2018年3月27日

監修:小児外科専門医 小森 広嗣(小森こどもクリニック院長)/最終更新:2026年10月18日
お尻が赤く腫れて、膿が出る。治ったと思うと、また腫れる。
肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)は、ご家族にとって気の休まらない病気です。この記事では、「これは何なのか」と「どこへ向かっているのか」を順にお話しします。
肛門周囲膿瘍とは
肛門の周りに細菌が入って化膿し、赤く腫れる病気です。
- おむつをあてている赤ちゃんに多く、下痢や、うんちの回数が多い赤ちゃんによく起こります
- 1歳以下の男の子に多い病気です(9割以上)
- なぜ赤ちゃんの、とくに男の子に多いのかは、はっきりとはわかっていません
はじめは小さなしこりができて赤く腫れ、やがて中に膿がたまってやわらかくなります。膿のたまる大きさは、数ミリから数センチまで、お子さんによって幅があります。しこりは1つのことが多いですが、同時に数個できることもあります。

細菌の入り口は、主に2つです。おむつかぶれでできたお尻周りの小さな傷と、肛門の入口から少し奥にある「肛門腺(こうもんせん)」です。
どんな症状が出ますか
- 痛みのため不機嫌になる
- お尻をさわられると泣く
- うんちをするのを嫌がる
- 肛門の周りが赤く腫れる
- 自然に膿が出てくることもある
治療の芯は一つ——膿をためない
治療の軸は一つです。膿をためないこと。
| どこで | すること |
|---|---|
| クリニックで | 腫れて膿がたまっているときは、切開して膿をしっかり出します。自然に膿が出た場合も、出口が閉じないように整えます |
| ご自宅で | 診察でお伝えした方法で、やさしく押して膿を出し、入浴で清潔に保ちます |
| 繰り返す | 出口が閉じると、また膿がたまります。閉じたら、また出す。 この繰り返しが治療の本体です |
出口が閉じてしまうこと自体は、治療がうまくいっていないということではありません。
お薬は、症状に応じて抗生物質の塗り薬や飲み薬を使うことがあります。また、当院では漢方薬の併用もよくご提案しています。ただ、お薬だけで治す病気ではありません。膿を出す処置と組み合わせて使います。
治りにくいタイプのお子さんでは、週1〜2回、処置のために通院していただくことがあります。
「こんなに痛い思いをさせないといけないの?」
切開の処置は、見ているご家族にとってもつらいものです。「本当に切らないといけないのか」「塗り薬だけで様子を見てはいけないのか」と聞かれることもあります。
研究の世界では、切開して膿を出す方法と、切らずに経過を見守る方法のどちらが優れているかは、まだはっきりしていません。報告の多くは少ない人数を振り返ったもので、多くのお子さんは成長とともに落ち着いていくこともわかっています。
そのうえでお伝えしたいのは、切開は、すべてのお子さんに必要なわけではないということです。膿が少なく、自然に出口から出ている子では、押して出すことと清潔を保つことで落ち着いていくこともあります。日本の肛門の病気の診療ガイドラインでも、初めのころの治療として、抗菌薬・押して膿を出すこと・切開して膿を出すことが並べて挙げられています。
一方で、膿がたまってパンパンに張っているときが、赤ちゃんにとっていちばん痛いときでもあります。膿が外に出ると、張っていた圧が抜けて、楽になることが多いものです。当院が「膿がたまっているときは、しっかり出す」ことを大切にしているのは、痛い時間と繰り返す時間を、できるだけ短くしたいからです。
切開するかどうかは、膿のたまり方や腫れの大きさを診て決めます。迷うときは、その理由も含めて、診察室でご一緒に考えます。
1回で治る子、半年〜1年かかる子——経過には幅があります
個人差がとても大きい病気です。
| 経過 | 様子 |
|---|---|
| 1回の切開で治るお子さん | 一度膿を出し、出口が閉じたあと腫れが戻らず、そのまま治ります |
| 根気よく続けるお子さん | 半年から1年ほど、再発や、別の場所に新しくできることを繰り返しながら、切開と膿を出す処置を続けます |
どちらの経過をたどるかを、前もって予測するのは難しい病気です。それでも基本は変わりません。クリニックで膿をしっかり出し、ご自宅で押して出すことを続ける。 これをコツコツ繰り返します。
- 1歳前後で落ち着いていくことが多いとされています
- ただ当院では、2〜3歳ごろまで再発するお子さんも診ています。忘れたころにまた腫れることもあるので、腫れに気づいたら早めに受診してください
繰り返すのは、治療が失敗しているのではなく、この病気の経過です。
ご家庭でできること
- 診察でお伝えした方法で、患部をやさしく押して、膿がたまらないように出す(毎日、できる範囲で)
- 入浴やシャワーで、お尻を清潔に保つ(当院では、処置の当日からお風呂に入っていただいています)
- おむつをこまめに替える。おむつに膿や血の混じったものが付くのは、膿が外に出ているサインです
押し方や回数、軟膏の塗り方は、処置のあとに、お子さんの状態に合わせてお伝えしています。
早めに受診してほしいとき・別の検査を考えるとき
- 熱が出た、赤みがお尻の外へ広がってきたとき
- お尻の赤みや腫れが、急にひどくなったとき
- 押さえても止まらない出血があるとき
- 強く痛がる・ぐったりしているなど、いつもと様子が違うとき(夜間や休診日は、救急の受診か #8000 へ)
年齢が上がってから起きた、または繰り返す場合は、炎症性腸疾患などが背景にないかを確かめる検査をおすすめすることがあります。また、再発を繰り返して膿の通り道のトンネル(瘻孔=ろうこう)ができた状態を痔瘻(じろう)といい、どうしても治らないときには手術を行うことがあります。これは繰り返すお子さんの中の一部の話です。
繰り返す時期を、ご家族で越える
何度も腫れるお尻を見るのは、ご家族にとってつらいことです。毎日のケアを担うご家族は、睡眠も食事も後回しになりがちです。
この病気は、繰り返しながら終わりに向かっていきます。その長い道のりを支えるのは、お子さんの体と一緒に、毎日を支えるご家族の体の土台です。「治らないのでは」と感じたときこそ、診察室でお聞かせください。今どのあたりにいるのかを、一緒に確かめます。
まとめ
- 1歳以下の男の子に多い、肛門の周りが化膿する病気です
- 治療の軸は「膿をためない」。クリニックで膿を出し、ご自宅で押して出し、閉じたらまた出す、を繰り返します
- 1回の切開で治るお子さんも、半年から1年ほど根気よく続けるお子さんもいます。2〜3歳ごろまで再発することがあります
- 年齢が上がってから起きた・繰り返すときは、別の検査をご提案することがあります
※ お子さんの状態によって、必要な処置やお薬は変わります。自己判断で処置をせず、医師と相談しながら進めてください。
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今日から、ひとつだけ
おむつを替えるときに、お尻に赤みやしこりがないかを、ひと目見る習慣をつけてみてください。早く気づけば、それだけ早く膿を出してあげられます。
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「うちの子はどうだろう」と確かめてみたい方へ
お尻の腫れや膿が気になるとき、繰り返して不安なときは、一度診察でお尻の状態を見せてください。今どのあたりにいるのかを確かめ、これからの見通しを一緒に考えます。
ご予約は、当院ホームページの予約システム(デジスマ診療アプリ)から承っています。
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小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL
この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。
「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。
▶ 著書:『うんちが出ない!』(英智舎・2026年12月9日発売)
▶ 取材・講演のお問い合わせ:press@komori-kodomo.com