2026年4月19日

📖 この記事はこんな人向け(朝起きられないシリーズ:入口編)
「朝起きられない」「疲れやすい」を 初めて栄養から考えてみたい方 に向けた、シリーズの入口の記事です。
「フェリチン」というキーワードを知らない方や、まだ血液検査を受けていない方は、まずこの記事から読んでみてください。
もう一段深く知りたい方は、シリーズの他の記事もご覧ください。
– 中級: 血糖値・鉄・エネルギー(ATP)の三位一体——朝起きられない子の体の中で何が起きているか
– 専門: 起立性調節障害(OD)と血糖値の意外な関係 — ODと診断済みの方へ
– 対象限定: 中学生になった途端、崩れた——思春期女子の鉄欠乏 — 中学生以上・女子の親御さんへ
「何度起こしても起きない」
「午前中、ずっとボーッとしている」
「学校に行きたがらない」
新学期が始まり、疲れが出やすいこの時期。こんな悩みを持つ親御さんが増えています。
「夜更かししてるからでしょ!」
「気合いが足りない!」
つい、そう叱りたくなってしまう気持ち、よくわかります。
でも、もしそれが「本人の意志」の問題ではなく、「体の材料」の問題だとしたらどうでしょう?
日々、診察室で多くのお子さんを診ていて、強く感じていることがあります。
「朝起きられない」「疲れやすい」というのは、決して本人の気合いや根性の問題ではありません。実は「栄養(体の材料)」の問題が隠れているケースが非常に多いのです。
特に見落とされがちなのが、「鉄(フェリチン)」の不足です。
「うちの子は貧血なんて言われたことないけど…」と驚かれるお母さんも多いのですが、ぜひ知っていただきたい「隠れ貧血」の真実をお話しします。
「朝起きられない」「頭が痛い」——そんなお子さんの症状の奥に何が隠れているのか。当院の小森院長が、動画でもわかりやすく解説しています。まずは「もしかして、うちの子のことかも?」という視点でご覧ください。
なぜ「異常なし」でも鉄不足なのか?ヘモグロビンとフェリチンの違い
「学校の健診で貧血とは言われませんでした」
「小児科で血液検査をしたけど、異常なしでした」
そうおっしゃる親御さんは多いです。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
一般的な健診や小児科の検査で見るのは「ヘモグロビン」という数値です。これは、血液中を流れている鉄分のこと。しかし、体にはもう一つ、重要な鉄の指標があります。それが「フェリチン(貯蔵鉄)」です。
わかりやすく「お金」に例えましょう。
ヘモグロビン = 財布の中のお金(今すぐ使う鉄)
フェリチン = 銀行の預金(貯蓄されている鉄)
体は生命維持のために、財布の中(ヘモグロビン)を常に一定に保とうとします。たとえ銀行預金(フェリチン)がゼロになっても、財布の中身だけは減らさないように無理をするのです。
つまり、「ヘモグロビンが正常」でも「フェリチンが空っぽ」という状態は、頻繁に起こります。これを「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」と呼びます。
預金残高がゼロの状態で、毎日元気に活動するのは大人でも辛いですよね。自転車操業でギリギリの状態。それが「朝起きられない子」の体の中で起きていることです。
鉄不足が引き起こす「負の連鎖」のメカニズム
では、なぜ鉄が不足すると朝起きられなくなるのでしょうか。それは、体の中で「エネルギー(ATP)不足」の連鎖が起きるからです。
私たちの細胞の中には「ミトコンドリア」というエネルギー工場があります。この工場を動かすために、鉄は絶対に欠かせない部品です。鉄が不足すると、工場がストップし、体と脳を動かすエネルギー(ATP)が作れなくなります。
エネルギーが足りないと、脳は「手っ取り早くエネルギーになる甘いものを補充して!」とサインを出します。その結果、お菓子やジュースを強く欲しがるようになります。
甘いものを食べると血糖値が急上昇し、その後インスリンの働きで急降下します。この「血糖値の乱高下」が起きると、体は危機を感じてアドレナリンなどの興奮ホルモンを出します。これが夜間に起きると、睡眠が浅くなり、「朝起きられない」「寝ても疲れがとれない」という状態につながっていきます。
鉄不足は単なる「血が薄い」状態ではありません。エネルギー不足から血糖値の乱れ、そして睡眠障害へとつながる「ドミノ倒しの最初の一枚」なのです。
栄養を入れる前に。まずは「腸(吸収の場)」を整える
「じゃあ、鉄分をたくさん摂ればいいのね!」と思われるかもしれません。
しかし、ここで一つ、お伝えしたい重要なポイントがあります。
それは、「どんなに良い栄養を入れても、腸が荒れていては吸収されない」ということです。
腸は、栄養を体内に取り込む「根っこ」です。甘いものの摂りすぎや、小麦(グルテン)・乳製品(カゼイン)の過剰摂取で腸の粘膜が荒れていると、せっかく摂った鉄分も素通りしてしまいます。
農場に例えるなら、土がカチカチに荒れている状態です。そこにいくら高級な肥料(サプリメントや鉄分)を撒いても、作物は育ちません。まずは土を耕し、ふかふかにする(腸内環境を整える)ことが、栄養療法の第一歩なのです。
お子さんに当てはまりませんか?鉄不足チェックリスト
まずは、お子さんの様子を観察してみてください。以下の項目に複数当てはまる場合、フェリチン不足(隠れ貧血)の可能性が高いです。
・ 朝、何度起こしても起きられない
・ 午前中はずっと機嫌が悪く、ボーッとしている
・ 氷をガリガリ食べるのが好き(氷食症)
・ 爪が割れやすい、または反り返っている(スプーン爪)
・ 階段を上るとすぐに息切れする
・ 集中力が続かない、授業中ぼんやりしている
・ アザができやすい
・ 神経質で、些細なことでイライラしやすい
・ 夕方になると「疲れた」と横になる
・ 甘いものやジュースを強く欲しがる
「うちの子、だらしない性格だと思っていたけど、これのせいだったの?」
そう気づいて、ホッとされるお母さんはたくさんいらっしゃいます。お子さんの不調は、決して親の育て方や本人の根性のせいではありません。ただ、体からの「材料が足りないよ」というサインだったのです。
今日からできる!鉄分を満たす3つのアクション
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。今日から始められるステップをご紹介します。
1. 食事:吸収率の高い「ヘム鉄」を意識する
鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜に含まれる「非ヘム鉄」があります。効率よく鉄を貯金するには、吸収率の高い「ヘム鉄(動物性タンパク質)」を意識して摂ることが重要です。
・ 赤身の肉(牛肉、豚肉)
・ レバー
・ カツオ、マグロ
・ 卵
朝ごはんに卵を1個足すだけでも、立派な鉄分補給になります。また、鉄製の調理器具(鉄玉子や鉄フライパン)を使ってお味噌汁や炒め物を作るのも、手軽で有効な手段です。
2. 生活:睡眠と日光浴で土台をサポート
鉄分だけでなく、生活習慣で体のリズムを整えることも大切です。
朝起きたら、まずはカーテンを開けて朝日を浴びましょう。日光を浴びることで、夜の睡眠ホルモン(メラトニン)の材料が作られ、睡眠の質が向上します。また、日光浴は「免疫の司令塔」と呼ばれるビタミンDの生成にも不可欠です。
3. サプリメント:食事で足りない分を補う
食事だけでフェリチン値を劇的に上げるのは、実はとても時間がかかります。症状が強く出ている場合や、どうしてもお肉を食べてくれない場合は、医療用のヘム鉄サプリメントを活用するのも一つの手です。
ただし、鉄のサプリメントは胃腸に負担をかけることがあります。お子様の体質に合ったものを選ぶためにも、自己判断せず、必ず医師の診察・指導の下で取り入れるようにしてください。
よくある質問(Q&A)
Q. 鉄のサプリメントは子どもでも飲めますか?
A. はい、お子様でも飲める形状(カプセルを外して粉薬のように飲めるものや、チュアブルタイプなど)があります。ただし、適切な摂取量は体重や現在のフェリチン値によって異なりますので、必ず医療機関でご相談ください。
Q. 鉄分と一緒に摂ると良い栄養素はありますか?
A. タンパク質とビタミンCです。タンパク質は鉄を運ぶトラックの役割をし、ビタミンCは鉄の吸収を助けてくれます。お肉(タンパク質+鉄)にレモン汁(ビタミンC)をかけるといった組み合わせは理にかなっています。
Q. フェリチン値はどこで測れますか?
A. 一般的な小児科の血液検査では、ヘモグロビンしか測らないことが多いです。「フェリチン(貯蔵鉄)も測ってほしい」と事前に確認するか、栄養療法(分子栄養学)を取り入れているクリニックを受診することをお勧めします。
合わせて読みたい関連記事
「朝起きられない」「疲れやすい」という症状について、さらに深く知りたい方は以下の記事もぜひご覧ください。小森こどもクリニックの「朝起きられない」シリーズとして、血糖値や思春期特有の鉄欠乏について詳しく解説しています。
– 【小児科医が解説】起立性調節障害(OD)と血糖値の意外な関係——腸と栄養の専門医の視点
– 中学生になった途端、崩れた。——「部活・生理・成長」が重なる思春期女子の鉄欠乏という見えない危機
– 朝起きられない・慢性疲労が「治らない」本当の理由——血糖値・鉄・エネルギーの三位一体を整えるとはどういうことか
まとめ:原因がわかれば、少しずつ変わっていける
「朝起きられない」「すぐ疲れる」という姿を見ると、親としてはつい焦ってしまいますよね。でも、それは「気合い」が足りないのではなく、体がサインを出している証拠です。
鉄という「体の材料」が満たされ、腸という「土台」が整うだけで、見違えるように朝スッキリ起きられるようになるお子さんを、私はたくさん診てきました。それは魔法ではなく、体が本来の働きを取り戻しただけなのです。
まずは「もしかして栄養不足かも?」という視点を持つことから始めてみてください。焦らず、コツコツと土台を整えていけば、必ず良い方向に向かいます。今の時期から始める栄養のケアは、お子さんの未来の「体への貯金・投資」になります。お子さんの笑顔と元気な毎日を取り戻すために、私たちも応援部隊として伴走します。
栄養外来(分子栄養学外来)のご案内
「もしかして、うちの子も…」と感じられた方は、当院の 子どもの栄養外来(分子栄養学外来) のご案内をご覧ください。フェリチンを含めた詳細な血液検査と、お子さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの栄養アプローチを行っています。
まずは情報から、という方へ
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ご予約・ご来院について
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この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
慶應義塾大学医学部卒。都立小児総合医療センター外科医長などを経て小森こどもクリニックを開院。
小児科医・小児外科専門医として数多くのおなか(消化管)の手術や治療に携わり、「こどものお腹のスペシャリスト」として消化管の構造と機能に精通する。
自身や家族の不調が栄養療法で改善した手応えから、「西洋医学だけでは届かない不調」の解決策として「栄養」の重要性を確信。「吸収の場である腸」と「体の材料となる栄養」の両面から、標準治療と分子栄養学を柔軟に組み合わせ、その子の体の土台を根本から整える「統合的な医療」を実践している。日本小児外科学会認定専門医・指導医、医学博士。
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小森広嗣|こどもの栄養とお腹の専門医🌱 @KomoriKodomoCL