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【小児科医が解説】起立性調節障害(OD)と血糖値の意外な関係——腸と栄養の専門医の視点

起立性調節障害(OD)と血糖値の意外な関係を、腸と栄養の専門医が解説

起立性調節障害

「うちの子、また今朝も起きられなかった。根性がないのかな……」

 

そう思って、ご自分を責めていませんか。
あるいはお子さんに、「頑張れ」「もっとしっかりして」と言ってしまったことがありますか。

 

その罪悪感は、今日で終わりにしてください。

朝起きられないのは、体の中で「物理的なこと」が起きているからです。そしてそれは、正しいアプローチで変えられます。

 

起立性調節障害(OD)の裏に隠れた「血糖値」という犯人

 

起立性調節障害(OD)は、自律神経の乱れによって立ちくらみや朝の不調が起きる病態として知られています。全国の中学生の約10%が該当するとも言われ、不登校の背景にODがあるケースも少なくありません。

 

しかし、そのODの症状を「陰で悪化させている犯人」として、医療の現場でも見落とされがちなものがあります。

それが、血糖値の乱れ(血糖調節障害)です。

 

自律神経の治療だけでは改善しないお子さんの中に、血糖値の不安定さが隠れている——私が腸の構造と栄養の吸収を両方の視点から診てきたからこそ、見えてきた事実です。

 

体の中で何が起きているのか——メカニズムを正しく理解する

 

健康な状態では、食事をすると血糖値はゆるやかに上がり、ゆるやかに下がります。体はこの穏やかな波の中で、安定してエネルギーを使えます。

 

ところが、血糖調節障害があると、この波が「穏やか」ではなくなります。

 

血糖値の急上昇と急降下——「血糖スパイク」

 

糖質の多い食事やジュースを摂ると、血糖値が一気に急上昇します。すると膵臓は「大変だ」と判断し、血糖値を下げるホルモン(インスリン)を大量に分泌します。

 

その結果、今度は血糖値が必要以上に急降下し、反応性低血糖の状態に陥ります。

 

低血糖が引き起こす「緊急ホルモン」の連鎖

 

血糖値が下がりすぎると、体は「エネルギーが足りない、緊急事態だ」と判断します。このとき体が頼るのが、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)とアドレナリンです。

 

コルチゾールは血糖値を戻そうとするストレスホルモン。アドレナリンは「闘争・逃走ホルモン」とも呼ばれ、本来は敵に遭遇した時に全身を臨戦態勢にするためのホルモンです。

 

この緊急ホルモンが食事のたびに、1日に何度も分泌される状態が続くと、子どもの体にはこんなことが起きます。

 

❌頭が痛くなる。アドレナリンによる血管の収縮・拡張の繰り返しが、頭痛を引き起こします。
❌めまい・立ちくらみが起きる。自律神経が揺さぶられ、血圧の調節がうまくいかなくなります。これがODの症状と重なります。
❌極度の疲労感に襲われる。エネルギー代謝が乱れ、何もしていないのにぐったりします。
❌イライラ・不安・感情の爆発が起きる。血糖値の乱高下は脳の神経伝達物質を不安定にし、感情のコントロールを難しくします。

 

「最近うちの子、ちょっとしたことでキレる」「理由もなく泣く」「学校に行くのを怖がっている」——その背景に、血糖値の乱れが隠れているケースは、想像以上に多いのです。

 

「ちゃんと寝ているのに疲れが取れない」の正体

 

この疑問の答えも、血糖値にあります。

 

夜間に血糖値が下がると、体はアドレナリンを放出して血糖値を戻そうとします。アドレナリンが分泌されている状態では、深い睡眠(ノンレム睡眠)に入れません。

 

怖い夢を見る。夜中に何度も目が覚める。歯ぎしりをする。寝汗をかく。朝になっても疲れが残っている。

 

「10時間寝たのに、まだ眠い」というお子さんは、睡眠の”量”は足りていても、”質”が伴っていないのです。

 

そして朝方、血糖値がさらに低下すると体は再び緊急モードに入ります。起き上がろうとしても体が言うことを聞かない——これは気力の問題ではなく、体が物理的に「起きられない状態」になっているということです。

 

なぜ甘いものやジュースをやめられないのか——「意志の弱さ」ではない理由

 

「甘いものを控えなさい」「ジュースをやめなさい」と言っても、やめられない。

 

それは意志が弱いからではありません。体が「今すぐ糖をくれ」と命令しているからです。

 

ビタミンB群が不足していると、細胞の中でエネルギー(ATP)を作るミトコンドリアが正常に働きません。エネルギーが不足した脳は、手っ取り早くエネルギーを得ようとして「糖質」を強烈に要求します。

 

ここで、小児外科医として私が強調したいのが「腸」の役割です。

 

腸は栄養を吸収する臓器です。どれだけバランスの良い食事をしても、腸の粘膜が荒れていれば、鉄もビタミンBも十分に吸収されません。いくら食べても体は飢えたまま、脳は糖を欲し続ける——この悪循環が生まれます。

 

私が長年、子どもの腸を手術し、その構造と機能を見てきた経験から言えるのは、腸の状態と子どもの心身の不調は、驚くほど深くつながっているということです。

 

ジュースをやめるよう叱る前に、まず「腸と栄養の土台」を整えること。順序が大切なのです。

 

改善のための2つのステップ——腸を整え、栄養を満たす

 

Step 1:まず「腸」を整える(吸収の土台づくり)

 

どんなに良い食事やサプリメントを摂っても、吸収する場所(腸)が荒れていては効果が半減します。

 

✔️腸を荒らしやすい要因を減らす:

– 砂糖・人工甘味料の過剰摂取を見直す
– 加工食品・添加物の頻度を減らす
– 抗生剤の安易な使用を避ける(医師と相談の上で)

 

✔️腸を整える食材を意識する:

– 味噌汁、漬物、納豆などの発酵食品
– 野菜・海藻・きのこ類の食物繊維
– 骨つきの肉や魚で煮込んだスープ(コラーゲンが腸粘膜を修復)

 

Step 2:「栄養」を満たす(エネルギー工場を動かす)

 

腸が整ってきたら、不足しがちな栄養素を意識的に補います。

 

(酸素を運ぶトラック):レバー、赤身肉、あさり、小松菜
ビタミンB群(エネルギー生産の歯車):豚肉、卵、鮭、バナナ
タンパク質(体のあらゆる材料):卵、鶏肉、豆腐、魚

 

食事だけで十分に補えない場合は、医師の指導のもとでサプリメントを活用する選択肢もあります。自己判断での大量摂取は避け、血液検査で「何が、どれだけ足りないか」を確認してから始めることが大切です。

 

今日の夜から始められる3つのこと——難しいことは必要ありません。

 

1. 夜寝る前に、小さなタンパク質を食べる

焼き鳥1本、ゆで卵1個、チーズひとかけら——なんでも構いません。タンパク質は血糖値の急降下を防ぎ、夜間低血糖のリスクを下げてくれます。「今夜から」始められることです。

 

2. ジュースは「禁止」ではなく「ルール化」する

「ジュースは禁止!」は逆効果になることがあります。果汁100%のものを1回100ml程度、体を動かす前のタイミングに。寝る直前は避ける。「やめる」のではなく「ルールを決める」方が、お子さんも納得しやすくなります。

 

3. 朝食のメインを「糖質」から「タンパク質+脂質」に変える

菓子パンだけ、シリアルだけの朝食は、血糖スパイクの原因になります。卵焼き、チーズ、ウインナーなど、タンパク質と脂質を中心にすることで、午前中の血糖値が安定し、学校での集中力が変わってきます。

 

よくある質問(Q&A)

 

Q. 起立性調節障害と診断されています。栄養アプローチだけで治りますか?

A. 栄養だけで「すべてが解決する」とは申しません。ODは自律神経の問題が中心にありますので、生活リズムの調整や、必要に応じた薬物療法も重要です。ただし、血糖値の乱れが症状を悪化させている場合、栄養の土台を整えることで「薬だけでは届かなかった部分」が改善するケースを、当院では数多く経験しています。

 

Q. 血液検査はどんな項目を調べるのですか?

A. 一般的な健康診断の項目に加え、フェリチン(貯蔵鉄)、ビタミンB群、亜鉛、血糖値(空腹時・食後)などを確認します。通常の検査では「正常範囲内」と言われていても、分子栄養学の基準で見ると「不足」と判断されることは珍しくありません。

 

Q. サプリメントは子どもに飲ませても大丈夫ですか?

A. お子さんの年齢・体重・現在の栄養状態によって、適切な種類と量は異なります。必ず医師の診察と血液検査を受けたうえで、個別に判断することが大切です。自己判断での購入・大量摂取はお勧めしません。

 

Q. どれくらいの期間で改善が見られますか?

A. 個人差がありますが、食事の見直しから2〜3ヶ月で「朝の起きやすさが少し変わった」と感じるご家庭が多い印象です。体質改善は農場のようなもので、今日蒔いた種が実るのは数ヶ月先。焦らず、確実に土台を整えることが最も近道です。

 

「小児外科×栄養」の視点だからこそ、見えるもの——小森こどもクリニックのアプローチ

 

一般的な小児科で起立性調節障害を相談すると、多くの場合、自律神経の治療(昇圧薬や生活指導)が中心になります。それは正しい治療ですが、「なぜこの子の自律神経は乱れているのか」という根本原因にまで踏み込むことは、なかなかできません。

 

小森こどもクリニックでは、私が小児外科医として培った「腸の解剖学的知識」と、分子栄養学による「栄養状態の可視化」を組み合わせ、お子さんの体を「構造」と「機能」の両面から診ます。

 

具体的には:
✔️血液検査で、栄養の過不足を数値で把握する
✔️腸の状態を問診・診察から評価し、吸収の土台を整える
✔️栄養カウンセリングで、ご家庭ごとの生活に合った食事改善を一緒に考える

 

「薬を出して終わり」ではなく、お子さんの体の土台そのものを変えていく。それが当院のアプローチです。

 

最後に、親御さんへ

 

子どもの不調に向き合い続けている親御さんに、一人の父親として伝えたいことがあります。

 

あなたが責められることは、何もありません。

 

朝起きられないのは怠けではない。ジュースをやめられないのは意志が弱いからではない。根性でどうにかなる問題ではない。体の中で、物理的なことが起きているだけです。

 

そしてそれは、正しい知識とアプローチで変えていくことができます。

 

土台を整えることは、すぐには結果が出ません。でも確実に、体は変わっていきます。一緒に、少しずつ進んでいきましょう。

まずは一度、ご相談ください。

 

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この記事の執筆・監修者

小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
慶應義塾大学医学部卒。都立小児総合医療センター外科医長などを経て小森こどもクリニックを開院。小児科医・小児外科専門医として数多くの消化管手術に携わり、「こどものお腹のスペシャリスト」として腸の構造と機能に精通する。「吸収の場である腸」と「体の材料となる栄養」の両面から、標準治療と分子栄養学を組み合わせた統合的な医療を実践。年間5,000組超のお子さん・ご家族を診察。日本小児外科学会認定専門医・指導医、医学博士。