土台が、揺らいでいるよ」と。

そのサインは、激しい感情というかたちで現れるので、見逃されやすく、誤解されやすい。けれど、根っこは「体の材料が足りない」というシンプルな事実だったりします。

ご自身を責めないでください。
育て方が悪かったわけではありません。
お子さんも、いちばん辛い思いをしてきたのです。

栄養という視点を持つことで、ご家族みんなが、もう一度笑顔になれる場所に戻っていける——その可能性を、一緒に探してみませんか。

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「うちの子はどうだろう」と確かめてみたい方へ

「気質だから」「しつけの問題」と言われてきた激しい癇癪のお子さんで、詳しい血液検査をしてみると鉄・亜鉛・タンパク質が足りていなかった、というケースを当院では多く経験しています。感情の波の背景に栄養があるかどうかは、血液検査で確かめられます。当院の子どもの栄養外来(分子栄養学外来)では、癇癪が起きる時間帯・食事・便の様子までうかがったうえで、腸の状態も含めて、お子さん一人ひとりに合わせて組み立てていきます。

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すでに通院中の方へ:感情の波は、数ヶ月かけて一進一退しながら落ち着いていくことが多いものです。上のセルフチェックを3ヶ月目の再検査の前にもう一度つけてみて、数値と一緒に変化を確かめましょう。

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小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL

この記事の執筆・監修者

小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)

小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。

「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。

▶ 著書:『うんちが出ない!』(英智舎・2026年12月9日発売)

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