2026年5月15日

「ビタミンDのサプリで子どもが入院したというニュースを見たのですが、うちの子は大丈夫でしょうか?」
最近、このようなご質問を複数の保護者の方からいただいています。
2026年3月、日本小児科学会がビタミンDサプリメントによる健康被害の事例報告(傷害速報)を公表しました。7歳のお子さんがサプリメントの摂取により高カルシウム血症を発症し、25日間の入院となった事例です。
お子さんにサプリメントを飲ませている保護者の方が不安を感じるのは、とても自然なことです。
今日は、この報告を正しく理解した上で、当院の栄養療法の安全管理体制がどのようになっているのかをお伝えします。

1. 何が起きたのか — 事実の整理
報告された事例のポイントを整理します。
お子さんの状況:
・ 7歳10か月の男の子(体重14.7 kg — 同年齢の標準体重の約6割)
・ 販売会社が主催するイベントでサプリメントを購入
・ 医師の管理なしに、ご両親の判断で約6か月間にわたり毎日摂取
・ その間、血液検査は一度も行われず
・ 嘔吐や食欲不振などの症状が出始めてから受診するまで約2か月
結果:
・ 血清カルシウム値が基準値の約1.6倍に上昇(高カルシウム血症)
・ 25日間の入院加療
・ 退院後も筋力低下が残存
2. なぜ起きたのか — 4つの根本原因
この事例は「ビタミンDが危険」ということではなく、いくつもの安全管理の欠如が重なった結果です。
医師の管理がなかった
サプリメントは販売会社のイベントで購入され、「体調に応じて追加」という販売側の指示のもと、ご両親が投与していました。処方した医師はいません。
子どもの体格に合っていなかった
体重14.7 kgのお子さんに、1日あたり最大約15,000 IU(国際単位)のビタミンDが投与されていました。これは厚生労働省が定める7歳の耐容上限量(1,600 IU)の約9.3倍にあたります。
製品の品質に問題があった
分析の結果、同じボトルの中でもカプセルごとにビタミンDの含有量が最大2倍以上ばらついていたことがわかりました。「1粒に何IU入っているか」さえ安定していなかったのです。
定期的な検査が行われなかった
6か月間、一度も血液検査が行われませんでした。症状が出始めてからも約2か月間、受診されませんでした。
3. 当院の栄養療法との違い — 徹底した安全管理体制
当院の合言葉は「測って、狙って、確認する」です。サプリメントを「処方」するにあたり、当院では以下の原則に基づいて安全を管理しています。
違い① 血液検査に基づく「医師の管理」
報告された事例では、6か月間一度も血液検査が行われていませんでした。「測っているか、測っていないか」——実はここが、安全と危険の最大の分かれ目です。
当院では、サプリメントをお出しする際、できる限り事前の血液検査(採血)をおすすめしています。ビタミンDの血中濃度(25-OHビタミンD)とカルシウム値を測定し、お子さんの体の中で何が起きているかを数値で確認してから処方することを基本としています。
もちろん、年齢やご本人の特性によって「どうしても採血が難しい」というお子さんもいらっしゃいます。その場合は、専門家の指針に基づいた用量上限を厳格に守って処方することで、安全を担保しています。
違い② 子どもの体格に合った製品選びと用量
今回の事例では、体重14 kgのお子さんに大人向けの製品が使われ、1日に耐容上限量の約9.3倍もの量が投与されていました。
当院では、お子さんの年齢や体重、そして必要量に応じて、安全に飲める適切な子ども用の低用量製品などを慎重に使い分けています。お子さんの体格に合わない大量の用量をお渡しするようなことは決してありません。
違い③ 「1粒の含有量」が厳格に管理された製品品質
小児科学会の報告で非常に重要だったのが、「製品の品質(ばらつき)」の問題です。分析の結果、事例で使われた製品は、同じボトルの中でもカプセルごとにビタミンDの含有量が最大2.1倍もばらついていたことが判明しました。つまり、「1粒に何IU入っているか」がそもそも不確実だったのです。
当院で使用しているサプリメントは、GMP(適正製造規範)基準をクリアした工場で製造される、医療機関向けの製品のみを採用しています。1粒あたりの含有量が厳格に品質管理されており、一般の店舗やネット販売で起こり得る「ばらつきリスク」を排除しています。
違い④ 定期的な再評価によるモニタリング
サプリメントを開始した後も、定期的な再検査(採血)をおすすめしています。ビタミンDの値がどう変化しているか、カルシウムが上がっていないかを確認し、必要に応じて量を調整します。
採血ができないお子さんの場合も、定期的な診察で問診や症状の変化を細かく確認しながら、継続的な安全管理を行っています。
4. よくあるご質問
「ネットで1,600 IUまでと書いてありましたが、うちの子はそれより多く飲んでいます」
厚生労働省の耐容上限量(1,600 IU)は、何の検査もなしに自己判断で摂る場合の安全ラインです。当院では血液検査で実際の濃度を測定した上で処方しており、判断の精度が異なります。お子さんの値を確認しながら管理していますので、ご安心ください。
「やめた方がいいですか?」
全国の2歳児約4,600人を調べた環境省のエコチル調査では、約4人に1人がビタミンD欠乏(血中濃度20 ng/mL未満)でした。冬から春にかけて、また北の地域ほど低くなる傾向があります。大人でも、都内の健診を受けた5,518人のうち98%が不足の目安(30 ng/mL)に届いていなかったという報告があります(東京慈恵会医科大学、2023年)。ビタミンDが不足すると、骨や免疫、腸の粘膜バリアの働きが弱まりやすいと考えられています。医療管理下で適切に補充することは、やめるリスクの方が大きいと考えています。ご不安があれば、次回の診察でご相談ください。
「市販のサプリを追加してもいいですか?」
市販品の自己判断での追加はお控えください。 全体の摂取量が把握できなくなり、次回の血液検査の判断にも影響します。何か追加したい場合は、先にご相談いただければ判断いたします。
まとめ
今回の報告は、栄養療法そのものの危険性を示すものではありません。
「医師の管理なしに、品質の不安定な製品を、子どもの体格に合わない量で長期間投与し、一度も検査しなかった」ことで起きた事故です。
当院の栄養療法は、「測って、狙って、確認する」の3ステップで安全を担保しています。
ビタミンDは正しく使えば、お子さんの免疫力や腸の健康を支える強力な味方です。ご不安なことがあれば、診察の際にお声がけください。
💡 院長メモ
「サプリメントが危険なのではなく、管理なしの使用が危険」——これは薬でも手術でも同じ原則です。正しい知識と管理のもとで使うことが、すべての医療の基本です。当院の栄養療法は、その原則を一つひとつ守っています。
同じテーマで関連する記事
「もう少し違う角度から知りたい」と思われた方は、こちらもどうぞ。
– 花粉症の根本原因はビタミンD不足?「粘膜バリア」と免疫の仕組み
– 受験生の集中力と体調管理をサポート「サプリメント・メディカルコンディショニング外来」
この症状をもう少し深く知りたい方へ
「うちの子も、もしかして」と思われた方は、
栄養外来のご案内ページで、当院の取り組みをご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
▶ 子どもの便秘と栄養|鉄・ビタミンD不足と「入れる順番」
お腹と栄養のつながりを、便秘専門サイトで解説しています。
栄養のヒントを、LINEで受け取る
子どもの栄養について、診察室では話しきれないことや、「今日ひとつだけできること」を、小森こどもクリニック 栄養の公式LINEで少しずつお届けしています。ご登録いただくと「栄養療法スタートアップガイド」もお読みいただけます。何から始めればいいか迷う方は、ここから受け取ってください。
「うちの子はどうだろう」と確かめてみたい方へ
ビタミンDが足りているかどうかは、血液検査で確かめられます。当院の子どもの栄養外来(分子栄養学外来)では、いま飲んでいるもの・食べ方・外遊びの様子までうかがったうえで、お子さん一人ひとりに合わせて組み立てていきます。
ご予約は、当院ホームページの予約システム(デジスマ診療アプリ)から承っています。
すでに通院中の方へ:体の材料の変化は、数ヶ月かけて少しずつ表れます。3ヶ月目の再検査で、ここまでの変化と次の一歩を一緒に確かめましょう。
診察室の外の発信
診察室では話しきれないこと、医師が何を考えながら診ているのかを、Xでも書いています。
小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL
この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。
「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。
▶ 著書:『うんちが出ない!』(英智舎・2026年12月9日発売)
▶ 取材・講演のお問い合わせ:press@komori-kodomo.com