2017年11月30日
監修:小児外科専門医 小森 広嗣(小森こどもクリニック院長)/最終更新:2026年10月18日
「お腹の風邪は治ったはずなのに、2〜3週間たっても下痢が続く」
「前に胃腸炎をしたときは、こんなに長引かなかったのに」
赤ちゃんの下痢が長引くと、ご家族は心配になります。その背景に、腸の粘膜が傷んで、ミルクや母乳の「乳糖」を分解しきれなくなっていることがあります。これを乳糖不耐症といいます。
乳糖不耐症とは
ミルクや母乳に含まれる「乳糖」は、小腸にある「ラクターゼ」という酵素で分解されて、吸収される形になります。
ラクターゼの働きが弱まると、分解されなかった乳糖がそのまま大腸に届きます。大腸では腸内細菌が乳糖を発酵させて、ガスや水分の多いうんちのもとになります。お腹の張り、ゴロゴロという音、水っぽい下痢が出やすくなるのは、このためです。
生まれつき酵素が作れないタイプは、とてもまれです。赤ちゃんで多いのは、胃腸炎のあとに一時的に酵素の働きが下がる場合です。腸の粘膜がただれて、酵素を出す場所そのものが傷むからです。酵素の量には個人差もあり、同じ胃腸炎でも、長引く子とそうでない子がいます。
どのくらい心配すればいいか
下痢が長引くときの目標は、「今日中に下痢を止めること」ではありません。次の4つが保てていれば、回数が多いこと自体は、あわてる理由になりません。
- 機嫌がよい
- ミルク(母乳)がよく飲めている
- おしっこがいつもどおり出ている
- 便が白っぽい・黒い・血が混じる、といった色の変化がない
実際に困るのは、お尻のかぶれと、保育園に通えるかどうかです。
一方で、次のようなときは、早めに受診してください。
- 熱がある、強くお腹を痛がる、うんちに血が混じる
- 吐いてしまい、ミルクや水分が飲めない
- 体重が減っている、おしっこが少ない、ぐったりしている
- 2〜3週間たっても下痢がおさまらない
夜間や休診日に急ぐ症状があるときは、救急の受診か #8000 にご相談ください。
乳糖不耐症のうんち——見分けの目安
次のような様子がそろうときは、乳糖を分解しきれていないことを考えます。
- 水っぽい、または泡の混じったうんちが続く
- 酸っぱいようなにおいがする
- ミルクや母乳を飲んだあとに、お腹がゴロゴロ鳴る・張る・おならが増える
- お尻が赤くかぶれやすい(酸性のうんちが皮膚を刺激するため)
ただし、うんちの見た目だけで決めることはできません。下痢が長引く原因は、ほかにもあります。
- 胃腸炎そのものが長引いている(熱やお腹の痛みが続く)
- ミルクのたんぱく質に体が反応している(ミルクアレルギー。血便や湿疹、体重の増えが悪いことがあります)
- 抗生物質を飲んだあとで、腸内細菌のバランスが崩れている
- 体重が減る、元気がないときは、ほかの病気が隠れていないかを確かめる必要があります
どれにあたるかは、診察で経過をうかがって見極めます。「乳糖不耐症だろう」と決めつけて自己判断でミルクを替え続けるより、一度確かめておくほうが、結果的に近道になります。
長引くときの整え方
感染の初めは、体が悪いものを外に出している時期です。この時期に下痢を無理に止めることはしません。お薬は種類によって、赤ちゃんに使える条件が違います。市販の下痢止めは、自己判断で使わないでください。
1週間を過ぎても続くときは、原因をもう一度見直す時期です。その一つに、傷んだ粘膜に毎日、母乳やミルクの乳糖が届き続けることがあります。
整えるときの目安にしたいのが、夜のあいだにうんちが出ないことです。寝ているあいだに出ると、気づくまで便が皮膚についたままになり、お尻があっという間に悪くなるからです。夜の排便が減ると、お尻も眠りも守りやすくなります。
整え方は、お子さんの月齢と状態に合わせて選びます。腸内環境を整えるお薬や、乳糖の消化を助けるお薬を使うことがあります。それでもお尻や登園で困るときに、乳糖を取り除いたミルクを考えます。
乳糖を取り除いたミルクに切り替えるかどうか
切り替えるかどうかは、ケースバイケースです。当院では、おおよそ2週間をひとつの目安に、次のことを並べて考えています。
- お尻の状態:かぶれがつらそうか、ケアで守れているか
- 登園:保育園に通っているか、下痢で通えずに困っているか
- 費用と手間:乳糖を取り除いたミルクは、ふつうのミルクより高価です。園に用意してもらうには、園とのやりとりや書類が必要になることもあります
登園しておらず、機嫌がよく、ミルクもよく飲めていて、お尻も守れているなら、時間が解決してくれることも少なくありません。反対に、体重が増えない、おしっこが少ないときは、2週間を待たずに受診してください。
母乳は、原則として続けます。 ただ、母乳にも乳糖は含まれています。下痢やお尻のかぶれがとても強いときに限って、医師と相談のうえ、一時的に乳糖を取り除いたミルクを使うこともあります。
「ミルクだけ」にしない——腸を治す材料の話
離乳食が始まっているお子さんで下痢が続くと、「食べさせると悪化しそう」と、ミルクだけにしたくなるかもしれません。でも当院では、下痢をしているからミルクだけにする、という形はおすすめしていません。
傷んだ腸の粘膜を作り直すには、材料が要ります。体を作るたんぱく質や、粘膜の入れ替わりを支える栄養素です。離乳食が進んでいるお子さんは、食べられる範囲で食事を続けることが、腸の回復の土台になります。
下痢が長引く時期は、毎日を支えるご家族も、睡眠や食事が後回しになりがちです。お子さんと一緒に、ご家族の体の土台も大切にしてください。
元に戻すときは「1回だけ」試す
一気に元のミルクや食事に戻すと、また下痢がぶり返すことがあります。
- お休みの日など様子を見やすい日に、1回だけ元のミルクを試してみます
- 大丈夫なら、少しずつ戻していきます。下痢がぶり返したら、また前の形に戻ります
- 数回試すと、だいたい見えてきます
戻し方は、お子さんの経過を見ながら一緒に決めていきます。受診された方には、ご家庭で読み返せる手順のページをお渡ししています。
下痢が続く赤ちゃんのお尻のこと
下痢が続くと、お尻はかぶれやすくなります。おむつをこまめに替え、ぬるま湯で洗って、こすらずに押さえるように拭いてあげてください。便が直接皮膚につかないよう、保護の塗り薬で「屋根」を作るのも大切です。
かぶれが長引くお尻には、カンジダ(カビの一種)がつくこともあります。カンジダが疑われるときは、それに合った塗り薬で治療します。治りにくいときは、下痢の原因や栄養の状態、成長もあわせて確かめます。
また、下痢やうんちの回数が多い赤ちゃんは、肛門の周りが化膿する「肛門周囲膿瘍」が起こりやすいことが知られています。お尻に赤いしこりや腫れ、膿が出るのに気づいたら、早めに受診してください。
まとめ
- 胃腸炎のあと下痢が長引く赤ちゃんでは、腸の粘膜が傷んで乳糖を分解しきれなくなっていることがあります
- 機嫌・飲み・おしっこ・便の色が保てていれば、回数が多いこと自体はあわてる理由になりません。困るのはお尻のかぶれと登園です
- 1週間を過ぎても続くときは原因を見直し、夜の排便が減ることを目安に整えます。市販の下痢止めは自己判断で使わないでください
- 乳糖を取り除いたミルクは、お尻・登園・費用のバランスで考えます(2週間ほどがひとつの目安)。母乳は原則として続けます
- ミルクだけにせず、食べられる子は食事も続ける。戻すときは1回だけ試し、少しずつ
- 体重が減る・おしっこが少ない・血便・ぐったりしているときは、早めに受診してください
※ お子さんの状態によって、必要な対応は変わります。ミルクや食事の切り替えは、自己判断でなく医師と相談しながら進めてください。
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今日から、ひとつだけ
おむつ替えのたびに、こすらずに押さえるように拭き、保護の塗り薬で「屋根」を作ってあげてください。お尻が守れていれば、腸が落ち着くのを待つ時間が、ずっと楽になります。
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「うちの子はどうだろう」と確かめてみたい方へ
下痢が長引いて、お尻のかぶれや登園で困っているとき、体重の増えが気になるときは、一度診察で様子を見せてください。お薬やミルク・食事の工夫を、お子さんの月齢と状態に合わせて一緒に考えます。
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小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL
この記事の執筆・監修者
小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)
小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。
「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。
▶ 著書:『うんちが出ない!』(英智舎・2026年12月9日発売)
▶ 取材・講演のお問い合わせ:press@komori-kodomo.com