
赤ちゃんのおむつに赤っぽいしみが見つかると、
驚いたり、不安になったりする保護者の方が少なくありません。
「病気?」「血尿?」と心配になるかもしれませんが、
それは”尿酸塩(にょうさんえん)”という、赤ちゃんによく見られる一時的な現象である可能性があります。
この記事では、小児科医の立場から
✔️なぜ赤ちゃんに尿酸塩が出やすいのか
✔️どのような時に注意が必要か
✔️ご家庭での観察と対処のポイント
をわかりやすくお伝えします。
尿酸塩とは、体の中で「プリン体(細胞の中の核酸)」が代謝される過程で生じる尿酸という物質が、尿の中で結晶化したものです。
この結晶は、サーモンピンクやれんが色の粉状に見え、おむつに赤いしみのように付着します。
医学的には「brick dust urine(れんが色尿)」と呼ばれ、新生児期の赤ちゃんではよく見られる現象です。
生後間もない赤ちゃんでは、体の中で活発に細胞の入れ替えが行われています。
その際、細胞内のプリン体が分解され、尿酸が多くつくられます。
これが一時的に尿酸値の上昇を引き起こし、尿酸塩が見られる原因となります。
赤ちゃんは体内の水分量が多く、腎臓の働きもまだ未熟です。
授乳間隔が空いたり、発熱やたくさん汗をかいたりすると、すぐに脱水ぎみになり、尿が濃くなる傾向があります。
このような状態では、尿の中の尿酸が結晶化しやすくなります。
赤ちゃんの尿は、代謝や食事(母乳・ミルク)の影響を受けて酸性になりやすい性質があります。
尿酸は酸性の環境で溶けにくくなるため、結晶として析出しやすくなるのです。
ぱっと見ただけでは見分けがつきにくい場合もあるため、心配なときは尿検査で確認すると安心です。
赤ちゃんの元気があり、以下のような様子であれば、家庭での様子見で問題ないことが多いです。
✔️よく飲んでいて、機嫌もよい
✔️1日に5〜6回以上のおしっこが出ている
✔️赤いしみが2日以内に薄くなる、または消える
✔️発熱・下痢・嘔吐などの症状がない
✔️赤いしみが3日以上続く
✔️おしっこが少なく、おむつがほとんど濡れていない
✔️元気がなく、ぐったりしている
✔️発熱、嘔吐、下痢などの症状を伴っている
✔️体重が増えない、または減ってきている
水分が不足しないよう、少し多めに飲ませましょう。
濡れた回数や、赤いしみの状態をメモや写真で残しておくと、受診時に役立ちます。
1週間ごとに同じ条件で測って増加の様子を見ましょう。
赤ちゃんが汗をかきすぎないよう、快適な環境を保ちましょう。
尿酸塩による赤いしみは、赤ちゃんに比較的よくある生理的な現象です。
ほとんどの場合は、授乳や水分補給を意識することで数日以内に自然とおさまります。
ただし、「いつもと違う」「なんだか心配」と感じる時は、早めに小児科でご相談ください。
慶應義塾大学医学部卒業
小児外科学会専門医、小児外科指導医、医学博士
小森こどもクリニックでは、成長の感動や喜びをお子さん ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育ができる社会を創ることをビジョンに活動しています。