便秘外来で、保護者の方から次のようなご相談をよくいただきます。
「うちの子はあまり食事をとらないので、うんちが少なくても問題ないですよね?」
「食事量が少ない日は、便が出なくても仕方ないですか?」
このように、「食べる量が少ないから排便も少なくてよいのでは?」と考える方は少なくありません。
しかし、実際には食事量と排便量は必ずしも比例するわけではありません。
今回は、食事量にかかわらず定期的に排便を促す必要性について、詳しく解説していきます。
便は、単に食べた物の残りカスだけで作られているわけではありません。
便の成分は、約80%が水分で、残り20%は次の3つから成り立っています。
このように、便の成分の多くは腸内の働きによって作られます。
そのため、たとえ食事量が少ない場合であっても、腸は常に活動しているため、便は作られ続けているのです。
「食べていないから便が出なくても仕方ない」という考え方は、腸の仕組みを踏まえると誤解であることがわかります。
便秘を防ぎ、腸の健康を保つためには、定期的な排便習慣をつけることがとても重要です。その理由を3つの観点からご説明します。
腸内には多くの細菌が生息しており、これらは腸内フローラと呼ばれます。腸内フローラのバランスが整っていると、腸内環境が良好に保たれ、便の量や質が改善されます。
例えば、食物繊維や発酵食品を摂取すると、善玉菌が増えて腸の働きが活発になります。その結果、便のかさが増え、スムーズな排便を促す効果が期待できます。
一方で、腸内細菌のバランスが乱れると、便が硬くなったり、排便リズムが乱れたりすることがあります。
このため、腸内環境を整えることは、日々の排便習慣を安定させるための土台づくりとなります。
食物繊維は、腸の健康を支える重要な栄養素です。特に、不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収しながら膨らみ、便のかさを増やす働きがあります。
この膨らんだ便が腸を刺激し、蠕動運動(ぜんどううんどう)を促進します。蠕動運動とは、便を肛門へと押し出す腸の自然な動きです。
そのため、食事量が少ない場合であっても、食物繊維を多く含む食品を摂取していると、腸内で便の量が思った以上に増えることがあります。
便の量が増えること自体は腸内環境を整えるうえで望ましいのですが、便が腸内に長く留まると水分が吸収されすぎて硬くなり、排便が難しくなることもあります。
こうしたリスクを防ぐためには、食物繊維の摂取とともに、排便リズムを意識して定期的に便を出すことが必要なのです。
便秘が続くと、便が腸内に長期間滞留し、腸の動き(蠕動運動)が低下してしまいます。この状態が長引くと、便を押し出す力がさらに弱まり、便秘が悪化する悪循環に陥りやすくなります。
特にお子さまの場合、排便習慣がまだ十分に確立されていないことが多いため、毎日決まった時間にトイレに座る習慣をつけることがとても重要です。
例えば、朝食後にトイレに座るなど、生活リズムの一部として排便習慣を定着させることで、腸の働きを促しやすくなります。
この習慣づくりは、小さなお子さまだけでなく、便秘が気になるすべての方にとって有効です。
今回の記事では、食事量と排便量は必ずしも比例しないことをお伝えしました。
便の量は、腸内細菌や腸の代謝、食物繊維の摂取量、排便リズムによって大きく左右されるため、食事量が少ない場合でも定期的な排便を促すことが腸の健康を守るために重要です。
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慶應義塾大学医学部卒業
小児外科学会専門医、小児外科指導医、医学博士
小森こどもクリニックでは、成長の感動や喜びをお子さん ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育ができる社会を創ることをビジョンに活動しています。