2025年2月24日

今回は、便秘改善に効果的な「行動認知療法(CBT)」についてお話しします。
便秘は、お腹が張る・スッキリしないといった不快感があっても、それが”普通”の状態だと思い込み、気づかぬうちに進行していることがあります。
特に小学生以上のお子さんの場合、便秘に自覚がなく、生活の質(QOL)が低下していても気づかないことが少なくありません。ある日、腹痛や食欲低下をきっかけに、実は便秘だったと判明するケースもあります。
しかし、こうしたお子さんは、自覚がないために「困っている」という意識が薄く、治療のモチベーションを持ちにくいことがあります。
そこで、当院では排便の快適さを評価する基準として「すんなり、しっかり、すっきり」の3Sを重視し、スムーズな排便リズムの確立を目指しています。この目標を達成するための鍵となるのが、「行動認知療法」です。
行動認知療法とは?——考え方と行動のクセを見直す方法
行動認知療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)は、考え方(認知)と行動のクセを見直し、良い習慣を身につける方法です。
便秘のお子さんに多い「考え方と行動のクセ」には、例えばこんなものがあります。
クセ①「トイレに行くのが面倒」→ 排便を後回しにしてしまう
クセ②「出なかったらどうしよう」→ 不安になり、力んでしまう
クセ③「早く終わらせたい」→ しっかり出る前にトイレを切り上げてしまう
行動認知療法では、こうしたクセを前向きな考え方と適切な行動に変えていきます。
✅ 「トイレはリラックスできる場所」と考える
✅ 「出なくてもOK!座ること自体が大事」と意識する
✅ 「スッキリ出せた!」という成功体験を味わう
排便に対する考え方と行動を少しずつ変えることで、無理なく自然な排便リズムを作ることを目指します。
便秘に気づかない子どもへのアプローチ——3つの実践法
小学生以上の子どもは、便秘があっても「これが普通」と思い込んでしまい、便秘を自覚していないことがよくあります。そのため、まずは「自分が便秘である」と気づくきっかけを作ることが重要です。
実践① カレンダーで排便を記録する
毎日の排便状況をカレンダーに記録します。シンプルな3段階評価がおすすめです。
◎ すっきり出た(量も十分、お腹もスッキリ)
○ 出たけれど少なかった、スッキリしない
× 出なかった
1〜2週間記録を続けると、自分の排便リズムが見えてきます。「◎が少ないな」「×が3日続いている」など、客観的に自分の状態を把握できるようになることが、改善への第一歩です。
実践② 家族との会話で排便への意識を高める
便秘はデリケートな問題ですが、オープンに話せる環境を作ることで、排便への意識が自然に高まります。
おすすめの声かけ
✅ 「今日は出た?」と軽く聞く(責めるトーンにならないように)
✅ 「しっかり出たね!スッキリした?」とポジティブに返す
✅ 「今日のうんち、カレンダーに書いておこうね」と記録を促す
避けたい声かけ
❌ 「また出てないの?」(プレッシャーになり、トイレが嫌になる原因に)
❌ 「ちゃんとトイレに行きなさい!」(命令口調はトイレへの抵抗感を強める)
❌ 「○○ちゃんは毎日出てるよ」(他の子との比較はストレスになる)
大切なのは、「排便は恥ずかしいことではなく、体の大事なサイン」という意識をお子さんと共有することです。
実践③ 便の状態をチェックする
「今日は多かった」「少なかった」と便の量や形を把握し、お腹の状態と照らし合わせてみましょう。
「なんとなくスッキリしない…」と感じたときに、実際にどれくらい出たのかを意識することで、自分の排便リズムと体の感覚のつながりを理解しやすくなります。
便の形状については、「ブリストルスケール」という7段階の評価基準があります。理想的な便は「バナナのような形で、するっと出る」タイプ。これを親子で共有しておくと、便の状態チェックがしやすくなります。
便秘専門外来での継続的なケア
便秘専門の外来では、行動認知療法を取り入れながら、一人ひとりに合った排便習慣の確立をサポートしています。
✅ 記録を振り返り、排便リズムを分析
「すんなり・しっかり・すっきり」の3Sを基準に、排便の質を評価します。
✅ エコー検査で便の溜まり具合を確認
「本当に出せているか?」をお腹の超音波で視覚的に評価します。お子さん自身が「まだ残っていたんだ」と実感できることが、排便への意識を変えるきっかけになります。
✅ 定期的なフィードバックで改善をサポート
排便習慣を定着させるため、うまくいっているポイントと改善点を一緒に確認します。
まとめ——便秘改善のカギは「意識」と「習慣」
便秘を改善するためには、排便への意識を変え、習慣化することが重要です。
行動認知療法を取り入れることで、無理なくスムーズな排便リズムを確立できます。当院では「すんなり、しっかり、すっきり」の3Sを基準に、正しい排便習慣をサポートしています。
まずは今日からできることを始めてみませんか?
✅ 排便カレンダーをつけてみる
✅ 朝食後にトイレに座る習慣をつくる
✅ 「出なくてもOK」のリラックスした気持ちで座る
「すんなり、しっかり、すっきり」の3Sを目指し、快適な毎日を送りましょう!
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「心」と「からだ」の両面からサポートする
行動認知療法は、便秘に対する「心」のアプローチです。一方で、「からだ」の面からもサポートすることで、改善がより確実になります。
実は、鉄や亜鉛などの栄養素の不足は、集中力の低下やイライラ、疲れやすさとして現れることがあり、これらは排便行動への意欲にも影響します。栄養の土台が整っていると、行動療法の効果もより発揮されやすくなります。
当院の分子栄養学外来では、便秘外来と連携し、心身の両面からお子さんをサポートしています。
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「うちの子はどうだろう」と確かめてみたい方へ
排便を怖がる、トイレに行きたがらないときは、お一人で抱え込まずにご相談ください。当院の便秘外来では、小児外科専門医が、いまの排便の様子とこれまでの経過をうかがい、気持ちとからだの両面からの進め方を一緒に考えます。遠方の方の受診の窓口も、下のページにまとめています。
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すでに通院中の方へ:排便の練習は、良い日と戻る日をくり返しながら進みます。気になることは、次の診察でそのままお聞かせください。
院長の本|『うんちが出ない!』(2026年12月9日発売)

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診察室の外の発信
診察室では話しきれないこと、医師が何を考えながら診ているのかを、Xでも書いています。
小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL
この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。
「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。
▶ 著書:『うんちが出ない!』(英智舎・2026年12月9日発売)
▶ 取材・講演のお問い合わせ:press@komori-kodomo.com