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思春期の頭痛・だるさ・朝起きられない原因は?子供の不調と「隠れ栄養障害」

「朝、どうしても起きられない」
「学校に行こうとすると決まって頭が痛くなる」
「以前と比べて、明らかにやる気がなく、いつもだるそうにしている」
「ささいなことでイライラしたり、気分が落ち込んだりしている」

 

思春期のお子さんに見られるこうした心身の不調は、多くのご家庭にとって深刻な問題です。これらの症状は、日常生活や学業に大きな支障をきたすだけでなく、ご本人の自信や自己肯定感を大きく損なうことにもつながりかねません。

 

この記事でわかること

 

✔️思春期の長引く不調の背景に「隠れ栄養障害」がある可能性
✔️不調に関連する主要な栄養素(特に鉄)の役割と、頭痛などとの具体的な関連
✔️ご家庭で今日から始められる食事改善の具体的なポイント
✔️食事だけでは改善が難しい場合に、根本原因を特定するための次のステップ

 

はじめに:この記事の目的と対象

 

お子さんの不調に対し、様々な医療機関で検査を受けても「異常なし」と診断されるケースは少なくありません。特に、一般的な血液検査ではヘモグロビン値しか見ず、「貧血ではない」という理由で、その背景にある潜在的な鉄欠乏(隠れ栄養障害)が見過ごされていることが多いのが実情です。

 

「思春期特有の問題」「心理的な要因」といった説明では納得できず、悩まれているご家族も多いでしょう。

 

この記事は、そうした標準的な検査では明らかにならない不調の原因として、「隠れ栄養障害」に着目します。

 

私たちの目的は、「薬物療法以外の選択肢を探している」「身体の土台となる栄養状態から根本的な原因を見つけたい」とお考えのご家族に対し、栄養医学に基づいた新しい視点を提供することです。

 

当院は、個々のお子さんの栄養状態を詳細な血液検査等で評価し、その結果に基づいて最適な栄養学的アプローチを提案することを専門としています。この記事が、お子さんの不調の根本原因を理解するための一助となれば幸いです。

 

第1章:思春期における「隠れ栄養障害」の背景

 

思春期は、子どもたちが潜在的な栄養不足に陥りやすい状況が揃っています。

 

1-1. 「質的栄養失調」の問題

 

現代の食事はカロリーは足りていても、神経機能や身体の成長に不可欠なビタミンやミネラルが不足しがちな「質的栄養失調」に陥りやすい傾向があります。

 

1-2. 第二次性徴期における鉄需要の爆発的増加

 

思春期の鉄欠乏は10歳から15歳に最も多く見られます。特に女子は、急激な身体の成長月経の開始が重なるため、鉄欠乏のリスクが著しく高まります。調査によっては女子中学生の4割以上が潜在的な鉄欠乏状態にあるとも報告されています。

 

一方で、男子も身長と筋肉量の急増に伴い大量の鉄を必要とするため、約5~10%に鉄欠乏が見られるなど、決して稀ではありません。男女問わず、思春期は鉄欠乏のハイリスク期と言えます。

 

1-3. 血糖調節異常による自律神経への影響

 

糖質に偏った食事は血糖値の乱高下を引き起こし、自律神経のバランスを乱します。これが眠気、倦怠感、集中力低下、情緒不安定などの直接的な原因となり得ます。

 

第2章:中枢神経機能に影響を及ぼす主要な栄養素

 

脳機能の維持には、特定の栄養素が不可欠です。

 

2-1. 神経伝達物質の合成と調節に関わるミネラル:「鉄」「亜鉛」「マグネシウム

 

は、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の合成に必須です。鉄が不足すると、意欲や集中力の低下、気分の落ち込みに直結します。実際に、原因不明の慢性的な頭痛が、鉄不足を改善することで劇的に良くなるケースも少なくありません。

 

亜鉛は、神経細胞の保護や記憶形成を担う海馬の機能維持に重要です。また、マグネシウムは、神経の興奮性を抑制し、精神を安定させる作用を持ちます。

 

2-2. エネルギー産生における補酵素:「ビタミンB群」

 

ビタミンB群は、食事から摂取した栄養素を細胞内でエネルギーに変換する過程で不可欠な役割を担い、不足すると脳がエネルギー不足に陥ります。

 

2-3. 神経細胞膜の構成成分:「オメガ3系脂肪酸(DHAなど)」

 

オメガ3系脂肪酸(DHA・EPA)は、神経細胞膜の質を高め、脳内の情報伝達を円滑にするために重要です。

 

第3章:具体的なケースで考える「隠れ栄養障害」

 

栄養素の話が、実際のお子さんの症状とどう結びつくのか、具体的なケースを見ていきましょう。(※プライバシーに配慮した架空の症例です)

 

3-1. ケース1:「『起立性調節障害かも?』と悩んでいたA子さん(13歳)」

 

頭痛や倦怠感で悩ませている思春期の女児

症状:

 

朝、身体が鉛のように重くて起き上がれない。午前中は頭に霧がかかったようにボーッとしてしまい、学校の朝礼で立ちくらみを起こすことも。頻繁に起こる頭痛にも悩まされている。こうした症状から、他のクリニックで「起立性調節障害」と診断されることも少なくありません。

 

食生活:

朝食は菓子パンとジュース。小さい頃からお肉やレバーが苦手でほとんど食べない。

 

考えられる栄養の問題:

 

A子さんのようなケースの背景には、深刻な鉄欠乏血糖調節異常が隠れていることが非常に多くあります。鉄が枯渇すると、脳も身体もエネルギー不足に陥り、思考力低下、立ちくらみ、そして頭痛といった、まさに起立性調節障害を思わせる症状を引き起こします。さらに、糖質中心の食事による血糖値の乱高下は、自律神経を大きく揺さぶります。

 

3-2. ケース2:「集中力が続かず、イライラしがちなB君(14歳)」

 

症状:

 

授業に集中できず、落ち着きがない。ささいなことで友人や家族に当たり散らすことが増えた。

 

食生活:

 

塾帰りにカップ麺やスナック菓子を食べることが多い。魚は骨が面倒で食卓にあまり並ばない。

 

考えられる栄養の問題:

 

まず脳のエネルギー産生に不可欠なビタミンB群や、意欲に関わる神経伝達物質の材料となるの不足が考えられます。B君のように糖質の多い食生活では、それをエネルギーに変えるために体内のビタミンB群が大量に消費され、脳が常に“ガス欠”に近い状態に陥りやすくなります。さらに、神経の興奮を鎮めるマグネシウム亜鉛、身体の基本材料であるタンパク質も決定的に不足しがちです。

 

第4章:個別症状の裏に潜む、共通の根本原因

 

頭痛、倦怠感、意欲低下、気分の落ち込み。これらの症状は、実は「栄養状態の乱れ」という共通の根本原因から生じている可能性は十分にあります。個別の症状を追いかけるだけではなく、その背景にある身体全体の栄養状態という「土台」を見直すことが、根本的な解決への鍵となるのです。

 

第5章:栄養状態の改善に向けた食事の基本的アプローチ

 

栄養状態の是正は、日々の食事の見直しから始まります。

 

【脳機能をサポートする食事の基本ポイント】

お肉や野菜栄養たっぷりの食事

 

✔️身体の土台を作る:タンパク質・鉄・亜鉛

食材例:赤身肉、魚、卵、牡蠣、大豆製品 など

 

✔️エネルギーを作る:ビタミンB群

食材例:豚肉、うなぎ、玄米、卵 など

 

✔️神経の質を高める:オメガ3系脂肪酸

食材例:サバ、イワシ、サンマなどの青魚

 

✔️心を安定させる:マグネシウム

食材例:ナッツ、海藻、豆腐 など

 

✔️血糖値を安定させる

ポイント:糖質過多の食事や清涼飲料水を避け、食物繊維の多い野菜から先に食べる「ベジファースト」を意識する

 

第6章:食事改善で効果が出にくい場合の3つの理由

 

ご家庭での食事改善は非常に重要ですが、それだけではなかなか症状が改善しないケースもあります。

 

理由1:栄養素の消化・吸収能力の個人差
理由2:欠乏の深度と食事からの補充の限界
理由3:原因の特定が困難であること

 

闇雲に試行錯誤するのではなく、原因を正確に特定して的確なアプローチをすることが、改善への最短ルートとなります。

 

第7章:客観的評価に基づく、個別的な栄養アプローチへ

 

より的確で迅速な改善を必要とする場合には、専門家による客観的な評価が不可欠です。

 

当院では、詳細な血液検査を通じて、お子さん一人ひとりの栄養状態を分子レベルで評価します。

 

この検査では、通常の健康診断では分からない「隠れた鉄不足」や、ビタミン・ミネラルのバランスの乱れをデータで詳しく調べ、不調の根本原因を探ります。

 

お子さんの原因不明の不調は、ご本人だけでなく、支えるご家族にとっても先が見えない不安な道のりです。私たちは、ただ検査データを見るだけでなく、その数値の向こう側にいるお子さん一人ひとりの生活と、ご家族の想いに寄り添います。

 

客観的なデータという「羅針盤」を手に、改善への一歩を一緒に踏み出しましょう。

 

もし、お子さんの長引く不調の原因として「隠れ栄養障害」の可能性を考え、ご自身の栄養状態を一度正確に把握したいとお考えでしたら、ご相談ください。

 

 

院長 小森 広嗣
記事監修
院長 小森 広嗣
(こもり こうじ)

慶應義塾大学医学部卒業
小児外科学会専門医、小児外科指導医、医学博士

小森こどもクリニックでは、成長の感動や喜びをお子さん ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育ができる社会を創ることをビジョンに活動しています。

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