2026年6月13日

「皮膚科で薬をもらって塗っているのに、ニキビが全然治らないんです」
「治ったと思っても、またすぐに新しい吹き出物ができてしまって…」
思春期のお子さんを持つ親御さんから、当院の栄養外来によく寄せられるご相談です。
年頃のお子さんにとって、顔のニキビや肌荒れは大きなコンプレックスになり、自信を失ってしまう原因にもなります。
「洗顔が足りないのでは?」「お菓子の食べ過ぎじゃない?」と心配されるかもしれませんが、実は、根本的な原因は「肌を作るための材料不足」と「体内の炎症」にあるケースが非常に多いのです。
今日は、外からのスキンケアだけでは解決しにくい肌トラブルに対して、体の内側からアプローチするための栄養と食事のメカニズムについて、小児外科専門医の視点からお話しします。
肌は「細胞の生まれ変わり」の最前線
私たちの肌(皮膚)は、ただそこにあるカバーではありません。毎日、古い細胞が剥がれ落ち、下から新しい細胞が作られるという「猛烈な新陳代謝」を繰り返している、非常に活動的な臓器です。
この新しい肌細胞を作るための「一番の主原料」となるのがタンパク質です。
そして、その細胞分裂(コピー)をスムーズに進め、肌の修復をサポートする「作業員」の役割を果たすのが亜鉛というミネラルです。
成長期のお子さんは、骨や筋肉、内臓を大きくするために、ただでさえ大量のタンパク質と亜鉛を必要とします。そこに「肌の修復」まで手が回らないほどの「材料不足(隠れ栄養失調)」が起きていると、健康な肌が作れず、バリア機能が低下し、ニキビや肌荒れが長引いてしまうのです。
皮膚を「正しく育てる司令塔」——ビタミンAと細胞分化
さらに、ニキビや肌荒れを根本から治すために欠かせないのが「ビタミンA」です。
私たちの肌は、奥深くで生まれた未熟な細胞が、少しずつ成熟しながら表面へと押し上げられていきます。この過程を「細胞分化(細胞が正しく皮膚や粘膜になること)」と呼びますが、ビタミンAは細胞に「正しい肌になりなさい」と指示を出す司令塔の役割を果たしています。
ビタミンAが不足すると、この指示がうまく伝わらず、細胞が間違った育ち方(過剰な角化)をしてしまいます。その結果、肌が硬くなり、毛穴が詰まりやすくなってニキビが慢性化するのです。
ただし、ビタミンAをサプリメントで補う際は注意が必要です。過剰症のリスクを避けるため、体内で必要な分だけビタミンAに変換される「非活性型(プロビタミンA、ベータカロテンなど)」の安全な形を選ぶことが、子どもの栄養療法では極めて重要になります。
治らないニキビの二大原因:「糖質過多」と「酸化した油」
肌の材料(タンパク質・亜鉛・ビタミンA)を揃えるのと同じくらい大切なのが、「ニキビを悪化させる原因を断つ」ことです。溝口徹先生をはじめとする栄養療法の専門家たちが口を揃えて言うように、「糖質制限」を抜きにしてニキビの根本改善はあり得ません。
「朝は食パンとジュースだけ」
「お昼は給食で、夕飯はうどんやパスタが多い」
このような糖質に偏った生活は、急激な血糖値の乱高下を招きます。血糖値が急上昇すると、それを下げるためにインスリンが大量に分泌され、結果として皮脂の分泌が過剰になってしまうのです。
さらに気をつけたいのが「酸化した油(悪い油)」です。
スナック菓子やポテトチップス、時間が経った揚げ物などに含まれる酸化した油は、体の中に入ると細胞膜を傷つけ、「炎症」の火種になります。ただでさえ毛穴が詰まって炎症を起こしやすい状態のところに、酸化した油という「火に油を注ぐ」ような物質が入ってくることで、赤く腫れ上がる治りにくいニキビが完成してしまいます。
「塗る」前に「食べる」——内側からのアプローチ
皮膚科でもらう抗生物質の塗り薬やピーリング剤は、今ある炎症を抑える「対症療法」としては有効です。しかし、それだけでは「ニキビができやすい土台(肌質)」そのものを変えることはできません。
もし、お子さんの肌トラブルが長引いているなら、以下の「内側からのアプローチ」を意識してみてください。
・ 糖質と悪い油を減らす(最優先の土台作り)
まずは甘いお菓子やジュース、ポテトチップスなどのスナック菓子を控えましょう。過剰な皮脂と炎症の火種を断つことが、ニキビ治療の絶対的な土台になります。
・ 「毎食」タンパク質を確保する
朝・昼・夕の3食すべてで、肉・魚・卵・大豆製品のいずれかが入っているか確認してください。特に朝食の「卵1個」が、肌の主原料として重要です。
・ 亜鉛やビタミンAを含む食品を取り入れる
亜鉛はお肉(赤身)や卵、納豆などに、ビタミンA(ベータカロテン)は緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃなど)に多く含まれます。毎日の食卓で意識して取り入れましょう。
爪や髪のSOSサインを見逃さないで
タンパク質や亜鉛が不足しているサインは、肌だけではありません。
「爪に白い斑点がある」「爪が割れやすい」「髪がパサパサしている」といった症状があれば、それは体からの「材料が足りないよ!」というSOSサインです。
当院の栄養外来では、血液検査によって「フェリチン(貯蔵鉄)」や「亜鉛」の数値を正確に把握し、その子に本当に必要な栄養素を、医療用サプリメントも活用しながら補う「根本治療」を行っています。
塗り薬を何ヶ月続けても良くならない。ニキビのせいで子どもが自信をなくしている。
そんな時は、「外からのケア」だけでなく、ぜひ「内側からの栄養」にも目を向けてみてください。炎症の火種を取り除き、細胞の材料がしっかり揃えば、お子さんの肌は必ず、本来の健やかさを取り戻す力を持っています。
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小森広嗣|こどもの栄養とお腹の専門医🌱 @KomoriKodomoCL
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この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
慶應義塾大学医学部卒。都立小児総合医療センター外科医長などを経て小森こどもクリニックを開院。小児科医・小児外科専門医として数多くのおなか(消化管)の手術や治療に携わり、「こどものお腹のスペシャリスト」として消化管の構造と機能に精通する。
自身や家族の不調が栄養療法で改善した手応えから、「西洋医学だけでは届かない不調」の解決策として「栄養」の重要性を確信。「吸収の場である腸」と「体の材料となる栄養」の両面から、標準治療と分子栄養学を柔軟に組み合わせ、その子の体の土台を根本から整える「統合的な医療」を実践している。日本小児外科学会認定専門医・指導医、医学博士。