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小児便秘の治療は、ご家族にとって悩みが尽きないテーマです。「一体いつまで薬や浣腸を続ければいいのか?」「今の治療で大丈夫なのか?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。特に、治療が長期にわたる場合、先が見えないことに疲れてしまうこともあるかと思います。
便秘外来では、親御さんからこんなご相談をいただくことがよくあります。
「薬や浣腸を続ければ便は出るけれど、続けることが不安で、見通しがつかない。」
「治療を続けても効果が実感できない。ずっと薬を飲み続けるのは心配です。」
「お薬をずっと飲み続けているけれど、これで本当に治るのかがわかりません。」
こういったご相談から感じるのは、便秘治療に対する不安や疑問が尽きないということ。そして、「いつかは自分で自然に便が出せるようになってほしい」という親御さんの切実な願いです。
今回は、小児便秘の治療を続ける上で大切な「治療の目的」と「ゴール設定」についてお話しし、ご家族が治療方針を考えるヒントになるような情報をお伝えしていきたいと思います。
まず、はっきりとお伝えしたいのは、「小児便秘に即効で治る魔法の治療は存在しない」ということです。親御さんとしては、できるだけ早く薬をやめて自然に排便できるようになってほしいと願うものですが、現時点の医学では、便秘を完全に治す近道や特別な治療法はないのが現実です。
あるご家族から、こんなご相談をいただいたことがあります。
親御さん「他の治療法はないでしょうか?内服薬や浣腸をずっと続けるのが心配で…。どこかにもっと良い治療法があるのではないかと、色々調べてしまうんです。」
「他のおすすめの運動や食事、リハビリなどはないのでしょうか?」
このお気持ちはよく分かります。できることならすぐに便秘が治り、薬に頼らずに生活できる方法があればよいのですが、、、しかし、現実としては、鎖肛やヒルシュスプルング病といった稀な病気が見つかる場合もありますが、ほとんどが「体質性便秘」の状態であり、こうした場合、より細かな診断や特殊な治療があるわけではありません。根気よく向き合っていくことから始まります。
また、鎖肛やヒルシュスプルング病の場合は、手術を行っても自分の力だけで排便ができないことも多く、メガネを外せないのと同じように、薬や浣腸をずっと続けていかなければならないケースもあります。薬や浣腸を続けることで生活が安定して送れる、より重症なお子さんがいるのも事実です。
お子さんが将来に渡って「排便のことで困らない状態を維持する」ことが最も重要な目標になります。ここで大切なのは、「薬や浣腸を止めること」を急ぐのではなく、便秘の状態を安定化を続け、日常生活を問題なく過ごせるようになることです。
具体的には、内服薬や浣腸といった治療を続けながらも、学校生活や仕事など、日常生活に支障をきたさない状態を目指します。つまり、生活の中で排便に関する不安や心配を感じることなく過ごせるようになることが、治療のゴールです。
さらに、この「困らない状態」を自分自身でコントロールできることが、最終的な治療の目標、いわば「卒業」とも言える段階になります。医師の指導を受けながらも、最終的には患者さんが自分で体調や排便のリズムを把握し、適切に管理できることが理想的な状態です。
一方で、体質性の便秘の多くのお子さんは、トレーニングを続けることで、もう一つ上の段階である、最終的には自分の力で排便できるようになることがほとんどです。このように、重症度により、治療の方法やゴールはお子さんの状況に応じて大きく異なります。
もうひとつ、体質性便秘の治療において重要なのは、「個人差が非常に大きい」という点です。お子さんによって便秘の重症度や原因が異なるため、友人や知人から「この食べ物が効いたよ」「このサプリメントが便秘に良いらしいよ」といったアドバイスを受けても、必ずしも効果があるとは限りません。
実際、こんな質問もよくいただきます。
「友人から『Aという食べ物がすごく良かった』とか『このサプリが効いた』と聞いたのですが、うちの子にも試す価値があるでしょうか?」
こうしたご質問に対しては、「試してみるのは問題ないと思います」とお答えすることが多いですが、正直なところ「効果があるかどうかはその子次第」です。また、便秘の程度や体質には大きな個人差があるため、他のお子さんと比較してもあまり意味がない場合が多く、比べたところでどうしようもない部分もあります。そのため、個別に便秘の状態を評価し、効果的なトレーニング方法を見つけることが大切です。
私たちも、外来でその子の便秘の重症度をしっかり把握し、どのような治療やアプローチが最も適しているのかを考えながら、バランスの取れたトレーニング方法をお伝えするようにしています。ご家族が一人で悩まずに済むよう、個々のお子さんに合わせたサポートを心がけています。
小児便秘の治療において最も大切な目的は、「お子さんの日常生活を支えること」です。治療を続けることで「スムーズに便が出ることで生活が快適であること」「保育園や学校生活が支障なく送れる」という状態を保つことが、何よりも重要なゴールになります。
例えば、あるお母さんとの会話でこんなやりとりがありました。
お母さん「薬を飲むことで便は出るんですが、ずっとこのままでいいのか心配で…。他の子は普通に出しているのに、うちの子だけ薬がないと出ないと思うと不安です。」
医師「お薬や浣腸を使うことで、少なくとも今は便秘のつらさから解放され、毎日を元気に過ごせている状態ですよね?これは、お子さんの生活の質を守る上でとても大切なことなんです。」
これは、メガネをかけることに似ています。視力が悪い人がメガネをかけることで日常生活が楽になるのと同じように、便秘治療も「生活を快適にするための補助」として考えると良いかもしれません。薬や浣腸があることで、便秘に悩まずに元気に過ごせるのであれば、それは立派な治療の成果なのです。一つの通過点でもあり、お子さんによっては、目指す状態の一つのあり方です。
次に重要なのは、「どのような状態を治療のゴールとするか」を考えることです。これは、お子さんの便秘の状態やご家族の希望によって異なるため、正解はひとつではありません。
例えば、あるお父さんがこんな質問をされました。
お父さん「毎日、自分の力ですんなり出るのが理想だと思っているんですが、何年も治療を続けないとそれは難しいんでしょうか?」
医師「理想は毎日スムーズに出ることですが、お子さんの体質や便秘の重症度によっては、すぐにその状態に達するのは難しい場合もあります。もちろん、お子さんによっては、週に数回でも快適に出ていれば、それも一つのゴールです。」
さらに、治療期間について心配される親御さんには、こんなお話をすることもあります。
医師「長く続く治療は大変だと思います。でも、少しずつ排便の力をつけていくことで、将来的に自力で便を出せるようになる可能性もあります。治療は、排便力を育てるためのトレーニング期間と考えてみてください。」
医師「一方で、必ずしも毎日出せる状態を目指す必要はありません。ある程度自分の力で出せれば良いと考えるのであれば、例えば週に数回でもしっかり排便できるようにする、といったゴール設定もできます。その場合、治療を少し緩めて、早めに着地点を見つけるという方法もあります。どのレベルまで排便力をつけたいかを考えて、そのゴールに合わせた治療計画を立てていきましょう。」
このように、ご家族の希望やお子さんの状態に合わせて、治療の目標やゴールを設定することが可能です。すべてのお子さんに同じゴールを目指すのではなく、それぞれにとって最も無理のない着地点を見つけることが、小児便秘の治療では重要になります。
小児便秘の治療には、近道も、魔法の治療もありません。しかし、治療を続けることで少しずつ排便力を身につけていくお子さんはたくさんいます。ご家族にとっての「快適な状態」を目指しながら、無理のないペースで治療を続けていくことが大切です。
私たちは、治療を強制するものでもなく、絶対的な正解があるわけでもありませんから、最終的には「どの程度の排便力をつけていきたいのか」というご家族のご希望を尊重しながらサポートを続けています。どうか焦らず、お子さんのペースに合わせて「排便力」を少しずつ育てていくという視点を持っていただければと思います。お子さんが将来、排便のことで困らない生活を送れるように、ご家族と私たちで一緒にサポートしていきましょう。
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慶應義塾大学医学部卒業
小児外科学会専門医、小児外科指導医、医学博士
小森こどもクリニックでは、成長の感動や喜びをお子さん ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育ができる社会を創ることをビジョンに活動しています。