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便秘外来で、保護者の方から次のようなご相談をよくいただきます。
「うちの子はあまり食事をとらないので、うんちが少なくても問題ないですよね?」
「食事量が少ない日は、便が出なくても仕方ないですか?」
このように、「食べる量が少ないから排便も少なくてよいのでは?」と考える方は少なくありません。
しかし、意外かもしれませんが、たとえ丸一日何も食べなくても、便は作られ続けています。なぜなら、便の約3分の2は「食べカス」以外のもの——腸内細菌や腸の粘膜細胞——でできているからです。
今回は、食事量にかかわらず定期的に排便を促す必要性と、排便リズムをつくる具体的な方法について、詳しく解説していきます。
便は、単に食べた物の残りカスだけで作られているわけではありません。
便の成分は、約80%が水分で、残り20%は次の3つから成り立っています。
① 食べカス(約1/3)
食べ物の中で消化・吸収されなかった残りカスです。
② 腸内細菌(約1/3)
腸の中に住む膨大な数の細菌が、日々入れ替わりながら便の一部になります。
③ 腸の粘膜からはがれた細胞(約1/3)
腸の壁は常に新しい細胞に生まれ変わっており、古い細胞が便に混ざります。
このように、便の成分の多くは腸内の働きによって作られます。そのため、たとえ食事量が少ない場合であっても、腸は常に活動しているため、便は作られ続けているのです。
「食べていないから便が出なくても仕方ない」という考え方は、腸の仕組みを踏まえると誤解であることがわかります。
便秘を防ぎ、腸の健康を保つためには、定期的な排便習慣をつけることがとても重要です。その理由を3つの観点からご説明します。
腸内には多くの細菌が生息しており、これらは腸内フローラと呼ばれます。腸内フローラのバランスが整っていると、腸内環境が良好に保たれ、便の量や質が改善されます。
例えば、食物繊維や発酵食品を摂取すると、善玉菌が増えて腸の働きが活発になります。その結果、便のかさが増え、スムーズな排便を促す効果が期待できます。
一方で、腸内細菌のバランスが乱れると、便が硬くなったり、排便リズムが乱れたりすることがあります。
食物繊維は、腸の健康を支える重要な栄養素です。特に、不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収しながら膨らみ、便のかさを増やす働きがあります。
この膨らんだ便が腸を刺激し、蠕動運動(ぜんどううんどう=腸がにょろにょろと動いて便を肛門に向かって押し出す自然な動き)を促進します。
そのため、食事量が少ない場合であっても、食物繊維を多く含む食品を摂取していると、腸内で便の量が思った以上に増えることがあります。
便の量が増えること自体は腸内環境を整えるうえで望ましいのですが、便が腸内に長く留まると水分が吸収されすぎて硬くなり、排便が難しくなることもあります。こうしたリスクを防ぐためには、排便リズムを意識して定期的に便を出すことが必要なのです。
便秘が続くと、便が腸内に長期間滞留し、腸の動き(蠕動運動)が低下してしまいます。この状態が長引くと、便を押し出す力がさらに弱まり、便秘が悪化する悪循環に陥りやすくなります。
特にお子さまの場合、排便習慣がまだ十分に確立されていないことが多いため、毎日決まった時間にトイレに座る習慣をつけることがとても重要です。
ここからは、ご家庭で実践できる排便リズムづくりの工夫をお伝えします。
① 朝食後にトイレタイムを設ける
食事をとると、胃に食べ物が入った刺激で大腸が動き出す反射(胃結腸反射)が起こります。この反射は朝食後にもっとも強く働きます。朝食を食べた後、5〜10分程度トイレに座る習慣をつけてみてください。出なくてもOK。「座ること」自体が腸への合図になります。
② 水分をこまめに摂る
食事量が少ないお子さんは、水分摂取量も少なくなりがちです。便を柔らかく保つためには水分が不可欠です。朝起きたらまずコップ1杯の水を飲む習慣をつけると、腸の目覚めにもなります。
③ 排便記録をつける
カレンダーに「出た日」「出なかった日」をシンプルに記録するだけで、排便リズムが可視化できます。親御さんがお子さんの排便パターンを把握することで、「今日は3日出ていないから少し注意しよう」と早めに気づけるようになります。
今回の記事では、食事量と排便量は必ずしも比例しないことをお伝えしました。
便の量は、腸内細菌や腸の代謝、食物繊維の摂取量、排便リズムによって大きく左右されます。食事量が少ない場合でも定期的な排便を促すことが、腸の健康を守るために重要です。
「朝食後のトイレタイム」「こまめな水分摂取」「排便記録」——この3つの工夫から、ぜひ始めてみてください。
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食事量が少ないお子さんは、排便の問題だけでなく、鉄やタンパク質、亜鉛などの栄養素が不足しやすいことが知られています。栄養不足は、疲れやすさ、集中力の低下、風邪のひきやすさなど、さまざまな形で表れることがあります。
当院の分子栄養学外来では、「食べる量が少ないけれど、必要な栄養は足りているのか?」を血液検査で客観的に評価し、少量でも効率よく栄養を摂る方法を一緒に考えています。
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小森広嗣|こどもの栄養とお腹の専門医🌱 @KomoriKodomoCL
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小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
慶應義塾大学医学部卒。都立小児総合医療センター外科医長などを経て小森こどもクリニックを開院。小児科医・小児外科専門医として数多くのおなか(消化管)の手術や治療に携わり、「こどものお腹のスペシャリスト」として消化管の構造と機能に精通する。
自身や家族の不調が栄養療法で改善した手応えから、「西洋医学だけでは届かない不調」の解決策として「栄養」の重要性を確信。「吸収の場である腸」と「体の材料となる栄養」の両面から、標準治療と分子栄養学を柔軟に組み合わせ、その子の体の土台を根本から整える「統合的な医療」を実践している。日本小児外科学会認定専門医・指導医、医学博士。