2026年5月23日

「うちの子、毎日ちゃんと食べているのに、なんだか元気がない」
そう感じたことはありませんか。三食きちんと用意して、好き嫌いもそこそこ付き合いながら食べさせている。でも朝はなかなか起きないし、夕方になると決まって不機嫌になる。風邪もよくひく。
現代の子どもたちの多くは、カロリー(エネルギーの総量)は足りていても、体を動かすための「材料」——ビタミンやミネラル、タンパク質——が静かに不足している状態にあります。見た目ではわかりにくいので、「隠れ栄養失調」と呼ばれます。
以下のチェックリストは、日々の診療と栄養療法の知見をもとに作成しました。お子さんの最近の様子を思い浮かべながら、確認してみてください。
セルフチェック15項目
こころ・行動のサイン
✔ ささいなことで激しい癇癪(かんしゃく)を起こす
✔ 落ち着きがなく、じっと座っていられない
✔ 何かに取り組んでも、すぐに「疲れた」「やりたくない」と諦める
✔ 夕方以降になると急に不機嫌になりやすい
✔ 緊張しやすく、新しい環境に慣れるのにとても時間がかかる
からだ・睡眠のサイン
✔ 朝、何度声をかけても起きられない。午前中はぼーっとしている
✔ 寝つきが悪い、または夜中に何度も目が覚める
✔ 立ちくらみやめまい、頭痛をよく訴える
✔ 爪に白い斑点がある、または爪が割れやすい
✔ 氷や土など、食べ物ではないものをガリガリ噛みたがる
食事・体質のサイン
✔ ご飯やパン、麺類など「白いもの」ばかり食べたがる
✔ 甘いお菓子やジュースがやめられない
✔ 風邪をひきやすく、一度ひくとなかなか治らない
✔ アトピー性皮膚炎や湿疹が治りにくい
✔ 慢性的な便秘で、いつもお腹が張っている
チェックがついた場所から見えてくること
こころ・行動に多い場合
脳の神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)を作るには、鉄やタンパク質、ビタミンB群が必要です。これらが不足すると、感情のコントロールに体が追いつかなくなります。お子さんが「わがまま」に見える行動も、本人の意思だけの問題ではないことがあります。
からだ・睡眠に多い場合
鉄欠乏に加えて、日々の血糖値の乱高下が関わっていることがあります。夜中に何度も起きたり歯ぎしりをしたりするのは、睡眠中に血糖値が下がりすぎ、体が覚醒ホルモン(アドレナリン)を出して急いで対応しているサインです。
食事・体質に多い場合
偏食の背景に亜鉛不足が隠れていることがよくあります。亜鉛が足りないと味蕾(みらい)の新陳代謝がうまくいかず、「味がよくわからないから、食べ慣れた炭水化物しか受け付けない」という状態になります。わがままではなく、体からの静かなSOSです。
また、慢性便秘がある場合は腸内環境が乱れており、いくら良い食事を摂っても栄養がきちんと吸収されにくい状態かもしれません。腸は「栄養の入り口」です。入り口が詰まっていれば、その先に何を入れても効率が落ちてしまいます。
3つ以上チェックがついた方へ
チェックの数よりも大切なのは、「どこから整えるか」の順番です。ご家庭で始める順番のヒントを、小森こどもクリニック 栄養の公式LINEで少しずつお届けしています。
「食べなさい」と叱る前に
チェックが多くついたからといって、焦る必要はありません。
いちばん避けたいのは、「なんで食べないの」「もっとちゃんとしなさい」とお子さんを責めてしまうことです。ガソリンが足りない車に「もっと走れ」とアクセルを踏み込むようなもので、親子ともに疲れてしまいます。
お子さんが食べないのには体の理由があるかもしれない、ということ。そう気づけるだけで、日常の接し方が少し変わります。
今日からご家庭でできること
・ おやつの菓子パンやジュースを、おにぎりやゆで卵に少しずつ置き換えてみる
・ 朝食に卵を一つ、納豆を一パック——タンパク質を「足す」ことから始める
・ 天気の良い日は15分でいいので外に出る(ビタミンDは日光から作られます)
・ 便の回数や形を記録してみる(腸の状態を知る手がかりになります)
完璧を目指す必要はまったくありません。今の食事に「ほんの少し足す」だけで十分です。農場の法則と同じで、毎日少しずつ積み上げたものが、やがて実りになります。
合わせて読みたい関連記事
「もう少し違う角度から知りたい」と思われた方は、こちらもどうぞ。
・ 【医師解説】子どもに血液検査は本当に必要?「フェリチン」「亜鉛」「25-OHビタミンD」一般小児科では測らない3つの指標
・ 朝起きられない子と鉄不足 — フェリチンの正体
・ 子どもが甘いものをやめられない — 糖質依存と鉄欠乏
・ 子どもの便秘と栄養|鉄・ビタミンD不足と「入れる順番」(便秘専門サイト)
おわりに
このチェックリストは、お子さんを「診断」するためのものではありません。
「もしかしたら、体の側にも理由があるのかもしれない」——そう考えるきっかけになれば、それだけで十分です。
気になることがあれば、受診の際にご相談ください。
栄養のヒントを、LINEで受け取る
子どもの栄養について、診察室では話しきれないことや、「今日ひとつだけできること」を、小森こどもクリニック 栄養の公式LINEで少しずつお届けしています。ご登録いただくと「栄養療法スタートアップガイド」もお読みいただけます。何から始めればいいか迷う方は、ここから受け取ってください。
「うちの子はどうだろう」と確かめてみたい方へ
チェックがいくつもついたお子さんで、詳しい血液検査をしてみると鉄・亜鉛・ビタミンDなどが足りていなかった、というケースを当院では多く経験しています。チェックリストで見えた「サイン」の背景に栄養があるかどうかは、血液検査で確かめられます。当院の子どもの栄養外来(分子栄養学外来)では、こころ・からだ・食事の様子までうかがったうえで、検査をもとにお子さん一人ひとりに合わせて組み立てていきます。
ご予約は、当院ホームページの予約システム(デジスマ診療アプリ)から承っています。
すでに通院中の方へ:このチェックリストは、通院中の変化を見るものさしにも使えます。3ヶ月目の再検査の前にもう一度つけてみて、数値と一緒に変化を確かめましょう。
診察室の外の発信
診察室では話しきれないこと、医師が何を考えながら診ているのかを、Xでも書いています。
小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL
– 病気ではないけれど、元気でもない子どもたちへ —— お腹と栄養から、体調の土台を整える
– 子どもの栄養指導・栄養相談って何をするの?【カロリー計算より大切なこと】
この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。
「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。