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「検査は異常なし」でも元気がないお子さんへ。小児外科医が教える「隠れ栄養失調」という視点

「検査は異常なし」でも元気がないお子さんへ。小児外科医が教える「隠れ栄養失調」という視点|小児科|栄養外来・便秘専門外来なら小森こどもクリニック|根本治療に対応

2026年5月16日

「検査は異常なし」でも元気がないお子さんへ。小児外科医が教える「隠れ栄養失調」という視点

「異常なし」なのに、なぜ?

「大きな病院で検査してもらいました。血液検査も、レントゲンも、全部異常なしって言われたんですが、どう見ても本人がつらそうで…」
「『精神的なもの』『思春期だから』と言われました。様子を見てください、と。でも3ヶ月待っても何も変わらなくて」

外来で、こういったご相談を毎週のように受けます。

「異常なし」と言われたのに、お子さんの顔色は優れない。すぐ疲れる。朝が起きられない。学校でしんどそうにしている。それでも「大丈夫です」と言われ続けて、途方に暮れているご家族。

この状況には、明確な理由があります。

「一般的な検査で見ている値」と「元気に活動できるための値」が、根本的に違うのです。

基準値は「死なないための値」

少し想像してみてください。

スマートフォンの充電残量が10%だとします。電源はついている。電話もできる。アプリも一応起動する。「壊れていない」という判定は出るでしょう。でも、1日中フル活用するには心もとない状態です。

血液検査の「基準値」は、これに似ています。

医療的な基準値は、「その数値を下回ると健康に問題が起きやすい」という、最低ラインの目安として設定されています。言い換えれば、「命を守るため、深刻な病気にならないための値」なのです。

しかし、子どもが毎日元気に走り回り、学校で集中して学び、夜ぐっすり眠るために必要な栄養の量は、その「最低ライン」より、はるかに多い。

成長期の子どもは、大人の数倍ものビタミン・ミネラルを必要とします。

骨を作る。筋肉を育てる。脳と神経を発達させる。月経が始まれば鉄を失い続ける。これだけの「建設工事」を毎日行いながら、同時に元気に生活しなければならない。子どもの体が要求するエネルギーと栄養素の量は、私たち大人の想像を超えています。

「基準値内」でも、実際には材料が足りていない——それが「隠れ栄養失調」です。

「食べていても」なぜ栄養が足りないのか

「ちゃんとご飯は食べさせているのに、なぜ?」

そう思われるかもしれません。

現代の食生活が抱える問題は、「量」ではなく「質」にあります。カロリーは十分でも、ビタミンやミネラルが根本的に不足している——これを「質的栄養失調」と呼びます。

たとえば、こんな食事を思い浮かべてください。

・ 朝:食パン + 果汁入り飲料
・ 昼:学校給食(米・野菜・魚など)
・ 夜:白米 + 鶏のから揚げ + 市販のスープ

カロリーとしては十分です。「食べている」というのも間違いではない。でも、鉄・亜鉛・ビタミンB群・ビタミンDなど、子どもの脳と体の発達に不可欠なミネラルとビタミンは、慢性的に不足しやすい構成です。

パンや白米などの精製された炭水化物は、消化の過程で逆にビタミンB群を消費します。加工食品や甘い飲み物は、一時的にエネルギーを補うように見えて、実はミネラルを浪費させる仕組みになっています。

「食べているのに足りない」という逆説が、現代の子どもたちに起きています。

親御さんが気づける、隠れ栄養失調のサイン

病院の検査では見えにくい変化も、日常の観察で気づけることがあります。

【顔色・皮膚】
✔️ 顔色が青白い、または土気色
✔️ 皮膚が乾燥しやすい、粉をふく
✔️ 唇の端が切れやすい(口角炎)
✔️ 舌が赤く、つるつるしている

【爪・体のサイン】
✔️ 爪が割れやすい、薄い、白い斑点がある
✔️ 髪がパサパサ、抜けやすい
✔️ アザができやすい
✔️ 傷の治りが遅い

【行動・感情】
✔️ 午前中に特に調子が悪い
✔️ 集中力が続かない、すぐ忘れる
✔️ 小さなことでイライラしやすい
✔️ 急に気分が落ち込む(特に夕方)
✔️ 甘いもの・ジュースへの強い渇望がある

これらの複数が当てはまる場合、「隠れ栄養失調」を疑ってみてください。

まず見直すべき「3つの神器」

栄養素は数十種類ありますが、子どもの不調に関わる「最優先で確認すべき3つ」があります。

① タンパク質

体のすべての組織、酵素、ホルモン、免疫物質の「材料」です。不足すると、体全体の工場が動かなくなります。「肉・卵・魚・大豆」を毎食意識して摂ることが基本です。

② 鉄(特にフェリチン)

脳の神経伝達物質(やる気・集中力・感情の安定に関わるドーパミン・セロトニン)の材料です。ミトコンドリアでのエネルギー産生にも不可欠です。一般の健診で測るヘモグロビンではなく、「フェリチン(貯蔵鉄)」という数値が重要です。

③ ビタミンB群

食事から摂ったタンパク質・炭水化物・脂質を「エネルギーに変換」するために不可欠です。不足すると、どれだけ食べても体がエネルギーを使えません。豚肉・卵・玄米・うなぎなどに多く含まれます。

この3つが揃うことで、体の「エネルギー工場」が初めて正常に稼働します。

まとめ:「気のせい」で片付けないで

「異常なし」という診断は、「栄養が十分に足りている」という意味ではありません。

お子さんの体が今、何を必要としているかを正確に知るためには、通常の健診とは異なる視点からの評価が必要です。

「原因不明の不調」には、原因があります。

体の材料を整えるだけで、見違えるほど変わるお子さんを、私はこれまで何人も見てきました。それは特別なことではなく、「本来の力」を取り戻しているだけなのです。

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小児外科医 小森広嗣🩺栄養×お腹 @KomoriKodomoCL

この記事の執筆・監修者

小森こどもクリニック 院長 小森 広嗣(こもり こうじ)

小児外科専門医・指導医、医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都立小児総合医療センター外科医長などを経て、小森こどもクリニックを開院。小児外科の出身として、いまは地域の中で、お腹と栄養の外来を深く追求している。

「成長の感動や喜びをお子さん・ご家族と分かち合い、楽しく安心して子育てができる社会を創る」ことを自身のビジョンとし、診療と情報発信の両輪で活動している。

▶ 著書:『うんちが出ない!』(英智舎・2026年12月9日発売)

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