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思い通りにならない子育てこそ、感動を生む時間──精神科医・平光源先生の講演会で感じた“生きる厚み”

🌈思い通りにならない子育てこそ、感動を生む時間

先日、平光源先生の講演会に足を運ぶ機会に恵まれました。

 

だいじょうぶだあ 平光源先生

 

小児科医として、そして一人の親として、深く胸に響くお話ばかりでしたので、皆さまにも共有させてください。

 

人はそれぞれ違う“色のメガネ”で世界を見ている

 

講演の冒頭で語られた、人の“理解”に関するお話が特に印象的でした。

 

「自分の“イエス”が相手の“イエス”ではなく、自分の“No”が相手の“No”でもない。

私たちは皆、それぞれ赤いメガネ、黄色いメガネ、緑のメガネをかけて世界を見ている。」

 

同じものを見ているはずなのに、感じ方や受け取り方がまったく違う。

 

子育てや日々の生活の中で、そう感じたことはありませんか?

 

それは“間違い”ではなく、“その人にとっての真実”。

 

相手がどんな色のメガネで世界を見ているのか、その「色の違い」を理解しようとすることが、本当の理解と優しさにつながるのだと平先生は語られました。

 

その瞬間、私の中で「理解=同意ではない」という言葉が静かに腑に落ちました。

――まるで、心の景色が一段深く澄んだように感じました。

 

揺れる心を見守る、「許し」と「軸」の子育て

 

続いて語られたのは、「許し」についてです。

 

「誰しも葛藤があることが悪いのではない。そこから自分を知り、相手を知る。そして自分を許し、相手を許す。」

 

子育てにおいて、もし子どもがジェットコースターのように激しく揺れ動く存在であるならば、親である自分はメリーゴーランドのように、「こっちがいいよ!」と穏やかに回りながら見守る。

 

その優しい眼差しに、親として、また一人の人間として、深くうなずきました。私たちはつい、相手の揺れに引きずられてしまいがちですが、大切なのは「自分の軸」で穏やかに回り続けることなのかもしれません。

 

「厚み」という人生の深さ──悩みの中で育つ感動

 

そして、講演の中で最も心を揺さぶられたのが、「厚み」についてのお話です。

 

「もともと60の幸せをベースに生きている人が、80の幸せを感じたとしても、その振れ幅、つまり感動の“厚み”は20しかない。

 

しかし、人と比べて、自分にはマイナス80の不幸があると感じる人が、そこからプラス80の幸せを知ることができたなら。

 

その“160の厚み”こそが、人を導き、感動を生む。」

 

私たちはつい、平坦で悩みがない人生(+60)を望んでしまいがちです。

 

ですが、その「20」の幅で得られる感動と、「160」の振れ幅を経験した人が知る世界の深みは、まったく質が異なります。

 

深い谷を知り、−80を抱えながらも+80の喜びを見つけた人だからこそ、他者の痛みを本当の意味で理解し、深く寄り添う力が宿る。

 

それこそが“生きる厚み”であり、人としての本質的な豊かさなのだと、胸が熱くなりました。

 

日々の生活の中で、まさにこの「厚み」によって人が支え合い、成長していく姿を感じてきたからこそ、平先生の言葉は、自分自身の経験と深く重なりました。

 

 

 

子育てで感じる「できない」気持ちこそ、厚みを育てるチャンス

 

子育てをしていると、「うちの子はほかの子より遅いのでは」「自分の育て方が悪いのでは」と感じることがあるかもしれません。

 

けれども、それこそが人生の“厚み”を増やすチャンスです。最初からすべてがうまくできるよりも、

 

「できなかったことが少しずつできるようになっていく」――その過程にこそ、本当の感動があります。

 

(これは、私が医療や人生の中で一番大切にしている哲学でもあります。)

 

上を見ればすごい人がいて、下を見れば苦労の少ない人もいる。

 

でも、それを比べても仕方がありません。

 

大事なのは、「自分と子どものペースで厚みを育てていくこと」です。

 

その人の“今の点”に合わせて少しずつ厚みを作っていく。

 

その積み重ねが、その人だけの人生の意味を形づくります。

 

だからこそ、「うまくいかない時間」「できないギャップ」こそが、親子にとってかけがえのない宝物だと思うのです。

 

私自身、日々多くのご家族と関わりながら、この“厚みのある成長”こそが、心を強く、豊かにしていくことを実感しています。

 

比較ではなく、「自分のストーリー」を生きる

 

結局、人間は「体験」と「感動」こそがすべてなのだと思います。

 

思い通りにならない−80の経験すらも、人生をより充実させ、感動を生むための「振り幅」になる。

 

その厚みを持って生きることこそが、本当の意味での“生きた証”であり、周りの人を導く光になるのだと強く感じました。

 

私自身、子育てや日々の生活の中で、思い通りにならない現実に何度も向き合ってきました。けれど、起きてしまったことは「なんともならない」。

 

大切なのは、その「なんともならない」現実の中で、いかに自分が主体性を発揮して生きるかということ。

 

そして、明日、他の誰かがうまくいっているように見えるかもしれません。

 

でも、それは“そう見えるだけ”。
誰もがそれぞれの場所で、見えない悩みや葛藤を抱えています。

 

だから、比較することに意味はありません。

 

それぞれの人生という舞台で、自分だけのストーリーや、自分の花を見つけていくこと。

それが、本当の幸せにつながるのだと思います。🌸

 

 

「赤鼻のトナカイ」が教えてくれる、弱さの中の光

 

講演の中で紹介された「赤鼻のトナカイ」のお話も、忘れられません。

 

まっ赤なお鼻をみんなに笑われていたトナカイ。
けれど、暗いクリスマスの夜には、その光こそがサンタクロースを導く希望となります。

 

「自分の鼻なんて劣等感の塊だと思っていたけれど、実はそれが人を喜ばせる力になる。」

 

弱みだと思っていたものが、見方を変えれば誰かを救う光になる。

 

まさに“赤い鼻”こそが、その人に与えられた強みであり、その人にしか放てない美しい光なのだと思いました。🎄

 

 

「思い通りにいかない現実」こそが、人を育てる時間

 

ネガティブな出来事や困難な経験こそが、「体験の本当の価値」を教えてくれます。

 

深い谷を知っている人ほど、まったく違う世界の“見え方”を手に入れる。

 

それは、私自身の過去の経験からも、心から言えることです。

 

だからこそ、「思い通りにいかない」という現実を悲観せず、その中に宿る意味や成長を見つけていくことが、“幸せに生きる力”そのものなのかもしれません。

 

この温かい気づきを、今、子育てや人間関係、あるいはご自身の“まっ赤なお鼻”(=弱みだと思っている部分)を隠したいと感じている方に、どうしてもお伝えしたくて、この記事を書きました。

 

光源先生と写真撮影

 

🎁あなたの世界を変える一冊

 

今回の講演でお話しくださった平光源先生の温かい哲学は、

 

ご著書『だいじょぶだぁ』(幻冬舎)に優しく詰まっています。

 

だいじょうぶだあ書籍

 

この本を読むと、まるで平先生が隣で「だいじょぶだー」と言いながら、そっと背中を押してくれるような気持ちになります。

 

もし今、子育てや人間関係で「思い通りにいかない」と感じている方がいらしたら、ぜひ手に取ってみてください。

 

きっと、あなたの“メガネの色”が少し変わり、世界が温かく見えるようになると思います。

 

【執筆・監修】
小森こどもクリニック 院長 小森広嗣

慶應義塾大学医学部を卒業後、東京都立小児総合医療センターなどで小児外科医として豊富な臨床経験を積む。現在は地域のかかりつけ医として、日々多くのご家族と向き合っている。日本小児外科学会認定の小児外科専門医・指導医、医学博士。

「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分か-ち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療や情報発信を行っている。