2026年5月26日

「病院で血液検査やMRIまでしたのに『異常なし』と言われました。でも、子どもは毎朝起きられなくて、お腹も痛がって、学校に行けないんです…」
小森こどもクリニックの栄養外来には、こうした切実なお悩みを持ったお母さんたちが毎日のようにいらっしゃいます。起立性調節障害(OD)や過敏性腸症候群(IBS)といった「病名」がついてお薬を飲んでいるのに、一向に良くならない。
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか?
そして、なぜ「保険のお薬」ではなく「サプリメント」を使うことが、結局は近道になるのでしょうか?
今日は、「病院のお薬」と「栄養療法(サプリメント)」の決定的な違いについて、3つの比喩で分かりやすくお話しします。
💡 先にこちらをお読みいただくとより深く理解できます
小児科の血液検査で「異常なし」と言われたら? — 子どもの不調を栄養の視点で読み直す
(同じ血液データを栄養の視点でどう読み直すかを、フェリチン・AST/ALTなど具体例で解説しています)

1. 病院のお薬は「火消し」、栄養は「家づくり」
今までお薬を飲んでもスッキリしなかったのには、はっきりとした理由があります。
病院の保険のお薬は『火事の火を消す(症状を抑える)』のは大得意です。痛みを止めたり、胃酸を抑えたり、血圧を上げたり。これは、命に関わるような大きなトラブルを防ぐためには欠かせない大切な医療です。
しかし、お薬は、燃えてしまった『家を建て直す(細胞を作る)』材料にはなりません。
検査をして「異常なし(火は出ていない、形は壊れていない)」と言われても、家が建っていない(機能が落ちている)から、朝起きられないし、お腹も痛いのです。これが「病気ではないけれど、健康ではない」という状態の正体です。
2. 気合いの問題ではなく、細胞の「ガス欠」です
「じゃあ、どうやって家を建て直すの?」
その答えが「栄養」です。
朝起きられないのも、頭が痛いのも、気合いや性格の問題ではありません。不登校や行き渋りも、心が弱いからではありません。
ただ単に、細胞が『ガス欠(エネルギー不足)』を起こしているだけなのです。
私たちの体は、食べたものを材料にしてエネルギー(ATP)を作っています。ところが、現代の子どもたちは糖質(炭水化物や甘いもの)に偏りやすく、エネルギーの着火剤となる「鉄」や「ビタミンB群」「タンパク質」が決定的に不足している『隠れ栄養障害』に陥っていることが非常に多いのです。
鉄やビタミンというガソリンを正しく入れてあげれば、細胞のエンジンは必ずまた力強く動き出します。
3. なぜ「食事」や「保険の薬」ではなく「サプリ」なの?
「それなら、お肉やほうれん草をいっぱい食べればいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、調子が悪くなっている子どもたちの体は、栄養の『マイナス50の借金』がある状態です。
毎日の食事をいくら頑張っても、1日に『プラス1』ずつしか返せません。それでは何年もかかってしまいますし、そもそもお腹の調子が悪い子はお肉をたくさん消化・吸収することができません。
また、「保険の鉄剤やビタミン剤を出してもらえばいいのでは?」という疑問もあるでしょう。
日本の保険制度は「倒れてしまうようなひどい貧血」など、マイナスをとりあえずゼロに戻すためには使えます。しかし、「毎日元気に学校に行けて、笑顔で過ごせるレベル(至適量)」まで体を100%の状態に引き上げるための十分な量の栄養を出すことは、ルール上できない仕組みになっています。さらに、保険の鉄剤は胃がムカムカしやすく、続けられない子も多いのです。
だからこそ、数ヶ月から半年間だけ、一気に借金をゼロに戻すために、安全で吸収の良い形に濃縮された『治療レベルの栄養(サプリメント)』の力を借りるのが、結局一番の近道になるのです。
4. もうひとつ大切なこと — 「入れる」前に「通り道」を整える
ここまで「家を建て直すには材料(栄養)が必要」というお話をしてきましたが、もう一つだけ、当院ならではの視点をお伝えさせてください。
私はもともと、小児外科医として腸の構造そのものを診てきました。手術台の上で「腸」をたくさん見てきた経験から、ひとつの確信があります。それは——
どんなに良い材料(栄養・サプリメント)を入れても、「通り道(腸)」が荒れていれば、体に届かない。
便秘が長く続いている子、お腹が張りやすい子、下痢と便秘を繰り返す子。こういうお子さんは、腸の粘膜が荒れて吸収効率そのものが低下していることが少なくありません。
ここを整えずに栄養だけを足しても、せっかくのサプリメントが半分も吸収されないことがあるのです。
だから当院では、「材料を足す」のと同時に、「腸という吸収の場を整える」ことを必ずセットで考えます。これが、一般的なサプリメント外来では見落とされがちな、小児外科専門医ならではのアプローチです。
合わせて読みたい関連記事
– 小児科の血液検査で「異常なし」と言われたら? — 子どもの不調を栄養の視点で読み直す ← この記事の前編にあたります
– 思春期の頭痛・だるさと隠れ栄養障害
– 朝起きられない子と「フェリチン(貯蔵鉄)」の正体
– なぜ食事だけでは足りないのか(隠れ栄養失調)
最後に:「異常なし」で諦めないでください
「病気じゃない」と言われても、諦める必要はありません。
当院の栄養外来では、まずは保険の血液検査からスタートして、今の体の「ガス欠」の状態を一緒に確認します。
「だから起きられなかったんだね」「だからお腹が痛かったんだね」と原因がわかるだけで、親御さんもお子さんも、スッと肩の荷が下りるはずです。
病院のお薬は、火事の時(急性期)にはとても頼りになります。でも、家を建て直して毎日を元気に過ごす(慢性期)ためには、別の入口からのアプローチが必要です。
栄養の視点から、お子さんの体を見直してみることも、ひとつの道です。
この症状をもう少し深く知りたい方へ
「うちの子も、もしかして」と思われた方は、
栄養外来のご案内ページで、当院の取り組みをご覧ください。
【▶ 栄養外来のご案内を見る】
▶ 子どもの便秘と栄養|鉄・ビタミンD不足と「入れる順番」(便秘専門サイト)
お腹と栄養のつながりを、便秘専門サイトで解説しています。
栄養のヒントを、LINEで受け取る
子どもの栄養について、診察室では話しきれないことや、「今日ひとつだけできること」を、小森こどもクリニック 栄養の公式LINEで少しずつお届けしています。ご登録いただくと「栄養療法スタートアップガイド」もお読みいただけます。何から始めればいいか迷う方は、ここから受け取ってください。
「うちの子はどうだろう」と確かめてみたい方へ
「異常なし」と言われた不調の背景に栄養があるかどうかは、血液検査で確かめられます。当院の子どもの栄養外来(分子栄養学外来)では、症状・食べ方・便の様子までうかがったうえで、お子さん一人ひとりに合わせて組み立てていきます。
ご予約は、当院ホームページの予約システム(デジスマ診療アプリ)から承っています。
すでに通院中の方へ:体の材料の変化は、数ヶ月かけて少しずつ表れます。3ヶ月目の再検査で、ここまでの変化と次の一歩を一緒に確かめましょう。
診察室の外の発信
診察室では話しきれないこと、医師が何を考えながら診ているのかを、Xでも書いています。
小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL
この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。
「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。
▶ 著書:『うんちが出ない!』(英智舎・2026年12月9日発売)
▶ 取材・講演のお問い合わせ:press@komori-kodomo.com