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小児外科医が伝えたい。妊娠前の葉酸が必要な「本当の理由」

はじめに — 小児外科医の私が、この記事を書く理由

小森医師+葉酸の重要性

こんにちは。小森こどもクリニック院長の小森です。

私は小児外科専門医として、長年、子どもたちの手術に携わってきました。

生まれつきお尻の穴がない子ども(鎖肛)に肛門を作り、5年・10年かけて排泄トレーニングに伴走する。お腹の臓器が胸に入ってしまった赤ちゃん(横隔膜ヘルニア)の救命手術。泌尿器科の先生と一緒に行う陰部の形成術。二分脊椎の子どもたちが抱える重い排泄障害に対して、何年もかけてご家族と一緒に向き合う——。

これらはすべて、赤ちゃんがお腹の中にいるごく早い時期に、体の形がうまく作られなかったことで起こる病気です。

小児外科医として、その子たちのために全力を尽くすことは当然のことです。

でも、手術を終えるたびに、こう思うようになりました。

「もし『生まれる前』にできることがあったなら、この子はここに来なくてよかったかもしれない。」

この記事は、その思いから書いています。

 

赤ちゃんの体が作られる「勝負の1週間」

妊娠のごく初期、受精からわずか3〜4週間のあいだに、赤ちゃんの脳と脊髄のもとになる「神経管(しんけいかん)」という管が作られ、閉じます。

この期間に何が起きているかというと——

✔️細胞がものすごいスピードで増える

✔️その細胞が正しい場所に移動する

✔️管の形に折れ曲がる

✔️左右がぴったりくっつく

 

これがたった1週間ほどの間に、一気に進むのです。

ここで大事なのは、多くのお母さんが妊娠に気づく前に、この「勝負の1週間」は終わっているということです。
だからこそ、妊娠前からの準備が大切なのです。

 

葉酸が必要な「本当の理由」— 赤ちゃんを守る3つの仕事

「妊娠したら葉酸」とよく言われますが、実は葉酸は単なるビタミンではありません。
お腹の中の赤ちゃんが急成長する「勝負の1週間」に、葉酸たちは3つの重要な仕事を同時進行でこなしているのです。

 

仕事①:細胞の「材料」をどんどん作る(作る)

赤ちゃんの体は、ものすごいスピードで細胞分裂を繰り返して大きくなります。

葉酸は、細胞の核となるDNA(設計図のコピー)を作る材料になります。これが足りないと、細胞が増えるスピードが追いつかず、体の形成が間に合わなくなってしまいます。

 

仕事②:遺伝子の「スイッチ」を正しく入れる(整える)

体を作るには、ただ細胞が増えるだけではダメです。「ここは脳になる」「ここは心臓になる」という指令(遺伝子のスイッチ)が、正しいタイミングでON/OFFされる必要があります。

葉酸は、このスイッチを入れるための調整役も担っています。

 

仕事③:生まれたての細胞を「守る」(守る)

ここが意外と知られていない、とても大事な働きです。

急激に細胞分裂している時の赤ちゃんは、とてもデリケート。「酸化ストレス」という体のサビやダメージに弱い状態です。

葉酸たちの代謝がうまく回ると、「グルタチオン」という最強のガードマン(抗酸化物質)が作られ、赤ちゃんの細胞をダメージから守ってくれるのです。

つまり、葉酸不足になると——

1. 材料が足りない
2. スイッチが入らない
3. ダメージから守れない

この3つが同時に起きてしまうため、体の形成(特に神経管の閉鎖)がうまくいかなくなるリスクが高まるのです。

 

「葉酸」だけでは足りない? チームで働く栄養素たち

こうして見ると、葉酸の仕事がとても多いことがわかります。

だからこそ、葉酸は一人では働きません。「チーム」で動いています。

建築現場に例えるなら、こんなイメージです。

✔️葉酸: 設計図をコピーして配る人
✔️ビタミンB12: 現場監督(スイッチを入れるのを手伝う)
✔️ビタミンB6: 警備員(ダメージから守るガードマンを作る)
✔️タンパク質: そもそも、これらすべての材料となる土台

これらが全員揃って初めて、「作る・整える・守る」という完璧な仕事ができます。

だからこそ、「葉酸サプリだけ飲んでいれば安心」ではなく、「食事でチーム全体(タンパク質や他のビタミン)を底上げしつつ、葉酸をサプリでしっかり補う」のがベストなのです。

 

具体的に、何をすればいいのか

厚生労働省は、妊娠を計画している女性や、妊娠の可能性がある女性に、次のことを勧めています。

通常の食事に加えて、葉酸を1日400μg(マイクログラム)を摂取すること。
これは、食事だけでは十分な量を確保しにくいためです。

 

食事で意識したいこと

🌱 葉酸が多い食材

  • ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、いちご

🐟 ビタミンB12が多い食材

  • レバー、貝類(あさり・しじみ)、鮭、のり

🥚 コリン・B6・タンパク質

  • 卵(万能選手!)、大豆製品、鶏肉・魚(カツオ・マグロ)

サプリメントについて

  • 食事からの葉酸に加えて、サプリメントで400μgを目安に
  • できれば妊娠の1ヶ月以上前から始めるのが理想
  • 妊活を始める前から飲んでおくことが、赤ちゃんを守る最善のタイミング

 

※ サプリメントの選び方や飲み合わせについては、個人の体質や状況によっても異なります。専門家にご相談されることをお勧めします。

 

小児外科医として、伝えたいこと

私は長年、手術台で先天性疾患の子どもたちと向き合ってきました。

鎖肛の排泄トレーニング、横隔膜ヘルニアの救命手術、尿道下裂の形成手術——いずれも、お腹の中にいた時期に起きたことの結果でした。そして分子栄養学と出会い、「治す」だけでなく「防ぐ」ことができると確信しました。

生まれる前からの子育ては、お母さんの栄養状態から始まっています

「妊娠してから考えればいい」ではなく、「妊娠する前から、体の土台を整えておくこと」
それが、赤ちゃんにとっての最初のプレゼントになります。

葉酸のサプリを飲むこと。バランスの良い食事を心がけること。それは決して難しいことではありません。でも、その小さな積み重ねが、赤ちゃんの体を作る「勝負の1週間」を支えているのです。

お子さんの未来は、お母さんの「今日の一口」から始まっています。

 

当院でできること

小森こどもクリニックでは、栄養外来を行っています。血液検査による栄養状態の評価と、一人ひとりに合わせた栄養指導を提供しています。

「妊娠前の栄養が気になる」「家族全体の栄養を見直したい」という方も、お気軽にご相談ください。

 

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この記事の執筆・監修者

小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)

慶應義塾大学医学部卒。都立小児総合医療センター外科医長などを経て小森こどもクリニックを開院。
小児科医・小児外科専門医として数多くのおなか(消化管)の手術や治療に携わり、「こどものお腹のスペシャリスト」として消化管の構造と機能に精通する。

自身や家族の不調が栄養療法で改善した手応えから、「西洋医学だけでは届かない不調」の解決策として「栄養」の重要性を確信。 「吸収の場である腸」と「体の材料となる栄養」の両面から、標準治療と分子栄養学を柔軟に組み合わせ、その子の体の土台を根本から整える「統合的な医療」を実践している。 日本小児外科学会認定専門医・指導医、医学博士。