秋になると、小さなお子さんたちの中には喘息発作でクリニックを訪れる子が増えてきます。この時期、親御さんの中には「うちの子は喘息なのかどうか」と、診断を求める方も多くいらっしゃいます。
しかし、実際には喘息かどうかがすぐに白黒はっきりするわけではなく、いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる状態が多いのです。
繰り返す風邪や季節の変わり目により、気道に炎症が起こり、一時的に喘息のような症状が出ることも少なくありません。特に秋にだけ症状が現れるお子さんもいれば、風邪をひくたびに喘息のような症状が出る子もいます。
また、症状が軽い子もいれば、重い子もいますし、治るまでに時間がかかる子もいれば、あっという間に治る子もいます。「喘息」あるいは「喘息もどき」といっても、10人いれば10通りの症状や経過があります。
また、医療機関で「喘息かもしれませんね」と言われることがありますが、これは必ずしも「喘息だ」と診断されているわけではないことが多いです。多くの場合、「喘息に近い状態なので、注意しながら慎重にフォローや治療をしていきましょう」という意味で伝えられていることが多いと予想します。
ですので、親御さんとしては焦らず、お子さんの状態を丁寧に見守りつつ、その都度、適切な治療を続けていくことが大切です。
大事なのは、「喘息かどうか」という診断にこだわることではありません。それよりも、その時その時でしっかり気道の炎症を取り除いてあげることが大切です。お子さんが夜しっかり眠れて、呼吸が楽にできる状態を保つこと。これが一番の治療の目標です。
そのためには、薬をしっかり飲んだり、吸入を行ったりするなどして、気道の炎症をしっかりと取り除き、呼吸状態を安定化させ、生活が快適に過ごせるようすることを目標にしましょう。
お子さんが日常生活を無理なく送れるように、たとえば保育園や学校に元気に通えるような状態に持っていくこと。そして、その都度しっかりと対処し、症状をコントロールしながら治していくことが、基本的に喘息を疑った場合、まず取り組んでいくべきことだと考えています。
特に咳が長く続く場合や、咳き込んで吐いてしまう場合、夜に眠れないほど症状が強い場合、あるいは「ぜいぜい」と呼吸が苦しそうな場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。早めの対応が症状の悪化を防ぎ、お子さんの呼吸を楽にしてあげるために重要ですので、少しでも気になるサインがあったら、無理をせずに医療機関で相談しましょう。
慶應義塾大学医学部卒業
小児外科学会専門医、小児外科指導医、医学博士
小森こどもクリニックでは、成長の感動や喜びをお子さん ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育ができる社会を創ることをビジョンに活動しています。